第29話 ミミック→今すぐ結婚しろや
「やだ。あたし、誰か来るまでずーっとこの隠し部屋にいたのよ。その孤独な年数は十年に渡るわ。退屈で死ぬかと思ったわ。口も張りついてぱさぱさよ」
そう言って、ミミネと名乗ったミミック(宝箱なんだけど)は、人間の足を生やして立ち上がった。美脚。足に真っ赤なヒールなんかも履いている。
「十年? お疲れ様だな」
「どんまいですよ」
「ありがと」
俺たちの軽いノリにミミックは、いらっとした口調になる。
「って、違うわ。あたし、一応、罠なの? 分かる? 罠なのよ」
「クラン、戦うの?」
ステフが毛を逆立てて、拳を構える。
「待て待て。一応、あの中にアイテムがないか確認しないと。ミミックといえば、アイテムだろう? 裏ステータスオープンっと」
ペラリ。
「やだ、さっきから強制ステータスオープンとか。裏ステータスオープンとか。あたしのなにが知りたいわけ? 女子にそんなことしていいと思ってるの? 女子のスカートをめくってるのと同じ行為よ!」
うーん。あながち間違いじゃないかも。
「クランそうなの?」
なんでステフはうのみにすんだよ。
「ち、違うって。今のところは」
「クランさん!? 今のところはってどういうことですか?」
ややこしくなってきたな。そりゃ、将来の設計図を思い描くなら女湯を見たいって願望はある。
歩いている人の服もスケスケに見えたらやばいよな。さすがにそれは自重してんの。そういうの、不謹慎じゃん。
だから女湯っていう赤裸々な場所で俺は堂々と見たいの。
裏ステータス
深層心理……十年。十年誰も来ないのはさすがに長かったわ。出会いがなかった。あたし、もうこいつと結婚する。
願望……今すぐ結婚しろや。
「うわあ……」
最悪だ! 過去まで見たいとは思わない!
俺はそら恐ろしくなって裏ステータス画面を慌てて閉じる!
「どうしたんですかクランさん。顔が真っ青ですよ」
「絶望的だな」
ミミネは足でスキップしている。鑑定しなくても喜びが生足に出ている。
「あら、丸見えなの? あたしの思いも、乙女心も、恋心も、丸見えなの?」
見えない方がいいものもあるってことか。
「ね、念のため聞くけど。こいつとかどう? 【魅了】スキルついてるし」
コウタを盾にして俺は下がってみる。
「え、俺? 何か盾にされてる? どんな攻撃がくるんですか!」
コウタが斧で身構える。
ミミネは大股で歩いてくる。コウタをスルーした!
【魅了】スキルが効かないだと? コウタのスキルレベルが足りてないのか。くそ、何でこんなときに効かないんだ。
「だめよ。スカートをのぞいたんなら、最後までしっかり目に焼きつけなさいよ! あたしのパンツまで! 色はピンクよ!」
「知るかよ てめーのパンツの色なんか!」
ミミネから後ずさったとき、そでをステフにつかまれた。え、なんかちょっと怖い顔をしている。
「クラン見たの!?」
ボコッ!
ぐふっ……。
なんでステフに殴られないといけないんだよ! パンツなんか俺見てないだろ。ミミックのパンツなんぁ興味あるか! てか、まずモンスターってパンツはいてるの?
「……ステフ、誤解だ……」
スィン。
俺のステータスオープン……。
【体 力】 160
今ので160まで減ったじゃん。っぐ。クリティカルで二倍ダメージだったか。
「お、俺はパンツは見てな――」
「クランさん。往生際が悪いですよ」
な、コウタ!? その斧でどうする! まさか……。
ガン!
っぐ……後頭部を。さ、最後まで言わせて――。【体 力】 1
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