第2話 自己紹介
私は彼女達の車に乗り、どこか分からない場所へ向かっているようだ。
排気音なのか、エンジンの音なのかは分からないがバタバタと音が聞こえ、とにかくうるさい。
道路は舗装されておらず少しの段差で車体が揺れる。下手したら車酔いする。
「あっ!私達自己紹介してなかったね!私は「ロゼッタ」!そしてユイちゃんの隣にいるのが「ミーナ」ちゃん!助手席にいるのが「サーニャ」で運転してるのが「マーガレット」だよ!」
「そ…そうなんですか…よろしくお願いします…」
「もー!リラックスしていいからー!」
「はっ…はい…」
私の事を見てロゼッタは心配したのか笑顔で手を握ってきたが緊張しているわけではない。ミラーからたまに見えるマーガレットの目線が怖いのだ。
後ろを警戒しているのかと思ったが、多分彼女は私の事を信用していないのだろう。
確かに突然現れては意味のわからない事を言っている人を信用するわけない。口は悪いが、例えるなら私はマーガレットに「変人だ」と思われてるのだろう。
それから何時間経ったか分からないがどこか分からない町へ入り、商店街の前の通りで路肩に寄ると車を止めマーガレットは車のエンジンを切り車を降りた。
「タバコ買ってくるついでに聞き込みしてくる」
「うん、わかった」
マーガレットの言葉を聞いたロゼッタは一言返答をし、腕を伸ばす。
マーガレットは歩きながらコートのポケットをガサガサと漁り、タバコの空箱を取り出すとゴミ箱へ投げ入れ店の中へと入る。
私はずっと気になっていた事をロゼッタに聞いてみる事にした。
「あの…皆さんって何されてるんですか?」
「ん?私達は何も目的もなしに旅をしているの。たまーに依頼を受けたりするんだけどね」
「そうなんですか…」
私はロゼッタの言葉を聞き返答した。
最初はよくわからなかったがゲームでよくある旅をして行く先々で依頼を受け、報酬で生活している旅人みたいなものだろうと考えたら少し納得がいった。
そう考えていると買い物と聞き込みを済ませたマーガレットが店から戻り、車の運転席へと座る。
「おかえり、マーガレット。なんか情報得られた?」
「んー…少しだけな…。この通りを右に曲がった酒場に隠れ家があるって噂らしいんだけど…行ってみねぇとわからねぇな…」
「そっかー…」
ロゼッタとマーガレットが何やら作戦会議みたいなのをしているようだ。
「それと…ほら」
私はなんの会議なのか分からないまま聞き流しているとマーガレットが私に向かって店で買ってきたボトル飲料を渡してきた。
「…いらねぇのか?」
「い…いえ…頂きます…」
私は渋々マーガレットからボトル飲料を受け取り蓋を捻る。
ボトルにラベルはなく中身の色はオレンジ色で開けた時に出てくる匂いもオレンジジュースだった。
飲んでみるとオレンジそのものの味でかなり濃い。おそらく添加物などは全くないのだろう。
喉が渇いていたからマーガレットには感謝したいが少し甘い為喉がすぐに渇きそうだ。
オレンジジュースを飲んでいる間にマーガレットは車を走らせ、気づいたら目的の場所だと思われる所にたどり着いていた。
「それじゃ、マーガレット。よろしくねー…。あっあと、人は絶対殺しちゃだめだからね?」
「分かってるよ…」
ロゼッタがマーガレットへそう話すとロゼッタ、サーニャ、ミーナが車から降りた。
私も一緒に降りようと思ったが何故かロゼッタに止められてしまい車内にはマーガレットと私だけだった。
車の中はさっきとは違く周りの環境音しか聞こえず気まずい雰囲気だ。
マーガレットは運転席の窓を開け、タバコに火をつけると私に質問をし始めた。
「なあ、お前ユイって言うんだっけか…」
「はい…」
「お前…なんであんな何もねぇ道端で倒れてた?」
マーガレットはそう言うと運転席の背もたれをバタンと倒し、横になるとタバコを咥えながら私の事を睨みつけた。
彼女は睨んでないのだろうけど目つきが悪いからそう見えてしまう。
「…すみません…私も分からないんです…」
「分からない…?」
「はい…電車の中で眠くてうとうとしてて…気づいたらあそこにいたんです…」
「…ふーん…。なんだかよくわからねぇけど…不思議なもんだな…」
マーガレットはそう言うとタバコの灰を窓の外に捨てタバコを吸う。
「あの…何で私は車から降りちゃダメなんですか…?」
「ん?簡単だよ。見学さ」
「見学…?」
「ああ、お前は私らが何をやっているのかわからねぇし、説明しても理解できねぇだろうから直接見せてやるんだよ。決行は三時間後。だから少し寝とけ」
「は…はぁ…」
私はマーガレットに言っている事が理解できず質問しようと思ったが、マーガレットはタバコを車の床からチューリップのように生えている灰皿に吸い殻を捨て寝てしまった。
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