第45話 チェンソーの女①

「あなた…ここで何してたの…?」


アリスさんはチェンソーの女の目を見ながら彼女にそう言った。

私たちがここに来た目的は「彼女を殺してロゼッタを救う」だが、ロゼッタ達がどういう目的でここに来るのかはさっぱり分からない。

それに、さっきの話声と中の少女を見た感じ、普通のことではなさそうだ。


「そんなの教える必要あるか?」


チェンソーの女はアリスにそう返答した。


「教えてくれないのなら…嫌でも話してもらうわよっ!」


アリスさんは彼女にそういうと、彼女の顔目掛けて魔法で攻撃を繰りだす。

突然始まった戦闘だが、チェンソーの女はアリスの攻撃を涼しげな顔でかわし、倒れたままの私達に向けてチェンソーを振りかざす。


「結衣ちゃん!」


私はどう回避すればいいだろうと頭の中で思ったが、考える間もなくアリスさんの魔法で少女が拘束されている部屋の中へと投げ飛ばされた。

もうちょっと優しく…と思ったが、女のチェンソーを振りかざす速度はとても速く、アリスさんもガードするのがやっとの速さだ。咄嗟の判断でそうしたのだろう。


私はこの世界から何年か離れてしまったため、この世界がどういう場所なのかを忘れてしまっているようだ。


私はチェンソーの女の背後に回ることができたため、(これはチャンスだ)と心の中で思い、ロゼッタと行動していた時のアイテムを取り出す感覚を思い出し、アイテムボックスの役割をしているネックレスから弓矢を取り出すと彼女の背中へ向け矢を射る。

高校生の頃の私に(ネックレスを外さないでいてくれてありがとう)と思った。


「…そんなの効くと思ったか?」


彼女の背中に矢は命中したが、チェンソーの女は痛がる様子を見せなかった。

それどころか、余裕そうな表情を私に向ける。

私はそれを見て絶望と同時に忘れていたもう一つのことを思い出した。

それは、「この世界では常識が通用しない」だ。


「…くっ!」


私は再び矢を放つが、結果は変わらなかった。

それどころか、アリスさんの強力な魔法攻撃も通用していない。


「…はぁ、うるせぇなぁ」


チェンソーの女は苛立ちながら私たちにそう言うと、持っていたチェンソーを空き缶を投げるかのようにアリスさんの方へ投げる。

アリスさんは咄嗟に防御魔法を発動するが、チェンソーが防御魔法に当たるとガラスが割れるようにあっさりと破壊されてしまいアリスさんは驚きで表情を歪める。


「がっっぅ…っ!!!!」


投げられたチェンソーはアリスさんの腹部に勢いよく突き刺さり、チェンソーの刃は肉をかきむしるかのようにどんどん奥へと侵入する。

アリスさんは悲鳴のような声を上げ、魔法を使って必死に抜こうとしたり、回復魔法を使ってどうにかしようとするが、魔法を使うことによって少しずつ自分の体力が消費されていく。


私はどうにかしてアリスさんのもとへ行き助けようと立ち上がるが、チェンソーの女はそれを察したのか私の首元を掴み、足が地面につかないぐらいの高さまで持ち上げる。

その力はとても強く、女性が首を絞めつけているような力ではなかった。

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