第24話 Aランククエスト?いやいやSランクです

 銀羽コウモリを売ったり食ったり。夜遊びしたり、ステフと添い寝したり。同部屋だったコウタを足蹴にしたり。ちょっとやりすぎて喧嘩になって、俺が床で寝るはめになって。


 俺はステフと寝たいの! 


 部屋代けちって三人でベッドの取り合いしたのが間違いだった。床で寝たもんだから寝相が悪くて、朝目が覚めたら、顔に板の線が入ってた。




 早朝から獄炎エシュトアダンジョン。


「ほんと、ステフさんは大食いだし。クランさんは商売上手だし。二人とも本業は冒険者と鑑定士じゃないんじゃないですか?」


「コウタ。勇者候補ならもっと、がめつく行こうか。そんなんじゃ世の中、損するぞ」


「えー、嫌だな。俺、がめつい勇者にはなりたくないですよ」


 三人で、獄炎エシュトアダンジョンの地下一階まで降りる。ドラゴンは地下三階でよくエンカウントする。だから地下三階を目的地にする。


 問題は、温泉の源泉の調査が大変なことだな。


「壁透視」


 って、壁との距離十センチって、近っ! どれだけ壁を凝視しないといけないのか。ステータスを見るときでも、こんなに顔を近づけないだろ。


 壁の中が空洞でスケスケになって見える。でも、壁の厚さも十センチまでって、そんな薄い壁があるか。ダンジョンだぞ。中の土や岩しか見えん。意味がないぞ。早くレベルを上げないとな。


「十センチ以上先も……壁って」


 だがしかし、女湯への壁なら攻略できるはずだ。そのためには、女湯を繁盛させるべく温泉の源泉をつきとめなければ。そして、必要とあらば掘るぞ。壁だって削るぞ! 俺はどこまでも!


 あ、にやにやが止まらない。


「なに笑ってるのクラン?」


「い、いや別に」


「早くドラゴン食べたいね!」


「あ、ああ。そこ? うん。そうだな。報酬で肉屋のおっさんから、ドラゴンの肉を分けてもらえるしな」


 討伐。そして食す。これ基本にしようか。


「クランさんも、ステフさんも、食べる気満々ですね! バーベキューがいいな」


「もちろん、ギルドでバーベキューにしてもらえるぞ!」


「ギルドって何でもできるんですね!」


 そう言いながら地面も鑑定しながら歩く。


 ステータス画面を開くのと違って、手で探る感じ。


 宝石商とかが宝石鑑定をするのと同じ要領。手をかざすと、波長の波が跳ね返ってくる。


 それで、この波長は石の中でも固いからダイヤモンドだなとか、サファイアだなとか分かる。もちろん、それを鑑定結果としてステータス画面化することもできる。これが本来の鑑定スキル。


 今、地面の表面を手で探っているが、跳ね返ってくる波長は土の感触。たまに鉄分。鉱石のたぐい。温泉が近かったら水の波長があるはず。


「温泉、もっと深いところから湧き出てるのかな。結局最下層まで行くはめになりそうだな」


「魔王がいるかもしれないんだよね。クラン、心配だよ。無茶しないでね」


 ステフがぎゅっと俺のそでをにぎる。なんだなんだ。急にどうした。


「まだ地下一階だ。心配すんな。ってマジか」


 地下三階にいるはずのエッジネイルドラゴン。一匹討伐のAランククエスト。おかしいな。三匹いる。


 三匹いると、これSランククエストになっちゃうよな。


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