第12話 クエスト三連 (グリフィン→右の前足)

 ギャルルルルル!


「クランさんワシっぽい鳥です!」


 上空から滑空してきたそれは、グリフィンだ。コウタが斧を空に向かって振る。当たるわけないだろ。


「コウタ! これがグリフィンだ。キメラと似てるけど」


 グリフィンは下半身がライオンだ。バジリスクと同じ地下三階層で発見できてよかった。こいつを討伐すればクエストクリアだ。


「そうだ、さっきのバジリスク戦でまたレベルが上がってるだろうな」


 ステータス画面を慌てて開く。俺は絶句する。


「っは! ついに来た! 俺の欲する裏ステ情報スキル!」


 まだスキル覚醒はしなかったけど。




【弱点表示】

 裏ステータス情報に「弱点」、「急所」が表示される。「深層心理」の項目がさらに詳細に記される。「過去」については、生まれた瞬間までさかのぼって表示することができる。




「これで、俺は弱点特効。攻撃力なんかなくても、毒と麻痺、そしてコウタを駆使して勝つ!」


「自分で戦わないスタイルはつらぬくんですね」


「さっそく見てやろうか。グリフィンの弱点。楽しみだ」


 スィン。ヒュン。


「もうクランさんの手のひらに、ステータスを乗せられたら終わりですね」


 にやにやが止まらないな。ちょっとドキドキしながら裏ステをめくる。


 ペラリ。


【弱点】 右の前足


 ドスッ。


 弓で右の前足を射る。


 ギャガアアアアアアア!


「お、すごい悲鳴。めっちゃ効いてるな。体力一気に三分の一になったな」


「足、怪我してたんですかね?」


「過去の欄っと。ふーん。腐りかけだったみたいだ。キメラと戦って骨折。放置してたみたいだな」


 ザシュ!


 コウタが首を斬り落とす。あっという間に片づいたな。


「レベルアップっと! っは!!!! こ、こ、これはついに!」




 見間違いじゃないよな。俺は目をこする。煌々こうこうと輝く。ステータスを指でピンチアウトして文字を拡大する! 表ステータスにはっきりと――。




【固有スキル】『覚醒透視スキル』




 裏ステをめくる手が震える。落ちつけ。落ちつくんだ……。これは、恋にも似た衝撃。足までがくがくしてきた。『弓の軌道補正』とかあるけど、そんなのは今は重要じゃない! 

 

 女湯……。女湯に俺は近づくんだ! とうとう、俺の眼前に女湯が広がる。やわらか素肌の女たちが振り返ってくれる――。


 ペラリ。




【壁透視】材質、成分問わず、厚さ十センチの壁を透視できる。透視できる厚さはレベルに比例。有効範囲も、壁との距離十センチ。透視できる壁との距離もレベルに比例。




「お、女湯の壁を、俺は、とうとう……」


「え、クランさん。何をぶつぶつ言ってるんですか?」


 川沿いの温泉の女の壁は厚さ三十センチだ。もっと、レベルを上げないと。ちなみに今レベル500だ。




【レベル】500

【体 力】600

【攻撃力】500

【防御力】550

【魔 力】600

【速 さ】550




 レベルはステフと並んだな。全体的には獣人のステフに劣るけど。でも、戦闘なんてどうでもいい。能力値よりも必要なのはスキルだったんだ!


『誰がここにいるのだ』


 人の声じゃなかった。ダンジョンの奥底から響き渡るような声。重くおごそかな声。まるで自分が偉いとでも思っているような声で呼ぶじゃないか。


「今なにか、うなり声が聞こえましたよね?」


「コウタには、鳴き声にしか聞こえないだろうな。あの声は」


 間違いない。

 その声の主がものかげからのっしりと現れた。緑の皮膚が見えたときには炎上ファイアブレスを吐いてきた! 


 コウタがあっけにとられる。

 まずいな。よけられない。

 コウタを突き飛ばして、いっしょに前に飛んで伏せる。


 髪の上を熱気が通過する。うわ、ちょっと髪が焦げたぞ。俺のつやつやの黒髪! なんてことしやがる。


「クランさん、ひどい。……え、あああああ! あれってえええええ」


 コウタが半泣きになるのも、無理はない。


「ドラゴンだ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る