28. 【異】王都創立記念祭 3日目 王城探索2
王城一階を探索するキヨカ達。
廊下は多くの場所が通行止めになっており、迂回するために近くの広い部屋の中に入り別の扉から出入りすることもある。
また、宝箱も何個か発見しており、ミドルポーションなどの消耗品を手に入れた。
なお、クレイラ鉱山の時と同様に宝箱を発見したタイミングでレオナの存在についてケイとマリーに説明済み。
ケイは精霊と言う目に見えないモノから力を借りている都合上、不可視の存在であるレオナのことは驚かなかったが、何も無いところからアイテムが出現することについては流石に驚愕していた。
一方マリーは無反応で何を感じていたのか全く分からなかった。
「あれって!」
探索していると、初めて見る邪獣に遭遇。
しかもその邪獣は爆発を起こして城の壁を破壊していた。
「みんな行くよ!」
「おう!」
「うん(コクコク)」
ガシャリ
城の破壊を止めるためにここまで来たのだ。優先して撃破しなければならない。
『キヨちゃん、あれはボムだって。爆発に気を付けて!』
宙に浮く炎を纏った岩の邪獣が二体。
爆発系統の技を使うのは壁に対しての攻撃を見れば分かる。
「みんな全力で!」
「多段突き!」
セネールがボムに近づきマジックスピアを素早く連続で突き出す。
ボムはその場から動かずに全てまともに食らう。五ヒット、最高ダメージだ。
「硬い、熱い!でも砕いた感触はあるぞ!」
セネールの武器は短槍であるため攻撃するには相手にある程度近づかなければならない。そのため、ボムが纏っている炎による熱さを感じるのは仕方ない。
そしてそんな熱さを全く気にせずに攻撃を仕掛けるキヨカ。
「断!壊れろ!」
盾を捨てての全力上段斬り。
斬るというよりも叩き壊すという方がふさわしい技で、ボムの体を大きく崩す。
そしてボムに行動順が回って来る。
「……」
無事な方のボムが特に音を立てることも叫ぶことも無いが、大きく振動する。
「来るよ!」
ドンと、爆発が起こり空気が振動する。イルバースの魔石攻撃と似たような爆発攻撃だ。
ガシャリ
攻撃準備をしていたマリーに直撃するが、一歩後退しただけでそれ以上の反応が無い。
ダメージをどのくらい受けたかくらいは報告が欲しいが、それはレオナがフォローした。
『マリーさんあんまりダメージ受けてない。スケルトンの通常攻撃より少し強いくらいの威力だと思う』
「うん」
その程度の威力であれば、今回は二体だけであるので安全に戦えるとキヨカが感じたその時、傷ついた方のボムがキヨカの目の前にやってきた。
「え?」
慌てて飛び退くが、ボムもずっとついてくる。
「なに?なに?」
『キヨちゃん逃げてええええ!』
慌てるレオナの声が響く。
だがキヨカはすでにこのターン行動済。
ボムに狙われたら攻撃を素の状態で受けることは確定しているのだ。
「なんか光ってるんだけど!」
ボムが体全体から赤い光を放ちだす。ボスを倒した時の白い光とは全く違う、明らかに危険な見た目の光だ。
ボムの攻撃と言えばもちろん『自爆』
この世界の邪獣も例に漏れず、その特技を持っていた。
「きゃああああああああ!」
通常の爆発攻撃とは比較にならない程の威力。単なる爆風だけではなくボムの体を構成する岩石もキヨカの体に至近距離から降り注ぐ。慌てて盾を構えるが爆風でまともに立つことも出来ず態勢を崩され、顔に、鎧に、脚にと次々と被弾する。
「くうっ……痛ぁ……あつぅい」
恒例となった素肌を晒している箇所の流血や鎧を貫通する衝撃だけではなく、鎧そのものが熱を持ち着ているだけでサウナのような状態になっている。
「キヨカくん、大丈夫かい!?」
「大丈夫と言えば大丈夫だけど、熱いのがしんどいかな」
体力が最大だったにも関わらず、半分近く削られている。威力がかなり高い攻撃だ。二体のボムが同時に自爆をしかけてきたならば、キヨカは体力が零になっていただろう。
『キヨちゃん、さっさと倒した方が良いかも。自爆の威力、もしかしたらボムの残り体力に依存しているかもしれないって』
残り一体のボムはマリーの攻撃と、次ターンのセネールとキヨカの技で行動される前に撃破出来た。問題は次に戦う時だ。
