95.倒し、吸い取り、攻撃する
「…できるのか?」
多分あの
「流石に一回じゃ無理。だから何度も
「でもそれだと、今度は魔力が足りないんじゃない?」
「うん。だから、エイムにも分けてもらおうかなって」
「…そういうことか」
リーゼの精神世界で行った魔力吸収、あれ現実でもできるのか。何かそういうスキルが【
「…できればあの方法は遠慮したいんだが」
あの時は緊急事態だったし、時間も無かったから仕方なかった。だが、そういうわけでもないのに口づけをするのは少し抵抗がある。
「私も軽々しく何度もするつもりはない。シルヴィにも悪いし」
「…なんでそこで私が出てくるのかしら?」
「…さぁ?」
「質問の答えになってないぞ」
なんかリーゼは、俺達の関係性を勘違いしている気がする。
「でもいくらエイムとはいえ、これだけの巨大魔獣を枯らすだけの魔力は持ってないんじゃない?
「確かにな。こいつが危険を感じれば魔獣を呼びだすとは思うが、それだけで足りるかどうか…どうしてもシルヴィア一人に討伐は任せっきりになるだろうし」
俺が戦闘に参加して魔力を消費してしまったら元も子もないしな。討伐自体は魔獣も弱体化されているらしいし、シルヴィア一人でも問題ないと思うが、討伐速度が遅くなってしまうのは避けられないだろう。もしかしたら、かなり長期戦になるかもしれない。
「それも大丈夫…キーペ」
「PIPI!!」
キーペは待ってました!とばかりに、背中の荷物をドサリと地面に下ろす。道中ずっと大人しかったから忘れてた、ごめんキーペ。
「開けてみて」
「ああ」
袋を開けるとそこにあったのは、
「なるほどな、これなら何とかなりそうだ」
そこにあったのは、大量の魔石。よくこれだけの量集めたな。この一週間の準備、殆どこれに費やしたんじゃないだろうか。
「里の人達にエイムの職業を伝えずにお願いするの、大変だった」
「それは…すまん」
「だから頑張ってね」
「了解」
「じゃ、私の前に立って」
言われた通り、リーゼの前に立つ。
「しばらくしたらダラビエトレントが魔獣を呼びだすと思うから、その時は」
「私の出番ってわけね」
「ん、お願い」
「任せなさい」
「ありがとう…いくよ──
核へと手を伸ばした死の華は、その養分をどんどん吸い込んで数を増やしていく。
「
やがて核全体を覆ってしまうほどにまでその勢力は浸食していったが、まだダラビエトレントには目立った変化がない。
「…エイム」
「了解──
リーゼの合図と同時に、俺は
──ギュッ。
後ろから抱き着かれたと同時に、体内の魔力が抜かれていく。前に比べればその速度は遅く、今の所は俺が魔石から吸収する速度の方が上回っている。
「ハグなら問題ないでしょ?」
「まぁキスよりはましだな」
軽口を叩いているが、精神を平穏に保つのが意外と難しい。これを使うときは当然ながら戦闘時が多かったので、精神をコントロールする必要があまりなかった。だが今この衝動を解放して暴れるわけにもいかないし、ここは耐えないとな。
「ちょっと動くぞ」
「ん」
地面に座り、見様見真似で座禅を組む。多分正しい態勢ではないだろうが、精神を落ち着けられればそれでいい。
ピキッ。
徐々に光を失っていた核に、ようやく明確な変化が訪れた。
だがこの巨大樹は、植物ではなくあくまで魔獣。このままで終わるはずはない。核が明滅すると同時に、周囲から大量の魔獣が現れる。
「UKYAKYA!!」
「GUGIGIGI!」
「SYURURU……」
「シルヴィ。お願い」
「ええ!!」
頼もしい声と共に、シルヴィアは魔獣の群れへと突っ込んでいく。いくら弱体化してるとはいえもう少し慎重に行動してほしい所だが、まぁあいつなら大丈夫だろう。
ダラビエトレントからすればこれは抵抗手段なのだろうが、俺達三人の前ではむしろ悪手。シルヴィアが倒し、俺が吸い取り、リーゼが俺を糧に攻撃する。己の死を早める要因にしかなりえない。
「そろそろ…」
そしてリーゼが何やら呟いたと同時に、それは起こる。
ドォォォォォン!!
「「!?」」
「大丈夫、これも想定のうち。下にいる里の人達にダラビエトレントを攻撃してもらった。今なら外にまで抵抗してる余裕はないだろうけど、無視できるほどのものじゃないはず」
「そういうのは先に伝えといてくれよ」
一瞬身構えたぞ。
「…うん、このくらいかな」
「もういいのか?」
「ん。もう自重を支えるほどの魔力は残ってないはず。あとはほっといても倒れる」
「分かった」
俺は座禅を解き、
ズドドドドドドド!!
「急いで逃げるよ。この規模の倒木に巻き込まれたらひとたまりもない」
「だからそういうのは予め共有しといてくれって!!シルヴィア!!」
「分かったわ!はぁぁぁぁぁ!!」
シルヴィアは強引に剣を振るい、周囲の魔獣達を一掃する。
「逃げるぞ!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます