チーター達は風船を追いかけて

アほリ

チーター達は風船を追いかけて

 ここは、とあるサファリパーク。


 とても広大な敷地に、遠くアフリカの大地を再現された場所に、いろんな動物達が暮らしていた。


 「あーーーーー・・・暇だぁーーーーー・・・」


 チーターのボルガは、お気に入りのバオバブの木の太い枝にぐてーんと干しているように、手足をだらーんとして豪快に大あくびをして転た寝していた。


 は、そのまま眠りこけた。


 「ぐーーー・・・ぐーーー・・・」


 ・・・ん・・・?!



 ふうわり・・・



 「風船・・・緑色の風船だ!!」


 上空に、緑色の風船が飛んでいるのをチーターのボルガを見つけたとたん、目を見開き毛は逆立ち鼻の穴がパンパンに膨らみ鼻息を吹き出して激しく興奮した。


 「緑色の風船待ってぇーーーーーーーーー!!」


 チーターのボルガはバオバブの木から地上に飛び降りると、空を飛んでいく緑色の風船を追いかけた。




 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!



 「風船!!風船!!風船!!風船!!」


 チーターのボルガは走った。

 ボルガは土煙をあげ、轟音をたてて脚を大きなストライドで走った。

 

 「私、風船好きなの!!丸くてフワフワしてて、抱き締めたくなる位!!」


 チーターのボルガは上空の風船を見上げる度に、風船への興奮は高まっていった。



 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!



 「ん?」


 チーターのボルガは、後ろから迫ってくる気配に気がついた。



 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!



 「ら、ライオンさん!!???」


 チーターのボルガは、後ろから来て並んできたライオンのマツザに仰天した。


 「チーターのボルガ!!同じネコ科のライバルとして、あの緑色の風船を頂く!!」


 ライオンのマツザは立派な鬣をなびかせ、目はじっと緑色の風船に狙いを定め、


 「がおーーーー!!」


 「ライオンのマツザ!!何よいきなり吠えて!!」


 「チーターのボルガ!!君を牽制しようとな!!どけよ!!あの風船は俺様のものだ!!」


 「なによ!!あの風船は始め私が見付けたのよ!!」


 「いいや、あの緑色の風船は俺様のものになるのを欲しているぜ!!」


 「何言ってるのよ!!あの風船は私のよ!!」


 「いや風船は俺様のものだ!!」


 「私のよ!!」


 「俺様のだ!!」


 「私のよ!!」「俺様のだ!!」「私のよ!!」「俺様のだ!!」「私のよ!!」「俺様のだ!!」「私のよ!!」「俺様のだ!!」「私のよ!!」「俺様のだ!!」「私のよ!!」「俺様のだ!!」


 チーターのボルガとライオンのマツザは、お互い顔をくっつけて鍔迫り合いしながら、フワフワ飛んでいく緑色の風船を追いかけて走っていった。



 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!



