第34話 アレゲニー町散策②
私はおいしくない朝食を食べ終え、マーガレットについて行くようにしてある場所へと向かった。
それは少し大きめの倉庫で、マーガレットは下ろされたシャッターの隣にある扉の鍵を開ける。
「よし、入っていいぞ」
「お…お邪魔しまーす…」
マーガレットに案内され、私は恐る恐る入ると中にはアレゲニーに来てからどこに駐めていたのだろうとかすかに思っていたマーガレットの愛車と一台の大型バイク、様々な無数の工具類や機器類とオイル缶、奥には乱雑にツナギが置かれているソファとテーブルがあった。
「まあそこに座んな」
「マーガレットさん…ここって何なんですか?」
「ん?ここか?新居だよ。私らの」
私はマーガレットにソファに座るよう促され、座った後疑問に感じていた事を聞いた。
マーガレットは羽織っていたジャケットを脱ぐとソファの上に投げ捨てる様に置き、隣に置いてあるツナギを着た…というより脚を通した後、腕を通さず腰辺りで袖を縛っているので履いたと言うのが正しいのだろう。
そして、適当に工具棚から工具を取ると愛車のボンネットを開け整備を始めた。
「じゃあ、ロゼッタさん達がいる場所って?」
「あそこは借りてたとこでな…まあ分かる通りドアは立て付け悪いし、車置く場所ないからここに引っ越したわけ」
「なるほど…だからあそこは殺風景に近かったんですね」
「そう、そういう事…。あー…やっぱりか…」
私はマーガレットの話を聞き、何となくだが納得出来た。
今ロゼッタ達のいるマーガレットの家は家具はソファとテーブルしかなく、それ以外の物は無かった。
マーガレットの性格的に余計なものはいらないからあんなに何もないのかなと私は思っていたのだ。
「…よし…。あーユイー、耳塞いでろー」
「は…はい…?」
マーガレットは愛車の整備を終え、私にそう言うと確認だろうか運転席側のドアを開け、キーを挿した。
シュイイィ…ゴオオオオォー!
ドドドドド!
マーガレットがキーを回すとエンジンが勢いよくかかり、エンジン音と排気音が倉庫内で反響し轟音に聞こえる。
耳を塞いでないとうるさくて耐えられないほどだ。
だが、マーガレットは耳を塞ぐ事なくアクセルを何度か踏み、エンジンの状態を調べる。
カチッ…
「…うし!オッケーだな!」
マーガレットはエンジンを切ると、キーを抜き、運転席側のドアとボンネットを閉めてそう言った。
轟音が収まったので私は耳を塞いでいた手を離す。
「いやー…わりぃな…うるさくて…」
「は…はは…。でも…マーガレットさん…よく平気でいられますね…」
「まあ、慣れちゃってるからな…。ちなみにそこにあるバイクもうるさい」
マーガレットは「ははは…」と笑うと、ソファの近くに置いてあるエンジンやマフラーなどがメッキで光っている赤いバイクを指差してそう言った。
人の趣味だから文句は言わないが、なんか徹底してるなーっと思った。
「…んぅ…マーガレットー…お帰りー」
そんな話をしていると、二階の居住スペースのドアが開き、眠そうに目を擦りながら倉庫の壁につけられた鉄製の階段を降りてくる少女がいた。
「おっ、ハンリン。おはよう」
「んー…。ん?そこにいる人は?」
少女は「ハンリン」というようで、マーガレットに眠そうに挨拶をすると、私の事を見てマーガレットに質問した。
「ユイだよ。私の知り合い」
「結衣です…。よろしくお願いします」
「ん…。それよりマーガレット…朝ご飯食べた…?」
「まだだな」
「分かった…。ふあぁ…じゃあ今日は三人分だね…」
私はハンリンにそう名乗ると、ハンリンは眠そうにコクリと頷き、マーガレットに質問した。
どうやらさっき食べたホットドッグは朝食にカウントされないらしい。
たしかにあれは美味しくなかったし足りなかった。
少し期待して待つのもありだろう。
そしてハンリンは眠そうにそう言い、二階へと上がった。
「あの、ハンリンちゃんって…?」
「ああ、説明するの忘れてたな…あれは私の同居人だよ」
私は彼女の事が気になりマーガレットに質問すると、マーガレットは彼女の事と彼女との間に何があって現在に至るか工具の片付けなどをしながら説明してくれた。
ハンリンちゃんは元々マーガレットとは敵対関係だったが、改心し、住む場所が無いからという理由でマーガレットと共に過ごすようになったらしい。
マーガレットがロゼッタ達と行動している間は一人で留守番だが、何も起きてないとなると普通に生活出来ているようだ。
「できたよー」
私とマーガレットでそんな話をしていると、ハンリンが二階から私達に呼びかけた。
私達は二階に上がり、部屋へと入る。
部屋の中はワンルームだが広さ的にまあまあ広く、家具が予想以上に揃っている。
そして部屋にはテレビは無いが代わりに、木製のレコードプレーヤーから音質は悪いがクラシックが流れていた。
正直言ってこの世界にレコードがある事自体驚きだが、車がある事を考えると多分おかしくない事なのだろう。
なんとなくだが、この世界の文化などの違いが分かってきた気がした。
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