第4話 魔法

その後、マーガレットと私は女性をサーニャ達の待つ宿へ連れて行き、サーニャ達の待つ部屋へ入るとマーガレットは女性にシャワーを浴びてこいと言った。

女性はマーガレットの言葉に従い、シャワールームへと入る。

壁掛け時計を見ると時刻は午前1時半を回っており、サーニャとミーナは別室で眠っているようだ。


「…大丈夫?」


ロゼッタは私の暗い表情を見たからか、ベッドの上に座る私の隣へ座り、優しく声をかけてきた。


「…はい…。あの、ロゼッタさん…、聞いてもいいですか?」


「うん、いいよ。どうしたの?」


「ロゼッタさん達って…いつもこういう事をしているんですか…?」


「いつもって訳ではないけど…マーガレットが絡むとあんな感じかな…。もしかして、びっくりしちゃった?」


「はい…」


私は小さい声で返事をした。

ロゼッタは「よしよし」と言いながら私の頭を撫でてくれた。その時、なぜか脳内に私の母親の顔が思い浮かび、少し寂しさを感じた。


「あの…上がりましたけど…?」


シャワーを浴び終えた女性がバスタオル一枚で私達の前に姿を現した。

両手首と足首にはロープで縛られた跡がくっきりと残り、痛々しい。

数分前まで着ていた服は、あの男達に無理矢理脱がせられたからかボロボロなうえに汚れている為、着る服がない。


私が仕方のない事とはいえ、流石にその格好は…と思っていると、ロゼッタは女性に魔法をかけ、体にバスタオルを巻いていた姿から数分前に着ていた服を着た状態へと変えた。

私と女性は驚いた様子だったが、サーニャ、ミーナ、マーガレットは何も驚くまででもないという雰囲気だ。


「あぁ…ありがとうございます!」


女性は新品の様に綺麗になった服を触り、壁に貼り付けられている鏡の前でくるりと一回回るとロゼッタに感謝の気持ちを伝えた。


「いいって、当たり前の事をしただけだから。それと、ちょっと協力して欲しい事あるから、そこの椅子に座って?」


「はい…」


女性はロゼッタの言葉に従い、近くにある椅子に座る。


ロゼッタが女性の両手を触ると数分前の事を思い出したのか、女性はビクッと怯えた様子を見せるがロゼッタは「大丈夫…。私たちはあんな酷いことはしないから…」と優しい声で言い聞かせ、両手首と足首の縛り跡を消した。

それと一緒にロゼッタは何かをしているようだが、私にはさっぱり分からなかった。


「…はい。これで大丈夫。ありがとうね」


「いえ、ありがとうございます…服といい…」


「ううん、大丈夫。それよりマーガレット、この子の住んでた町ってどれぐらいかかるっけ?」


ロゼッタは、マーガレットに今いる町から女性が住んでいた町までの距離を聞き、マーガレットは胸ポケットから懐中時計を取り出し時間を確認する。


「うーん…まあまあ距離あるはずだから…。今から出発すれば朝には着くと思う」


「だって、あなたは大丈夫そう?」


マーガレットの言葉を聞いたロゼッタは、女性に笑顔で問いかけた。

助けられてそんなに時間は経っていないが、女性はこくりと頷きマーガレットに「お願いします」と言い立ち上がる。


「それじゃあ、私は彼女を町に送ってくるわ。ロゼッタ、あとはよろしくな」


「はいはーい」


マーガレットはロゼッタにそう告げると女性と共に部屋を出た。


ロゼッタは、マーガレットと女性が部屋を出るのを見守り終えると丸テーブルの近くの椅子に座り、テーブルの上に置いてある紙に万年筆でサラサラと文字を書き始めた。


私は何を書いているのか気になった為、ちらっと内容を見てみるが全て筆記体の英文でなんて書いてあるのか意味が分からない。

分かるとすれば字が綺麗という事ぐらいだ。


「…どうしたの?」


「あっ!…文字綺麗だなって思いまして…。邪魔してしまったのならすみません…」


「ううん、気にしてないから大丈夫だよ。それより、何か色々聞きたい事がある感じだね?」


ロゼッタには私の考えている事はお見通しのようだ。


「はい…。あの、質問攻めになってしまうかも知れないですけどいいですか…?」


「うん、いいよ。私、人の話聞くの好きだし」


ロゼッタは、私にそう言いニコッと優しい笑顔で笑った。

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