第21話 三回戦目 セモンver.
「わざわざ魔剣を使うとは・・・お前は本当に魔神王になりたいのか・・・?」
「何ですか? 魔剣を使うと魔神王になれない理由でもあるんですか?」
『次世代魔神王決定戦』に魔剣の使用を禁ずるルールは存在しない。
セモンが言いたいことは、恐らく「魔剣」が「魔吸剣」に勝てるはずがないということだろう。
確かに「魔吸剣」は最小の魔力で高火力を実現できる最高の武器なのには違いない。
だが、「魔剣」が「魔吸剣」に劣ると誰が決めた?
要は、使用者次第じゃないのか?
つまり、俺が言いたいのはーーーー
「魔吸剣の性能は確かに認めます。しかし、魔剣が劣ると誰が決めたのですか? 性能だけで左右される心根を持っている兄上に俺が負けるはずないです」
武器や防具などの装備品は戦闘においてただのお飾りでしかない。
重要なのは、単体に備わる純粋な力だ。
力がないのに、豪勢に着飾っても何の意味も持たないことになぜ気が付かないのだろうか?
まあ気が付かないのも当然だろう、セモンは生まれつき授かった天賦の才に溺愛し過ぎている。
それがセモンという男の弱点なのだ。
その弱点を克服しない限り、彼が俺に勝てることは0に等しい。
「魔剣が魔吸剣に劣らない・・・? 随分と面白いことを言うじゃないか・・・」
「面白いことを言ったつもりはありません。それを今から証明しますよ」
「ふん、笑わせるな・・・。すぐさま蹴りをつけてやる・・・」
「いや、兄上には到底できませんよ。その武器概念に囚われ過ぎている心根をどうにかしない限りは」
そして、進行者の合図の元、『次世代魔神王決定戦 三回戦目』が幕を開けた。
開幕早々の十分な魔力をチャージしている片手斧の一撃に警戒していたのだが、攻撃の手が一向に飛んでこない。
それどころか、彼はその場から一歩も動こうとしなかった。
しかし、ここで容易に近づくのは論外だ。
俺は闇の炎を鋼の剣を持っている右手とは逆の手に顕現させ、それをすかさず浴びせるように放った。
闇の炎の範囲攻撃は、半径三十メートルを余裕で超えている。
回避されることはまずない。
案の定、彼は闇の炎を抵抗することなく闇の炎で炙られ続けていたようなのだが、姿を目視できた頃になっても彼の装備には傷一つ付いていなかった。
どうやら、今まで戦ってきた兄姉の装備とは違って魔力の耐久値が高いようだ。
まあ、まだ本気を出していないんだけど。
「本気じゃないだろ・・・さっさと本気を出さないと死ぬぞ・・・」
そう言いながら、前髪を掻き上げるセモン。
前髪の影に隠されていた瞳は噂通りの代物だった。
食らう獲物を決して逃がさない、まるで獣のような鋭い眼光。
確かに恐怖してしまうのも納得がいく。
だが、それより気になるのは瞳の奥から感じる膨大な魔力の塊だ。
その気配はシヴィリアーナ三姉妹にはなかったと断言できる。
彼の特殊能力だろうか? それとも別の何かか。
俺がその正体の解に辿り着くまでに、そう時間は掛からなかった。
というのも、すでに身体の一部で異常が発生していたから。
ーー足が・・・動かない・・・?
足を動かそうにも、意識とは裏腹にピクリとも動かなかった。
原因は、言うまでもなく彼の瞳の奥に隠された魔力の塊だろう。
ある程度の見当がついたところで、セモンの口から改めて説明された。
「これが俺の魔源力、「
「魔源力・・・?」
初めて聞く言葉だ。
「魔力」ではなく「魔源力」?
言い間違いでもなさそうだし「魔源力」で間違いないのだろうけども、「魔源力」って一体何だ?
