第42話 不思議な女性③

私はアリスさんに話せば何かヒントが見つかるかもしれないと思い、念の為に持ってきたリストを彼女に見せながら話した。


アリスさんは真剣な顔で私の話を聞きながら、リストを見て近くのメモ用紙に書き出していく。


「…なるほどねぇ…。だからか…」


「何か分かったんですか?」


「うん。なんで結衣ちゃんと話が噛み合わないのかの理由が分かったのと、私が助けてもらった時の結衣ちゃんと違うところがある事が分かった」


「助けてもらった時…というのは…?」


私は、アリスさんの話を聞きふと一つ疑問に思った。

なぜ疑問に思ったかを考えようと思ったが、アリスは私に考える間をあげないような速さで私の違うところのを説明した。


「時間が経って成長したからかな?って思ったけど、結衣ちゃんにとても強力な魔法がかけられてる感じが凄くしたんだよね…。それに、たまにロゼッタ達の世界に遊びに行く時があるんだけど、ふとしたタイミングから一切会えなくなったから…もしかして…。あっ、結衣ちゃんちょっと手出して」


「はい…」


アリスさんは独り言のように話すと、私に手を差し出すように言い、私はそれに従った。

すると、アリスさんは私の手を握り、目を閉じるとぶつぶつと何か言い始める。

 

なんなんだろうと思っていると、突然頭の中にある記憶が鮮明に出てきた。

それは、ロゼッタさんに時間を戻される時の記憶だ。


「…ん…!……っはぁ!…ごめん…これ以上は…限界…!やっぱり…強力な……!結衣ちゃん…?」


「…っ……!」


アリスさんは私の手をバッと離すと椅子にもたれかかるようにして息を切らす。


一瞬の瞬間に見たあの光景。

私の事を今の世界に戻す為に魔法をかけるロゼッタさん。

その隣に立つサーニャとマーガレットさん。


それと、まだ掠れてはいるがアリスさんのおかげでロゼッタさん、サーニャ、マーガレットさんとの旅の記憶が薄ら思い出せる。

それらが無かったかのようになる魔法にかけられていたとは言え、三人はあの世界の住人じゃない私を守る為に必死に行動してくれたのに、私は忘れてしまっていた…。

私は色々な感情が込み上げてきて、自然と涙が溢れ出てくる。


「ごめんなさい…」


「大丈夫だよ…。多分だけど、ロゼッタが心配かけないようにするためにやった事だと思うし…」


「…って事は!ロゼッタさん達はもう…!」


「考えたくはないけど…」


私を慰めてるアリスさんをよそに、私は最悪な事を考えてしまった。

それは、あの時見た夢の通りならばロゼッタさん達は誰かに「殺されている」という事だ。

あの世界にいた時、ロゼッタさん達は私基準になってしまうが、それなりに強いものだと思っていたが、それを上回るものがいるという事だ。

想像するだけで恐ろしい。

そして、アリスさんの一言に私はある事を思いついた。


「アリスさん!時間を戻してロゼッタさん達を救う事って出来ますか!?」


「え…?!時間を戻すって…出来なくはないけど…」


「じゃあやりましょう!」


「待って!…いいから落ち着いて…!」


「…あっ。ごめんなさい…」


私は気持ちが先走ってしまった為、アリスさんの意見を聞かずに進めようとしてしまった。

アリスさんは私を落ち着かせ、自身の考えなどを話し始める。


「…はぁ…。まあ、時間を戻す事は出来るけど…時間制限があるし、下手したら帰って来れない可能性の方が高い」


「時間制限ってどのくらいですか?」


「およそ二時間。けど、私の魔力次第だからあの世界で余分に使ってしまったらその分時間は縮まるし何度も出来ない。最悪の場合、ロゼッタ達を見つけられずに戻されるか、ロゼッタ達みたいになってしまう可能性も…」


「大丈夫です」


「え?」


「結果はどうなるか分かりませんが、覚悟はしてます。だって、覚悟無かったらこんな事言いませんし、ロゼッタさん達に恩返ししたいんです」


私は、アリスさんの意見を聞き一瞬迷ってしまったが、今迷っていたところで世界は何も変わらない。

それに、あの世界では助けてもらってばかりだったが、「今度は私の番だ」と心の中で強く思った。


「…やっぱり、結衣ちゃんは変わらないな…。分かった!でも、失敗しても私を責めないでね!」


アリスさんは私の言葉を聞くと笑顔で立ち上がり、私達のいる空間に魔法をかけた。

おそらく、私の事を信じてくれてるのだろう…。



「結衣ちゃん、着いたよ」


「…ん…」


アリスさんの魔法の後、意識が一瞬飛んでいたような気がするが、アリスさんの問いかけで意識を取り戻した。

澄んだ空気とノイズのような環境音は聞こえてこない。

そう、あの時の感覚。私が初めてあの世界、ロゼッタ達の世界に来た感覚と全く同じだ。


私達はロゼッタ達の世界に再びたどり着いたのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る