第21話 銀羽コウモリの襲来
「ほんとにほかに怪我はない?」
「ステフ! だから
傷口はすぐに
でも、コウタがじと目で見てくるからな。
おうよ、どうよ! 俺の方がやっぱりイケてるだろ? ほら、コウタもっと
「ほんとにほっぺただけ?」
「ああ、そうだよ」
でも、ほかに
ステフは俺をハグした手をやっと放した。
「じゃあ、いよいよ
「まあ、俺たちなら死んで骨だけになったりしないしな」
「クランさんのその根拠は、一体どこから湧いてくるんです?」
コウタは、斧をよっこいしょと背負った。勇者候補っていうよりおじいさんだろ。それは。
「じゃあ行ってくるね、ランドルフさん! テレサ受付嬢さん!」と、ステフが誰よりもやる気満々で叫んだ。
「おう、嬢ちゃん。気をつけてな」
ランドルフも、俺のクエスト達成の功績を認めて、獣人のステフのことを嫌がらなくなったな。
そのとき、ギルドのメンバーの一人が、青ざめて走ってきた。
「大変だランドルフさん!」
「どうしたよ?」
「銀羽コウモリの大群が町を襲ってきました!」
銀羽コウモリだって?
「満月にもなってないのにか!」
銀羽コウモリは
満月になると、ダンジョンの中で、満月の光の差し込むエリアで活発に活動する生態が知られているけど。
それがダンジョンの外に、一度に大群で出てきたことは今までにない。
ダンジョン内で同じく月の光に導かれて集まる、牙ネズミを主食にしているからと言われている。
だからダンジョンの外に出てくる必要はないはずだ。
「俺が行ってみてくる」
「任せていいのか?
「うん。俺、もうこの
「おお、頼もしいな」
「あんたもな。もう、ランドルフがギルドマスターでいいんじゃないの?」
「そう言ってくれると俺としても嬉しいね」
「俺からギルドマスターのレアさんに、サブマスターにしてくれって頼んでやるよ」
「そうだ。レアは、強情だからな。でも、マジかよ。あんたから頼んでくれたら、俺の昇進も待ったなしだな。
俺とステフ、コウタは町へとかけ出した。
逃げ惑う人々。押し合い、押し倒される老婆。出店の果物が、無残に転がる。
「だいじょうぶですか、おばあさん」
ステフがおばあさんを助け起こす。その上からコウモリが風を切って襲いかかる。
「ステフに手を出すなよ!」
俺は弓で射抜く。一本の矢で両羽を貫通させる。そのまま並木道の木に突き刺さる。
「クランありがと」
「いいのいいの。今すぐ抱いてくれてもいいんだぞ」
「はいはい。じゃ、寝る前にね」
いいのおおおおおおおおおおお?
「お若いのありがとうのう」
ちょっと、ばあさん。今いいとこなのに邪魔しないでくれる?
「ほら、ばあさん。あっちの屋根の下に行きな。急いで家に入れよ!」
コウタは、空に向かって斧を振り上げる。うーん。ちょっと低い。とても、見てられないな。まったく。でも、コウモリの足は斬り落とせたみたいだ。
「クランさん! 俺もやりましたよ」
「とどめ刺せてないぞ。仕方ない。尻ぬぐいしてやるか」
足をなくしても銀羽コウモリは元気よく人を襲っている。逃げ遅れた女性の頭に当たらないように。放物線を描いて上から下に。コウモリの首だけを貫通させて射殺す。
「さすがクラン! 弓めちゃくちゃ上手いね」
レベル500にもなればな。鑑定士は目が命。
「緊急クエスト前に、緊急で出かけるはめになるとはな」
宴会後だし、腹は満腹だし。たぽたぽ。おまけに酒も入ってるし。こりゃ、ただ働きするにしても、けっこうこたえる――ゲップ。
銀羽コウモリは雑魚だが、ステータスの弱点だけでも見とくか。
スィン。ヒュン。ペラリ。
【弱 点】 月光
こいつら、月光は好物のはず。新月におとなしくなるはずだ。一体どうなっている?
「弱点がおかしい」
「クランさん、どういうことです?」
そりゃ、誰しも体調不良とかで弱点が昨日と今日で変わることもある。確か、本来は日光が弱かったんじゃなかったけ? イブリン魔法学校で習った。
でも、日光と月光じゃ意味合いがまるで違う。まるで正反対の属性に変わったみたいだ。銀羽コウモリ自身が弱点を変えることは不可能だ。
だって、雑魚だもん。
「誰かが仕組んでるな。過去で全て分かるはずだ」
裏ステータス
【魔 法】 なし
【特 技】 吸血 中吸血、大吸血、特大吸血、絶死吸血
【弱 点】 月光
深層心理……キイイイイイイイイイ!
願望……血イイイイイイイイイイイイイイイイイ!
過去……いつまでさかのぼりますか? 年数を選択して下さい。
「じゃあ、過去、一日ほど」
過去……この一日、昨日の朝に目覚めてイノシシの血を吸血。昨日の昼に目覚めてキメラを吸血。昨日の夜に目覚めてバジリスクを吸血。昨日の深夜に目覚めてグリフィンを吸血――。
「なにその、俺の討伐クエスト三連と同じコース」
まだ続きがある。
過去……深夜から今朝にかけて満腹状態のところを、
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