疑問符を浮かべている俺を見かねたセモンは、呆れながらも律義に説明をしてくれた。
「そんなことも知らないのか・・・、魔源力とは魔力の根源を指す・・・。お前が現に使っている闇の炎はその魔源力から発せられているエネルギーを変換して使っているものなんだ・・・」
「そうなんですね、それじゃあシヴィリアーナ姉上たちから魔源力を感じられなかったのはどうしてですか?」
セモンの瞳に宿る魔力の塊が魔源力だというなら、シヴィリアーナたちから魔源力を感じられなかったのはなぜなのか。
セモンの言うことが真実だとするなら、彼女らも魔力を行使していたため魔源力を備えているはずなのだ。
もちろん、一回戦で戦ったべレフォールにも。
彼の発言には、明らかな矛盾が発生していた。
「シヴィリアーナたちから魔源力を感じ取れなかった・・・? そんなこと単純な話じゃないか・・・」
「といいますと?」
「魔源力を自覚するにはある程度の魔力が使えるようにならないといけないのだ・・・。サリカ姉程度の魔力を保持していないと真の魔力は使えないというわけだ・・・」
つまり、真の魔力を発揮できる「魔源力」を使うにはそれなりの魔力を必要とするわけだ。
「なるほど、それじゃあべレフォール兄上は? 魔源力を使えるはずですよね?」
「べレフォール兄は確かに魔源力が使える・・・。だが、使う前に蹴りと付けたのはお前だろう・・・」
「あ、そうでした」
「くだらないやりとりはここまでだ・・・。さあ、お前の魔源力を見せてみろ・・・」
確かに、サリカ以上の魔力を持つ俺も彼らと同様に魔源力が使えるはずだ。
全開で魔力を体現しているため、セモンを含めた魔源力を保持する兄弟はその特殊能力がどのようなものか気になって仕方がないのだろう。
だが、いきなり見せてみろと言われてもどうすればいいのかわかるはずもない。
そんなことを思っていた時だったーーーー。
「
別に俺自身何かアクションを起こしたわけではない。
よくわからないまま「
セモンはその光景を目にすると共に、俺の魔源力について仮説を立てた。
「やはりな・・・さっきの師範の魔法といい・・・、「
なぜか彼の言う事に不思議と疑問が湧いてこなかった。
というのも、俺自身セモンの仮説に納得しているからだろう。
誰の師範かまでは知らないが、確かに大魔術師と名乗る老人の魔法の効果を一切受けなかった。
つまり、あの時は魔力を根源とした魔法を打ち消していたということになる。
なるほど、彼の
ーーありがとう、魔力源!
と言っても、魔源力自体は意思を持たないから意味はないんだけど。
「なるほど、つまりは魔力系統の攻撃が効かないと」
「そういうことだ・・・」
「だとしたら、兄上に勝ち目はないと思うのですが」
魔神族の攻撃手段は、魔力を利用したものが多い。
要するに、セモンを含めた魔神族の攻撃では俺を倒すことはできないということだ。
それなのに、なぜかセモンの顔から焦りの色が見られなかった。
「随分と舐められたものだな・・・」
首を鳴らしながら、セモンは俺の元へと一歩ずつゆっくり近づきながら更に言葉を綴る。
「舐めるのは強者の特権だ・・・」
「つまり、俺より兄上の方が強者だと?」
「当然だ・・・、乗り越えてきた修羅場の数が違う・・・」
「ハ、ご冗談を。それじゃあ俺より強者だという証明にはなりませんね」
セモンの乗り越えてきた修羅場などたかが知れている。
なんせ、比べる相手が元大天使である俺なのだから。
そんな前世のことを知る由もないセモンは、挑発するかのように俺を見下してくる。
「だったら証明してやろう・・・覚悟しろ・・・」
「・・・上等だ」
睨み合う二人の間に火花が飛び散っているのは言うまでもない話だ。
そして、間も無くして二人はーーーー再び攻撃を開始した。
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