第35話 真実①

マーガレットの家で食事を取った後、私はマーガレットに「この町の事をもっと知りたい」と話した。


「…知りたいって言われても…」


やはりマーガレットの反応は複雑そうだ。

この町の治安の悪さは数分前の出来事で嫌と言うほど分かった。

だが、私はこの町の…いや、この世界の文化の違いについて知りたくなったのだ。


「お願いです!」


「…はぁ…。分かった…。ハンリン、悪いけどまた留守番頼めるか?」


「うん!大丈夫だよ!」


マーガレットは私の頑固さに負けたのか、ハンリンに留守番を頼むと立ち上がり、テーブルに置いてある車のキーを手に取る。

そして、私達は一階へと降り、マーガレットと私が車に乗り込むと、ハンリンがシャッターをガラガラと開ける。


「お前って…ほんとロゼッタに似てるな…」


「…え?」


マーガレットが何を言ったのか聞こえなかった私は聞き返そうとすると、マーガレットはそれを無視するかのように車のエンジンをかけ、ギアを一速に入れ発進させる。


「あの…さっきなんて言ったんですか?」


「ん?お前がロゼッタに似てるって言ったんだよ」


私は再び聞き出すと、マーガレットはコートの胸ポケットに入れていたタバコを咥え、ドアに付いている金属製のレギュレーターハンドルを回して窓を半分開け、タバコに火をつけた。


「私がですか?」


「ああ…。その変に頑固な所と好奇心の強さがな。本当に初めて会った頃のロゼッタそっくりだよ…」


マーガレットは私にそう言うと、タバコを吸った。

それを聞いた私は、薄らと感じていたロゼッタとの親近感をより強く感じた。


「…そういえばマーガレットさん…。ロゼッタさんって何歳なんですか?」


「ん?…んーと確か…29とかじゃなかったっけか…。どうしてだ?」


「…私、一人っ子なんですけど、本当はロゼッタぐらいの姉がいるはずだったんです…。けど、姉は産まれてすぐ病死してしまって…」


「…そうか」


私の話を聞いたマーガレットは申し訳なさそうに返答した。

私もこんな事話すんじゃなかった…。と思ったが、ふと私が初めて会った頃のロゼッタとの思い出を振り返る。


(ものすごく元気で29歳には見えなかったな…。けど、私達の事を心配していて、頭撫でてもらったっけ…。あの時お母さんみたいだなって……あれ…?)


ロゼッタとの思い出を振り返っていた私は、ロゼッタに頭を撫でられた時の記憶である事に気が付いた。


それは、「お母さんみたいだな」と言う事だ。

母性とかそういうのではなく、幼少期に何かに失敗した時メソメソ泣いていた私の頭を撫でてくれた母親の雰囲気とロゼッタが似ていた。

まるで、若い頃の自分の母親に頭を撫でられた様な感覚だった。


そして、ごく稀にだが私のいた世界で亡くなると私が今いるマーガレット達が過ごしている世界に転生する。

となると、確信は持てないが生まれてすぐに亡くなった私の姉がロゼッタだったという考えが出来る。


「マーガレットさん!今すぐロゼッタさん達のところに戻ってください!」


「はあ!?いきなりどうしたんだよ!」


「お願いします!確信は持てないですけど、何か分かると思うんです!」


「…ああああ!分かったよ!その代わり、戻ってる道中で何が分かるか説明しろよ!」


「…!ありがとうございます!」


私の話を聞いたマーガレットは少しイラついてはいるが、ロゼッタ達のいるマーガレットの旧宅へ車を走らせた。

そして、私はマーガレットに何が分かる様になるかを説明した。


「なるほどな…。やっと分かったぜ。お前とロゼッタが似てる理由が…けど、真実はどうかは分からねぇから覚悟は決めとけよ」


「もちろん、その気でいます」


私はマーガレットにそう返答するとマーガレットは鼻で笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る