274.宝捜し 前編
「で、どうしたんだ?こんなところに呼び出して」
「うん。僕達を助けた褒美の件だよ」
グリードハイド邸での一件から数日、俺達は俊達勇者パーティーに呼び出され、王城の地下にある宝物庫を訪れていた。流石に城内での自由が認められているとはいえ、ここの立ち入りは認められていなかったので、中に入るのはこれが初めてだ。
「ああなるほど。俺としては、ただ友人を助けただけなんだがな。それで褒美を貰えるってのは、何だか変な気分だ」
「あはは、僕も逆の立場ならそう思うかもね。まぁでも、貰えるものは貰っておくべきでしょ」
「それは確かに」
別に貰っても懐が痛むのは王国側であって俊達ではないだろうし、ここは遠慮しない方が良いだろう。
「だから今日はガイさん達も一緒なんですね」
「おう、久しぶりだな。あれ以降も大活躍だったみてえじゃねぇか」
今日はいつものメンバーに加え、ガイさんとカルティさんもいる。そこまで日数が空いたわけではないが、ここ最近の出来事が濃すぎたせいで、確かに久しぶりに感じるな。
二人は軟禁状態が解けてから、予定通りに王都での観光を楽しんでいたらしい。そういえば俺達はそれらしいことをまだ出来ていないので、今度時間を作るとしよう。
「それにしてもいいのかい?私達まで褒美をいただいちまって」
「ええ、国王陛下から許可はいただいていますし、ローレンガーさん達がいなかったら、無事に迷宮を脱出できませんでしたから」
俊の言う通り、あの状況で船の守りを任せられたのはガイさん達くらいだろう。王国の騎士は当時頼れなかったし、正直戦った感じ、実力的にも任せられたとは思えない。
「皆様にはここから好きな品を一つ選び、それを此度の褒賞とさせていただきます。予め譲渡できない類の品は、別の場所に移してありますのでご安心ください」
「じゃあ早速、中に入ろうか──マリア様、なぎさ」
「ええ」
「うん、
なぎさが魔術で、マリア様が物々しい鍵を使い、見るからに頑丈そうな扉が、その口を開ける。
「へぇ、物理と魔術での二重施錠ですか……中々頑丈ですね」
「ええ。この鍵は王族しか所持を許されていませんから、ここに入るのは私達王族の誰かと、高位の魔術師が一名必要になります」
なるほど。扉の前には二名の衛兵が常駐しているようだし、どれか一つの要素をどうにかすることは出来ても、全て解決することは不可能に近い。こんな非常識な力が蔓延る世界ではそれさえも、突破されそうではあるが。
「というかなぎさ、そんなスキル使えたら不法侵入し放題だな」
「そ、そんなことしないよ!それにこれ、そこまで便利なスキルじゃないんだー」
詳しく聞いてみると、この魔術は鍵を何でも開けられるわけではなく、
の鍵が開けられるのであれば、そもそも王族が持つ鍵の意味がなくなる。
「ほら、早く入ろう。あんまり扉を開けていると衛兵にも迷惑だから」
「分かった」
俊に促され、俺達は宝物庫へと足を踏み入れる。
「これは、何というか……」
「……物置き場?」
リーゼの言う通り、特に整理されることもなくその場に置かれているその光景は、想像していた宝物庫からは少し離れている。意外なことに部屋が広いため、足の踏み場に困ることはないが、几帳面な人間がこれを見たら眉をひそめそうだ。
「状態が悪いものに関してはそれなりの保存をしていますが、結局は貴重品を集めただけになりますから。あ、魔導具は魔力を流さないようにお願いしますね。最悪、この場所が吹き飛びますので」
(……そんなものをそこら辺に転がして良いのか)
これは思っていたよりも時間がかかるかもしれない。適当に選んでしまうのも一つの手ではあるが、こんな機会二度とないと思うので、できれば真剣に選びたい。
「ここの中の物に関しては大体把握しておりますので、何か聞きたいことがあれば是非」
「ありがとうございます」
中の品々は、大小様々百は超えているように見えるが、それを網羅しているのか……すごいなマリア様。
「それじゃ、遠慮なく」
「俺達も探すか!」
「はいよ」
ガイさんだけでなく、カルティさんも心なしか目が輝いているように見える。カルティさんもかなり博識だし、ここにある物の正しい価値が分かっているのかもしれない。
「私達も行きましょう」
「ん」
シルヴィアとリーゼも、まだ見ぬ宝を探し、部屋の奥へと消えていく。中には装備も多く置かれているので、もしかすると俺達の戦力アップに繋がるものが見つかるかもしれないな。
「さてと……俺も行くか」
俺も探すのは俺自身の戦力を上げる何か、ぶっちゃけそれ以外は特に興味がない。武器はラル=フェスカに勝るものが見つかるとは思えないので、それ以外……防具か装飾品、そのあたりに狙いを絞って探してみよう。
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