第三章「レオフレート・ファミリー ナンバー3」

第22話 小さな廃村のレストラン①

ロバートの一件から数時間経ち、朝の8時すぎ


私達は車を数時間走らせ、隣村(といってもコーストヴァーレから車で片道3時間)にたどり着き、朝食とこれからの作戦会議のため、人気の少ない飲食店か私のいた世界でいうところのコンビニを探していた。

だが、時間帯もあるのか店はどこも閉まっており私達は途方に暮れていた。


「やっぱりどこの店も閉まってるね…」


「ああ…。ってか、ずっと閉まってる感じしねぇか…?」


サーニャが後部座席からそう言い、マーガレットが返答する。

マーガレットの言う通り、この街の大通りと思われる場所を車で徐行しながら流しているが、建物はボロボロで人気を感じない。

店と思われる入り口にはボロボロで「CLOSE」と書かれた朽ち果てる寸前の看板が寂しげにぶら下がる。

いわゆる「ゴーストタウン」か「廃村」なのだろうか…。


ロゼッタの魔法を使えば朝食なんてパッと出せるが、今は爆睡しており中々起きない。

私達は諦めて数時間車を走らせようかと考え始めた。


「…あっ!あそこの店、やってるんじゃないですか!?」


私は「お腹空いたなぁ…」と思いながら外を眺めていると、一軒だけ煙突から煙が出ている事に気が付いた。

そして、看板には「レストラン ミノワール」と書かれていた。


「おっ、ユイナイスっ!行ってみるか!」


マーガレットは笑顔でそう言うと、車店の前まで走らせた。


店の前に車を止め、中へ入ろうと思うが少し不安なところがあった。


(ここって本当にやってるの…?)


それは、異様な静かさだ。

煙突から煙は出ているが、建物内からの音は一切聞こえず、窓はすりガラスのため中が確認出来ない。


「失礼しまーす…」


一応レストランとは書かれているし、煙突から煙が上がっているからやっているだろうと思い込みながら私は店の扉を開けた。

店の中はテーブル席が二つとカウンター席のみのこじんまりとした感じだ。

そして、店員は誰もいない…。


「…あれ?」


普通なら「いらっしゃいませー!」という明るい声が聞こえるはずだがそれもない。

本当に入っていいのか不安になる。

とりあえず全員店の中に入り、ドアを閉めると丁度ドアで隠れて見えなかったカウンター席に誰かいる事に気が付いた。


「すぅー…すぅー…」


その人物の服装は白いワイシャツに黒のスラックスで黒のエプロンを腰に巻いており、いかにもウェイトレスといった格好だが、何箇所か変わってる所といえば、三毛猫のような猫耳とサラッとした長毛の尻尾が生えている。

そしてなぜか寝てる。


「…とりあえず…そこに座るか…」


マーガレットは少々呆れながらそう言い、私達は奥のテーブル席に座った。


「…」


「…」


「…」


「…ふぁあー…」


テーブル席に座るが、猫耳のウェイトレスは全く起きない。

気まづい空気が流れ始め、私とマーガレット、サーニャは黙り込み、ロゼッタはあくびをした。


「あっ!いらっしゃいませええぇ!!!」


ガタンッ!


「いっつ…!」


突然店の奥から黒髪のウェイトレスが現れ、すごい大声で私達に挨拶をしてきた。

私達はびっくりしたが、一番びっくりしていたのは猫耳のウェイトレスで、驚きのあまりカウンターに膝をぶつけ痛がっていた。

黒髪のウェイトレスは猫耳のウェイトレスとは違い、尻尾は生えているが黒色でサラッとしており、耳は犬みたいに垂れている。そしてすごく元気だ。


「うるっさいなあぁ!」


「もー!メリ!カウンターで寝ちゃダメって言ったでしょー!」


猫耳のウェイトレスの「メリ」と黒髪のウェイトレスによる軽い口論が始まった。

私達はどうしようかと呆然としていると、店の奥から今度は黒髪のウェイトレスと外見は同じだが、色が金髪で垂れ目のウェイトレスが現れ、私達の注文を聞き始めた。


「ごめんなさいねぇ、賑やかな店で…。すぐ収まるんで気にしないでください。それで、何にします?」


「…あーっと…じゃあ…」


私達はテーブルの上に置かれているメニューを見る。


メニューは「ナポリタン」、「ハンバーグ」、「デザート」のみだ。

正直どれも朝食には重い。


「じゃあ…ナポリタン二つとハンバーグで…」


「分かりました。こらっ、二人とも喧嘩はこれぐらいにして。「キラス」、厨房を手伝って。メリはカウンターを拭くのとお客様に水出して」


「あ!うんわかった!」


「はいはい…」


私は金髪のウェイトレスに注文をすると、ウェイトレスはにこやかに受け答えし、黒髪のウェイトレス「キラス」を引っ張るようにして厨房へと連れて行った。


キラスは犬だからか分からないが素直(素直すぎる気もする…)だが、メリはどこかめんどくさそうだがカウンターを台布巾で拭き掃除を始めており、しっかりと仕事をこなしている。


「…ところで、作戦会議なんだけど…」


少し店内に落ち着きを取り戻し始めたタイミングで、ロゼッタが本題でもあった作戦会議の話をし始めた。


内容は、昨日ロバートの裏取引リストに記載されていたグレッタが製造した薬品、寄生虫のことだ。


ロゼッタは私達にリストを元に作成した資料を渡した。

資料には薬品の名称、効果などが書かれていた。


おそらくだが、私が最初に仕事をしたメアリのは寄生虫を使ったものだろう。

寄生虫であそこまでなると考えるとゲームみたいだな…と思ってしまうが、この世界では私の常識がたまに通用しない。とりあえず受け入れるしかない。

それと、グレッタの技術力の凄さを感じてしまう。

犯罪とかではなく、他の事に使えれば…と思った。


「お待たせしました。ナポリタンとハンバーグです」


そんな事を考えていると金髪のウェイトレスが注文した食事を持ってきてくれた。

メニューに書いてある料金500円で採算取れてるのか不安になるぐらい量が多い。

1.5人前はあると思う。

私達はその量に圧倒されかけた。

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