第41話 不思議な女性②

東照宮から歩いて数分ぐらいのところにある彼女の占い屋。

私の薄暗いという勝手なイメージとは全く違い、占い屋の中は狭いものの、カフェのような作りだ。

そして、エアコンが付いているからとても涼しい。


「ここに座ってて。飲み物持ってくるから」


「はい」


彼女は飲み物を取りに、一度部屋を出る。

興味本位で私は辺りを見渡してみるが、やはり私のイメージしていた占い屋とは違っていた。

至る所に観葉植物が飾られ、大きな水槽には熱帯魚が泳いでいる。

そして店内は芳香剤の匂いがするが、不快になる臭いではなく心が落ち着くような匂いだ。


「お待たせ。ミルクと砂糖は好きなだけ使っていいからね」


「ありがとうございます」


彼女は私の前にアイスコーヒーとミルクと砂糖が入った箱、お菓子を置くと、私と向かい合わせになるような形になるように自身の椅子を動かし、そこに座る。


彼女との距離が近くなって再び思うが、やはり私は彼女をどこかで見た事あるような気がするのだが、やっぱり思い出せない。すごくもやもやする。

そして、女性の話し方が少し変わった気がする。


「ごめんね、コーヒーしかなくて。私コーヒー好きだからこればっか買ってきちゃうんだ」


「そうなんですか…。あの、聞きたい事があるんですけど…」


「…なんで私があなたの名前を知ってるか?って事?」


彼女がそう言いながらアイスコーヒーに口をつけていると、私は今までずっと思っていた事を聞こうと思い、口を開いた。

だが、占い師(?)である彼女にはバレバレだった。


「はい…。それに、私はあなたと今日が初対面のはずなのに、どこかで会った感覚があるんです…。それが凄く不思議で…」


「…そうね。あなたは覚えてるかどうか分からないけど。あなたは私の命の恩人なのよ」


「…えっ…?」


私の質問に、女性はそう返答した。

(命の恩人…?どういう事?)と私は思う。

私は彼女の命を助けた記憶がないし、たとえ別人だとしても、全く思い出せない…。


「…うーん…。その様子だと、人違いだったかな…。あなた、名前は?」


「冴島結衣です」


「冴島結衣…うん、やっぱり結衣ちゃんだ。ねぇ結衣ちゃん、この紙に漢字で名前書いてみて」


「は…はい…?」



私は、彼女の言う通り白紙のコピー用紙に自分の名前をボールペンで書いた。

彼女は紙に書かれた私の名前を見て「へーこう書くんだー」と言うが、私にはこの光景の意味がさっぱり分からなかった。


「あの、これなんか意味あるんですか?」


「…ん?あーごめんごめん。…でも、本当に覚えてない?」


「覚えてるって…何をですか?」


「そうか…。覚えてないんだ…。分かった。説明するね」


私は少し苛立ったような感じに言ってしまったなと思ったが、彼女だけ楽しんで、私だけ置いてけぼりなのは気持ちが良いものではない。


「私は奴隷としてあるお金持ちの屋敷に閉じ込められてて、いつか外の世界を見てみたいなーって思ってた時があったの。それで、抜け出すタイミングがあって何とか抜け出せたんだけど、4歳から24になるまで教養も無しにずっと屋敷に閉じ込められてたからどうすればいいか分からない時に、あなたが、結衣ちゃんとロゼッタさん達が助けてくれたの」


彼女は説明を始めたが、私はその内容にピンとくるところが一つも無かった。

だが、その説明に「ロゼッタさん達」という謎のワードが出てきた事が気になった。


「あの、私はそんな事記憶に無いですし、あなたの名前を知らないんですけど…それに、「ロゼッタさん達」って他に誰かいたんですか?」


「ああ、ごめん。私の名前は「有栖川紗奈」。みんなから「アリス」って呼ばれてるの。それと、「ロゼッタさん達」ってのは結衣ちゃんと一緒にいた「ロゼッタ」、「サーニャ」、「ミーナ」、「マーガレット」の事だよ。覚えてない?」


「…え?」


私はアリスさんの名前を聞いて、うっすらと過去にアリスという名前の人物と関わった記憶があるような気がしたが、それよりも、「ロゼッタさん達」の時に出てきた「四人」の名前にピンとくるところがあった。

それは、私が夢の中で見た倒れている人数と同じだからだ。


「アリスさん、私の話を聞いてくれますか?」


「うん、いいよ。それが占い師の仕事でもあるからね」


私はアリスさんに話せば何かヒントが見つかるかもしれないと思い、彼女に話した。

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