第11話 クエスト三連 (バジリスク→かっこいい俺を見て!)

 バジリスクは、さらに一階下の地下三層でエンカウントした。地下三層になると、地熱が壁から伝わってくる。少しむれるような生暖かい空気だ。


 うねうねと、地面をはうバジリスク。全長二十メートルはあるかもしれない。


 緑のうろこと額に金色の角。舌をちろちろと出している。真っ赤な舌。鋭い毒牙。だらだらと毒液がしたたっている。


「クランさん、またステータス確認しているんですか。もう五メートルぐらいしか距離ないですよ!」


「まあ、場所が悪いだけだって」


 曲がり角で出会ったからな。バジリスクも出会いがしらに、おどろいてたし。


 遭遇してすぐにすること。ステータスオープン。バジリスクが早くも首を伸ばしてくる。口から毒液を飛ばしてきた。


 ジュラ!


 吐かれた毒液を、俺はステータス画面をカード化して回収しながらよける。


「さ、さすがクランさん! まるで歩きスマホだ!」


 じゅわっと足元に広がる毒液。赤茶けた土から紫色のゆげが立つ。


「それ、ほめてるのか?」スマホって、異世界人みんなが持っているっていう、便利アイテムだろ。


「ま、仮に食らっても、八咫やたがらすのブーツは同じ毒属性だからな」


「ていうか、クランさん。毒属性の靴って。かなり邪悪な趣味してますよね」


「俺は自分で戦わないスタイルなの」




【種 族】 バジリスク

【性 別】 オス

【レベル】 850

【攻撃力】 1200

【体 力】 800

【防御力】 1000

【魔 力】 1900

【速 さ】 1500

 



 表のステータスはキメラと似たようなもの。見たいのは裏ステ♪ 裏ステ♪




【魔 法】睡魔レム誘発バラード水流砕岩ウォーターダラー

【特 技】毒液

深層心理……彼女募集中。

願望……かっこいい俺を見て! 見ろよ、ごらぁ! 




「はぁ? 蛇の分際でかっこつけてんじゃないぞ」


 ジュラララ! (俺様が一番イケメンだあああ)


「てめーがイケメン? 認めるかあああ」


「クランさん言葉分かるんですか!?」


 バジリスクが蛇行して急接近してくる。胴が長いから狙い放題だな。まず胴に一矢射る。


 まあ、レベル上がったばかりの俺だけど、防御力1000は破れないわ。でも、麻痺付与の効果はある。一瞬だが、バジリスクの動きが止まる。チャンス!


 俺は奴の顔面に蹴りを入れる! 靴底のスパイクが、がっちり蛇の鼻や目に刺さった感触。痺れてきちゃうな。固定ダメージで弱ってもらいますか。


 噛みつかれる前に、バックステップでかわす。


 ジュラララ!


 バジリスクは、まだぴんぴんして、首を伸ばす。麻痺、あんまり効かない感じか。裏ステの備考欄オープン。




【備 考】状態異常確定武器でも、50%の確率で無効化するうろこに、おおわれている。

【状 態】毒状態。固定ダメージ100。




「全然効いてないって顔だな。でも、ステータスは、うそをつかない。一分後が楽しみだ」


「クランさん! 悪趣味! 悪趣味ですよ」


「さあ、毒蛇。俺の毒で一分間だけ踊る時間をくれてやる」


「一分って、俺が持ちませんよ、クランさん」


 正確には一分二十秒かかるな。


「まあ、俺たち防御力ないから攻撃食らったら終わりだ。でも、コウタ。食らわなければいい」


 ジュラララ! 


 バジリスクがまだ元気だとばかりに、毒液を飛ばす。俺とコウタは左右に分かれて飛ぶ。


「ピンピンしてますよ! ほんとに一分で死ぬんですかこいつ?」


「そろそろ、のたうち回るって」


 バジリスクが垂らす毒液の色が紫から透明に変わる。


 お、毒が効いてきてよだれを垂らしているな。あいつ、自分のステータス異常が分からなくて、身体を地面にこすりつけている。ステータス画面はそんなことをしても、出せない。俺の手の中。残念。


【体 力】 200


「二十秒でお前は死ぬ」


「クランさん怖い! 怖いですよ! 死のカウントダウン!」


 ジュ……ジュラ? ガフッ


 吐血したバジリスク。角のある頭が重そうにどうっと倒れる。死に絶えたな。


「毒蛇が毒で死ぬって。情けないよな」

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