 「な、」「なによっ!!」


 「あの風船は、僕が頂くよ!!」


 今度はベンガルトラのティが走ってきて、満面の笑みを浮かべて口を牙を剥き出して興奮しながら2匹に割っては入ってきた。


 「俺も風船大好き!!あーーー!!じゃれつきたい!!」


 「じゃれついたら割れちゃうでしょ!!」


 「君達にも牙と爪があるんじゃん!!君達も風船にじゃれついたら、割れちゃうんじゃね?ははっ!!お先にー!!」


 ベンガルトラのティは、大きな脚を高く挙げて唖然とする2匹を抜き去ってしまった。


 「やだーー!!トラにハシりに負けるなんて、ネコ類最速のチーターのプライドが許さないわ!!」 


 チーターのボルガは、脚のストライドを更に大きくあげてベンガルトラのティを抜き返した。


 「お先に!!風船は私が貰うわ!!」


 「俺が貰う!!」


 「私よ!!」


 「僕の方だ!!」


 ベンガルトラとチーターに遅れぎみになったライオンのマツザも負けじと、2匹に並んだ。


 「僕を忘れるなよ!!百獣の王としてあの風船は頂く!!」


 「そうはさせないよ!!あの風船はボクちゃんのものだよー!!」


 3匹の巨体をくぐり抜けて躍り出たのは、ハイエナのペスだった。


 「見ろよ。あの緑色の風船。空気が若干抜けて高度下がってるぞ。

 ボクちゃんに空気ふーふー入れて欲しいんだな。」


 「あのね、風船って軽いガスで浮いてるの。あんたの吐息入れても浮かないって!!」


 「でもあの風船でボクちゃん遊びたーい!!」


 ハイエナのペスは、ニタニタとほくそ笑みながら3匹のネコ科達の鍔迫り合いに加わった。


 「うわ、きも!ハイエナのニタニタ顔私生理的に・・・」


 「ボクちゃんの事何か?」


 チーターのボルガの怪訝な態度に、ハイエナのペスは振り向いた。


 「いや何でもないけど、あの風船は私のものだからね!!」


 チーターのボルガは、更に脚のストライドを効かせて他のライバル達を抜き去った。


 「みんな!!チーターを舐めるんじゃないわよ!!あの風船は私のよ!!」



 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!



 「ん?」


 チーターのボルガは振り向いた。



 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!



 「ええええええええええええええ!!」


 鍔迫り合いしていた4匹は、後方から迫ってきた集団に仰天した。


 シマウマからトムソンガゼル、キリン、ゾウ、カバ、サイ、ヌー等サファリパークで暮らしている動物達が挙って、空を飛んでいる緑色の風船を追いかけて走ってきたのだ。



 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!


 「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」


 

 チーターのボルガは、更にとんでもない事実に気付いた。


 「しまった!!走るのに集中しすぎて!!サファリパークの敷地の限界まで来てしまったーー!!」


 4匹は慌てて急ブレーキをかけて振り向くと、更に恐ろしい光景がひろがっていた。


 「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」


 中のヘリウムガスが抜けてきて、縮んで高度が下ってきた緑色の風船に、サファリパークじゅうの動物達が興奮して群がってきて捕まえようとして、揉みくちゃになってになっていたのだ。


 「うわーー!!なんて事!!」


 「皆が取り合いして、風船が嫌々してる。」


 「うわーー!!風船が割れちゃうだろー!!」


 他の動物達が風船に群がる様を傍観していたハイエナとトラとライオンは、段々と目が爛々と輝き鼻の穴がパンパンになって激しく興奮してした。


 「ボクちゃんも加わるーー!!」


 「俺様も!!」「俺も!!」


 ハイエナのペスやベンガルトラのティ、そしてライオンのマツザは挙って、サファリパークの仲間達の緑色の風船騒ぎに加わっていった。


 「あ・・・私も加わるわ!!」


 チーターのボルガも慌てて、その騒ぎに加わろうと走っていったとたん・・・



 ぱぁーーーーーーーーん!!



 ・・・・・・


 ・・・・・・


 ・・・・・・


 ・・・・・・



 「はっ!!」


 チーターのボルガは、目を覚ました。


 「なーんだ。夢かぁ。」


 チーターのボルガは、バオバブの木の枝の上で大あくびをした。


 「風船ねぇ。本当に風船が飛んでいたらいいんだけどねぇ。私は風船大好きだもん。

 フワフワして、丸くて。」


 チーターのボルガは、晴天の青空を見上げた。



 ふうわり・・・



 「風船だ!!本当に風船が飛んでいるわ!!」


 チーターのボルガは興奮して居てと立っても居られなくなり、バオバブの枝から地上へ飛び降りるかいなや、脚を大きなストライドをあげて尻尾でバランスをとりながら、土煙をあげて、空高く舞い上がっている緑色の風船を走って追いかけていった。








 ~fin~

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