第2話 俺のステータス

「うわー、クビとかパネェわ。これ日本人に教えてもらった言葉。パネェ。使い方あってる?」


「はい、あってますよクラン鑑定士さん」


 勇者候補として召喚された少年コウタくん。確か固有スキル【魅了……特に女を】の人。


 まったく色男に見えない。イケメンでもないしな。いったいどうやって女を誘惑するのやら。それよりも俺の仕事がなくなったことが大変だ!


「これからどうしたらいいんだ。俺も冒険者ギルドに行くしかないのか。クエスト受注するしかないのか。モンスターと戦うのって、宮廷の採用試験のとき以来か。俺は――戦いたくない」


 今回ばかりは弱音も出る。俺、ステフのぶんも稼がないといけない。忙しくなるだろうな。ゆっくり女湯をのぞく計画も練るヒマがなくなるのか。


 いや、ステフのことは大事にしてやってるよ。だけど、俺は温泉がダイスキ! 大好きなんだよおおお! 趣味の時間もほしい。趣味って言ってほしいな! はぁ。



 新米しんまい冒険者は生意気に、はしゃいだ。


「これからどんな冒険が、待ってるんだろ」


「どんな冒険もクソもあるかよ。最下層獄炎エシュトアダンジョンに行ったやつらはみんな、死んで骨だけだ」


 ダンジョンは日帰りで行ける地下三階層までは、生存率が五十パーセントほど。地下四階層から下の階は、いつ誰がどこで死んでもおかしくない。


「クラン鑑定士さん。『クソ』なんて言葉も知っているんですか。日本にくわしいですね!」


「鑑定士の一期生だからな。勇者候補召喚の儀式、第一回から三年間も鑑定士をしてる。ベテランだぞ」


「そんなすごい人をクビにするなんて、ひどいですね。ネリリアン国って。そんな国のために俺も戦うのかぁ」


「そうだよな。俺もギルド行きたくないな。恋愛ラブキュー鑑定士ピットとどっちがいいかな。肩書が嫌だよな」


「クラン鑑定士さんのステータスもオープンできるんですか?」


「当然。驚くな。俺のステータスは【透視スキル】に特化している! 見よ、これが俺のステータス! オープン!」


 スィン。




【レベル】 250

【体 力】 220

【攻撃力】 180

【防御力】 200

【魔 力】 300

【速 さ】 250

【固有スキル】『透視スキル』ステータスの鑑定を行うことができる。

       『異種族間いしゅぞくかん対話たいわ能力のうりょく』すべての種族と会話することができる。




「俺より低いんだ」


「うるさいな。ステータスには裏ステータスがある。裏をオープンすることができるのは俺だけなんだぞ。見ておどろくな。裏ステータスオープン」


 ステータス画面をぺらりと指でひっくり返す。

 ペラリ。




レベル……覚醒まで一定の経験値で上昇。よって基礎ステータスも同様。

腕力……攻撃力に影響する。

握力……攻撃力に影響する。

脚力……スピードに影響する。


その他、頭脳。知識指数。←できれば見たくない。


深層心理……俺は強いと思っているし、思いたい。だいじょうぶ、俺TUEEしてやる。


願望……女湯を透視したい




「クラン鑑定士さん女湯って……」


「お前だって変なスキル持ってるだろ。【魅了】って言いふらしてやろうか。俺のスキルは相手の弱みをにぎることができる! そこ重要な! ほら、くわしくってるだろ」




【透視スキル】における現在使用可能なスキル。


【強制ステータスオープン】自他問わずステータス画面を、手をふれずに念じるだけで開くことができる。その有効範囲は対象を目視できる範囲。なお、文字は拡大できる。夜間は、昼間の範囲が反映され、見づらい場合もステータス画面が光を放つ。


【裏ステータスオープン】

 裏ステータス画面への切りかえができる。裏ステータス画面とは裏情報まんさいのステータス画面のことである。深層心理、願望、過去もあばくことができる。


【ステータスカード回収】」……おっと、これ以上見るな。


スィン。


「人の弱みをにぎる。とか、最悪じゃないですか」


「つべこべ言うな、ゴンザブロウ」


「コウタです」


「ギルドに加入して、レベルを上げるぞ」


 俺が一番気にしている項目はレベル。【覚醒まで一定の経験値で上昇】。つまり、俺は何かの条件を満たせば覚醒する。そのためには、やっぱ戦うしかないか。


「でも、その前に……」


 女湯。女湯の壁に今日も挑む。

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