236.再来の悪魔 中編
「おらぁ!!」
「くはっ、いいねぇ!!」
水面から大きく跳躍したガイは、そのまま弾丸のようにグリゴールへと突っ込む。雷と風、つまりは嵐をその身に包んだガイの速度はグリゴールの反応出来ずその身で攻撃を受け止めることになるが、悪魔はその笑みを消さない。
「近接戦といこうや!」
「望むところだ!『空歩』!!」
『空歩』
魔力を使って足元に斥力場を生み出し、空中での移動を可能にする。
一見すると『水上歩行』の上位互換のようにも思えるが、魔力を消費してしまうため一概にそうとも言えず、また使用には相当な集中力を要する。そのため基本的には戦闘で使用するのではなく、移動の際に用いられるスキルだ。
「お得意の『
「おうよ!!」
にもかかわらず、ガイはその『空歩』を継続的に、連続で使用することにより、グリゴールとの空中戦を可能にしている。ガイの魔力は一般的な【
だがガイはもう1つ、スキルを発動させていた。【
その効果は、簡単に言えば魔力の前借り。半永久的な魔力の消費を可能とするが、代償としてその後しばらくは一切の魔力使用が出来なくなるうえ、使用中は魔術スキルも禁止される。
「まだまだ行くぜぇ!」
「来いやぁ!!」
そのまま空中での激しい殴り合いが開始する。グリゴールが雷を拳に纏わせながら殴ると、ガイはそれを盾で受け止めた後、そのまま盾でグリゴールを圧し潰すべく前へと突進する。だがグリゴールも今度は事前に察知していたため、身体を捻って回避する。
スキルにより空中での戦闘を可能としているガイだが、流石に翼を持っているグリゴールと比較してしまうと自由度の面では劣っている。
「あたしを忘れてもらっちゃ困るよ!!」
「くっ……おい!それはちとばかし邪道ってもんじゃねぇかよ!?」
「知るか!敵に対して手加減してやるほど聖人してねぇんだよこっちは!!」
ガイの僅かな隙を狙うグリゴール、それをカルティの炎弾が阻害する。カルティもまた、普段の温厚な雰囲気とは打って変わり、鋭い目つきでグリゴールを睨みつけていた。
「『
空中に幾つもの円形の紋様が浮かび上がり、カルティの周囲を飛び回り始めた。
「
「なん!?」
直後、千を優に超える炎弾が、ガイ諸共グリゴールへと襲い掛かる。グリゴールも即座に雷弾で対抗しようとするが、迫りくる炎の豪雨を全て防ぎきることは不可能だ。
「ぐおおおおおおお!?」
「ふぬあああああああ!!」
ガイも炎弾の攻撃を受けているわけだが、全身の魔力の鎧を纏うことによって受け止めている。赤く光り輝く魔力鎧は、カルティの猛撃を完全に防ぎきっていた。
「鬱陶しいわああああああああ!!」
しばらくはその身で攻撃を受けていたグリゴールだったが、痺れを切らしたように体中から放電し始めた。雷は炎を吹き飛ばし、海を荒らし、そのままの威力で船やガイへと襲い掛かる。
「
グリゴールが放つ破壊の象徴たる雷を、カルティは雷に対して高い耐性を持つ防御魔術を行使し、自身と船を護る。
「おらあああああああ!!」
「あん!?なんどそいつは!!」
そしてガイは、カルティが繰り出した炎を全身に纏い、火だるまの状態でグリゴールへと突進を繰り出す。その迫力には目を見張るが、纏っているのは雷によって吹き飛ばされた炎。そのまま雷に突っ込めば、焼かれて終わるはずの無謀な攻撃、誰もがそう思うだろう。
だが突進の勢いは止まらず、それどころかグリゴールの雷をも体に纏っていくことによってどんどん速度を上げ、グリゴールへと肉迫している。その様子を確認したグリゴールは、口角を上げながらガイを迎え撃つ。
「喰らいやがれええええ!!」
「チッ!こいやぁあああああ!!」
雷炎を纏うガイと、轟雷を放つグリゴール。二人の衝突は、海を大きく荒らし、立ち込めていた暗雲までも吹き飛ばす。先ほどまでとは打って変わって青空が広がる大海原をよく観察すると、衝突の衝撃で絶命してしまった魚や魔獣がぷかぷかと浮いている姿を見ることができた。
「くっ……でたらめな……」
「お互い様だろうがよ……」
グリゴールとガイ、衝突した二人は体中に傷をつけているものの、そのどれもが致命傷には至らず、疲労は見えるがまだまだ戦闘は可能といった様相だ。
「俺達悪魔と張り合えるほど頑丈な男、千の魔術を平然と展開する【
「俺達なんてまだまだだよ、上には上がいるからな」
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