「調べた方が良いかも」
ボムの自爆の特性について、詳細を知っておかないとこの先危険かもしれないとキヨカの勘が囁いた。地球側も同じ意見であり、次に遭遇した時に命の安全を確保した上で調査することにした。
その結果、自爆が残り体力依存であるのが正しいこと、ダメージを負うほど自爆を使ってくる可能性が高いことが判明。
非ダメージを抑えるためにも、ボムと遭遇したら一体ずつ確実にWPやMPを惜しまずに一ターンで大ダメージを与える戦法を取ることに決定。
これで城内に出現する邪獣相手であれば戦いが安定するようになった。
しかし大広間への道が見つからない。
「あれ、ここも行き止まり?廊下全部塞がってるね」
色々と迂回してみたが、進めそうな場所が見当たらなかった。
「お姉ちゃん、外」
「外?」
廊下を突っ切る事しか頭に無かったが、確かに外は崩壊による行き止まりが無さそうであり、迂回して正面入り口から入るのが一番楽なルートだろう。
「じゃあ外に出られるところ探さないとね」
『窓から出れば良いんじゃない?』
レオナの指摘は尤もだ。
廊下にしろ部屋にしろ窓が全く無いなどと言うことはあり得ない。実際、今キヨカ達が歩いている廊下から外の景色を見ることが出来る。
『キヨちゃーん、窓だよ窓。やっぱりキコエテナイヨネー』
しかしそのようなショートカットはシステムは許してはくれない。廊下で崩壊したところも、瓦礫の上を乗り越えられそうなところがあったのだが、レオナによるその指摘はキヨカには聞こえなかった。窓に関しても同様で、決められたルートを通らなければならない設定になっているのだろう。
「厨房から外に出られた気がする」
キヨカは頭の中の地図を思い出し、現在行動可能な範囲内で外につながっている扉がある場所を思い出した。そして想像通り厨房から外に出ることが出来た。
「あれ、開かない」
「ふむ、どうやら邪獣を外に出さないように閉められているようだな」
正面の入り口に向かったが、大きな扉は閉まっておりビクともしない。仕方なく他の入り口を探すが、ふと物見櫓が目に入った。物見櫓は城とは離れた位置に建てられているため、向かう必要は全くない場所だ。
『キヨちゃんどうしたの?』
「あそこに行く必要あるのかなって」
城が少しでも破壊されないように急いでいる現状、寄り道する意味は本来であれば無い。だが、これまたキヨカは勘が気になると告げている。
『相談したけど、行ってみる価値はあるかもしれないって』
キヨカは少し逡巡したが、行ってみることにした。イルバースの時も廃鉱山を徹底的に散策した結果、命中補正のアクセサリーを手に入れたのだ。漏れなく探索することに意味があるのだと判断する。
そしてその判断は正しかった。
物見櫓の最上階には、大きな二つの宝箱が鎮座していたのだ。
「快活のブローチと、これはなんだろう」
片方には快活のブローチが入っていたが、これはすでに全員が装備してある。
マリーも出会う前からつけていたらしいので余りになる。
ただし、ここでマヒを防御するアイテムが入手出来たということは、マヒがこの先の戦いでの勝敗の行方を左右するという考えは正しかった可能性が高い。
そしてもう一つの道具は金属で出来た手のひらサイズの三角錐であり、専用のケースに複数個収められていた。
「これはもしかしてケイくんの武器ではないかね」
「ああ、なるほど」
ケイが利用していたのはただの丸い鉄球。三角錐であれば鋭い部分が敵の皮膚に刺さりより大きなダメージを与えることが出来る。
『(仲間から外れているケイちゃんの装備が何で今手に入るの?)』
レオナの疑問の答えが分かるのは、もう少し先のことになる。
物見櫓から戻り、探索を再開。
別の入り口を見つけたキヨカ達は城内をくまなく散策し、ついに目的の場所へとたどり着いた。
「回復の泉がある小部屋だな」
「そして廊下の向こうは1Fロビーだね」
王城のクリスタルとの対面の時である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます