第23話 日常
あれから数日が経過した。
触上砂羽先輩は相変わらず、学校には来ていない。組織に属することはしないようだ。
ボクも組織に入ることは保留のままだ。鷹茶預かりという立場が継続的に続いている。
組織に入れば日常が激変して、しんどい。
何も変わらない日常が良いんだ。
多分、能力を使うことはもうない。
鷹茶も相変わらず、優等生キャラを通している。
そして、時たま、ボクに本格的に組織に勧誘してくる。
答えはいつでもノーだ。
機嫌が良くてもノー。
鷹茶が裸で、色々とオプションを付けてくれてもやはり答えはノー。
能力を使わないのだから、組織に入る意味がない。後ろ盾だってはいらない。ボクは1人で良いんだ。
大人になったら、絶対に誰かに頭を下げないといけない。それはどんな職種でも一緒だ。先輩が居て、上司がいる。客も存在する。芸能人だって、ネットで稼いでいる人だって、頭を下げるんだ。
だから今、組織に入ればヘコヘコする時間が増える。
そういうのは嫌だ。耐れない。
鷹茶には悪いけど、ボクには無理だ。
平凡。
平々凡々。
そんな日常が大切で大事だ。
ボクは放課後、教室で1人。先生が書いた黒板の字を一生懸命、ノートに書いている。本当だったら、スマホで撮影して家で書けば良いんだろうけど、これも日常だ。
これが平凡なんだ。
まあ今日最後の授業でボクが爆睡をしていたから、仕方ない。
ボッチだから誰もボクを起こさず、みんな帰宅した。黒板を消さないでくれたのは、ボクへ対する思いやりか嫌がらせか。そこは思いやりだと………信じたい。
よし。
書き終えた。
ノートを閉じ、帰り支度をする。
「その前にトイレ行こっ」
ボクはトイレに向かった。
下校途中で、トイレに行きたくなるのは避けたい。ストレートで家に帰る方が良い。
それに小だ。
何も心配する必要はない。適当にトイレへ入り、用を足す。
そう。
その筈だったが………。
「アンタねぇ!!!」
またもや、鷹茶を転送してしまった。
小便器にハマる鷹茶。洗浄のセンサーが反応したのか、ビショビショになる。
「アンタ、また私を転送したわね? いい加減にしてよ? 能力は制御出来るって豪語してたじゃないの?」
「うん」
いや、出来ていた筈なのに。
あ、そっか。
「ちょっと君のことを考えていたからだよ。ごめん」
「ごめんじゃないわよ。また警察にお世話になりなさい」
「えええぇ〜」
そう言い、ボクの体液で濡れた彼女がトイレを出て行った。
やれやれ。
ボクの日常はまだまだ帰って来ないようだ。
黄金の能力者 火雪 @hi-yu-ki
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