第37話 真実③
ロゼッタから告げられた「元の世界に戻るには時間を戻し、運命を変えるしかない」という事。
それは、ロゼッタ達の思い出が全て失われるという事だ。
最初はこんな世界嫌だと思っていたが、ロゼッタ達がいたからただの辛い思い出というわけではなく、むしろ楽しい思い出だ。
それを忘れたくはない。
「記憶を消さないで…って出来ないんですか…?」
私はロゼッタにそう質問した。
だが、ロゼッタは首を横に振った。
「ごめんね…。私もそうしたいけど、ユイちゃんの全てを事故前に戻すわけだからどうやっても出来ないの…」
「そう…ですか…」
私はロゼッタの言葉を聞き、そう返答するしかなかった。
何とか…と言いたいが、ロゼッタがそれ以外の方法は難しいと言っているので、これ以上わがままは言えない。
「分かったよ…「お姉ちゃん」…」
私は今、このタイミングしかないと思い、ロゼッタの事を「お姉ちゃん」と呼んでみた。
なぜこのタイミングしかないと思ったかは謎だが、この後すぐに元の世界に戻されるのなら、ロゼッタが私の姉だったか確認したいのだ。
「え…?ユ…ユイちゃん?いきなりどうしたの…?」
やはりロゼッタの反応は困惑だった。
そりゃあ、いきなり「お姉ちゃん」と言われては仕方がない。
そして、私はなぜロゼッタの事を「お姉ちゃん」と呼んだのか説明した。
「…なるほどね」
「はい…。あの…ロゼッタさんは、私の世界をちらっと見たって言いましたよね?その時何か感じませんでしたか?」
私はロゼッタに確認した。
ロゼッタは最初、私がどういう形で亡くなったかの確認の為に私の世界をちらっとだけ見ていた。
「…いや…空気が悪いな…とだけで…特に…」
「じ…じゃあ…」
「…もういいよユイちゃん…」
「え…」
「実は、私もユイちゃんとは何か近しいものを感じてた時があったんだよね。だけど、世界には自分に似た人がいてもおかしくないって思うんだ。だからユイちゃん、私の名前は「ロゼッタ・コーデン」。この世界で産まれて、この世界で生きている。ユイちゃんとは仲間であっても、性格が似ていようと、姉妹じゃない」
ロゼッタは私の意見を遮ると、そう言った。
少し納得がいかなかったから、ロゼッタに反論をしようと思ったが、家の外でタバコを吸っていたマーガレットが窓をノックし、私を呼んだ為、私は仕方なく家を出た。
「…はぁ…」
ユイが家を出て行ったのを確認すると、ロゼッタは深くため息をついた。
「ロゼッタ…これで本当によかったの…?」
そして、二階でユイとロゼッタの様子を見ていたサーニャが二階から心配そうに降りてきた。
「何が…?」
「ユイちゃんのお姉ちゃんかも…ってやつ…。だって、ユイちゃんには隠してたけど、確認の時に言ってたじゃん、「来た事ある」って…」
「うん…。だけど…確信が持てないの…。全然…。…実は、ユイちゃんに出会ってから変な夢を見るようになったんだ…」
「…変な夢?」
「…うん。私が知らない場所で、知らない家族と遊んでる夢。家族の顔も見えないし風景も眩しくてどこだか分からないんだけど、草木がある所ってのは分かるの…。そして、何か話しているんだけど、何を話しているか分からない。とにかく変な夢…」
ロゼッタは珍しく不安に駆られたような表情を浮かべながらサーニャに話した。
私(冴島結衣)はマーガレットに呼ばれ、マーガレットの元へと歩いた。
「…どうだった?」
「…やっぱり…違うって言われました…」
「…そうか」
マーガレットは一言そう言った。
私は脱力したかのようにマーガレットの胸元に顔を押し付ける。
マーガレットは何も言わずに私の頭を撫でた。
私は幼少期の頃から姉が欲しいと思っていた。
それは、友人や街でたまにすれ違う姉妹を見てぽっかりと空いた不思議な感覚になったからだ。
いたらいいなーっと言った軽いもののような気でいた…はずだった。
「ママ!私!お姉ちゃんが欲しい!」
私は幼少期の頃、恐らく小学生に上がってすぐ、母親に無理な事を言った。子供故の無知さでだろう。
それを聞いた私の母親は、最初何を言っているんだと言っているような表情を浮かべた後、一息つき私にこう言った。
「そろそろ結衣も知ってもいい時かもね…」
私が産まれる10年以上前、母親に初めての子供が産まれた。
私の姉になるはずだった子だ。
容姿は母親似だったが、産まれてすぐに泣かず、医師が手を尽くしたが亡くなった。
母はその時の事がトラウマになってしまい、私に話そうにも話せずにいたらしい。
私はその話を母親から聞いた後、その子の分も生きようと思のと同時に会ってみたかったと思うようになってしまった。
そんな気持ちを最近忘れかけていた時にロゼッタと出会ってしまい、私の気持ちは勝手に焦ってしまった。
「容姿が母親と似ているから」という安直な理由のみで行動してしまった自分に苛立ちと、姉に出会えなかったという悲しさに押し潰され、自然と涙が溢れてくる。
「いいぞ… 私は何も言わねぇから…思う存分泣け…」
私はマーガレットの言葉に我慢していた気持ちが降りしきる雨のように溢れ出した。
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