第3話 突然の通告とこれから
俺は母さんの後について行くよう、無駄に長い廊下を歩いていく。
恐らく、向かっている場所はーー『魔神王の玉座』で間違いない。
言うまでもなく、今から行われようとしているのは、『次世代魔神王』の座に誰が就くかの話をするのだろう。
『魔界』とは、魔神族、
かつては、
今回の召集は、魔神族滅亡を恐れての『次世代魔神王選定会議』なのだろう。
しかし、新たな魔神王を迎えればいいとそう単純な話ではない。
だから、『次世代魔神王』に就く者は
それにしたって、
遡ること数時間前ーー、普段と何も変わらない日常だったのだが、鏡と対面した俺は改めて自分の容姿と魔力量を確認していた。
「大天使エゼキフェル」の象徴とも言える、灰色の癖っ毛のついた髪に碧眼の瞳。
どこが違うかと言われれば、「身長」と「顔立ち」ぐらいだろう。
「身長」は、年齢相応の大体百四十センチメートルくらい。
「顔立ち」は、ジジ臭さが消えて若々しい顔立ちをしている。
「って、誰がジジイだよ」
ーーと、独り言を呟きながら魔力量を確かめてみる。
最近は「
「魔神族」の魔力数値は「大天使」とは違い、実体を持たないオーラとして常時湧き出るのではなく体現される。
つまり、その者の魔力は一目見ればわかるということだ。
「さて、どこまで魔力が増えたかなー?」
前に確認した時は五歳だったため、魔力はほんの少ししかなかった。
ーーそういえば、
それまでは見向きもされず、毎日母さんと下っ端生活を送っていた。
だが、興味本位で魔力の確認をしていた俺の部屋に突然
「まあ、そんなことどうでも良いよな。それより、魔力は・・・」
体現の仕方は、「大天使」で言う「神々しいオーラの纏い方」とほとんど一緒だった。
だから、誰かに教わるわけでもなく勝手に修得してしまったのだ。
本来なら、魔力の体現はどこかのタイミングで教わるのだろうが、「下っ端皇子」のせいかそれとも「平凡育ちの母親の元で育った」せいか誰からも教わらなかった。
これと言って不自由はないから、別に構わないが。
そして俺は五年前と同様ーーーー魔力値をその身に体現させ、一人で勝手に驚愕した。
計り知れないその強大な魔力量。
額全体に留まるはずの「闇の炎」は、体全体へと行き渡っていた。
一言で表すというならーー「凶悪」という言葉がしっくりくる。
「大天使」からの転生が魔力値に大きな影響を及ぼした、としか考えようがないだろう。
「これが、俺の魔力量か・・・、この闇の力を使うには・・・」
光の力と闇の力は、根本的な「魔力コントロール」の仕方がかなり異なる。
「魔神族」となった以上、光の力はもちろん使えないわけで、もし闇の力を使いたいのなら
だが、
だから、独学で「魔力コントロール」を学ばなければいけないのだ。
試行錯誤しながら「魔力コントロール」の特訓を始めて五分が経過した頃、俺の部屋が乱暴にノックされ、扉が開かれる寸前に「闇の炎」を自分の身の内に引っ込めた。
というのも、母さんには「心配」させたくないからだ。
先ほどの「凶悪」な姿を見せれば、いずれは俺が抱く計画も全て悟られかねない。
「大天使」たちへの復讐ーーそして、上級貴族への復讐。
いつかは全てを打ち明けるつもりだが、そのいつかは今じゃない。
だから何としてでも隠し通さなければならなかった。
そんな俺の目の前に突如現れた母さんは、慌てたような・・・取り乱したような、そんな雰囲気で告げた。
「・・・ま、魔神王様・・・が・・・お亡くなりに・・・」
そして現在に至るわけだが、正直なところ腑に落ちない点があった。
それは、「なぜこのタイミングで
急死することは珍しい話ではないから、別に誰かを疑っているわけではない。
だが、俺の中で何かがストンと落ちて行かないのだ。
それが何なのかもわからないから、こんなにもスッキリしないのだろう。
ーーにしても、これは復讐する絶好のチャンス・・・と言いたいところなんだけどなー。
正直、彼らには会いたくない。
ここでいう彼らとは、同じ
何回か顔合わせしたことはあるが、まるで俺と相性が悪い。
その傲慢さが、彼らの弱さの源なのだろうといつも思う。
そんな奴らを『次世代魔神王』にするわけにはいかない。
それに、この機を逃せば復讐する機会は二度と訪れないかもしれない。
だからこそ、俺はならねばならない。
この俺がーー『次世代魔神王』になるのだ。
その決意を胸に俺は「魔神王の玉座」へと向かって行き、辿り着くなり母さんが俺に心配そうな視線を向けてくるが、言いたいことは概ね見当がついている。
「俺は大丈夫だから、母さんは母さんの心配だけしてくれればいいから」
それから、この「玉座」から退室するまで母さんの顔を見ていない。見なくてもわかるから。
恐らく、母さんは優しいから自分の身を捨ててでも俺のことを心配してくれているだろう。
そんな母さんが安心してできるような「息子」にならなければならない。
そのためにもーーーーー
俺は重さを感じさせる扉をゆっくりと開けた。
すると、そこには俺以外の
そう、血を分けた醜いーーーー「兄弟」だ。
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