第4話 [evergreen 4 ]
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<music> [今週の一曲]
Tomorrow / 片桐彩子(川口雅代) Komami/King KICA-7869 / KIDA-7643
-その1-
PD:福武茂
D:流石野孝
Arr:岩崎元是
Com:小西真理
Wor:秋山奈津
<美点>
生きる喜びにあふれた、詩。「明日がとても楽しみだ」という。
そして、明るく、ポジティヴなソウル・サウンド。
恋の喜び、愛への憧れ。
全てを包括するような音楽の存在。
ブラスは輝き、チューブ・ベルは煌く。
お陽さまのような、ヴォーカル。
エネルギィに満ちて。
僕などは、これを聞くとどんなときでも元気になれます。はい。
<作品が構築する世界観>
都市生活者のある少女の観点からの、日常描写を元にした心情描写。
幼い感じの恋愛感が、愛らしく、しかし'80的に描かれる歌詞。
これに、'70ソウル的サウンドが絡み、一種独特の高揚感を演出。
これは、曲の構成、コード進行によるところが大きいか。
前途が明るいというイメージは、現代にとってはもはや貴重。
こうした楽曲が、癒し、救いになれば良いのですが。
多分、製作者はノスタルジックな人なのだろう。
<地域性>
おそらく、東京近郊。(神奈川あたりか?)
歌詞の内容からは、中核都市の休日の風景が舞台のようだ。
<時代>
多分 '75頃と思われる。登場人物の少女が、屈託なく明るく。伸びやか。
これは社会が安定しており、少女のような弱い存在が不安なく存在できる事を
意味している。
丁度その頃、原曲のようなソウルミュージックが流行していた。
<演出企図>
ある少女の、友愛からの離脱というある種誰しも通過するであるポイントに対する
不安と期待というような感覚を、明るく、伸びやかに、前向きに描く。
そのことによって、少女が全幅の信頼をよせる「彼」(聴き手を想定している)に、
少女の存在、恋愛という脆く儚い存在に対する守護心、を回帰、想起させるという
意図である(ようだ)。
これは、ヒト社会にとっての基本である「愛」という存在の根底であり、これなくして
「家族」も成立せず、故にこれは人間の基本であり、大前提である。
何故ならば、家族こそはヒトとその他霊長類を区別さする最大の差異点であるからである。
しかし、これをしっかりと、真っ直ぐに謳うものは、このところ少なく、その意味で
この作品は特筆に価し、また、作者はこの作品でそうした「こころへの回顧」を
訴えたかったのではないか、と思える。
<構成>
イントロ-A-B-Bridge。これは、原曲を踏襲。
<inmaguro>
イントロはご多分にもれず、コンプレスエレキギターのカッティング・リフ。
ときどき、原曲に良く似たオブリガードが入る。
キャッチャーなイントロメロが、エレピで続く。
G3-G4-A4-G4-F4-E4-F4-G4-A4-G4-F4-E4-F4-G4-A4-G4-F4-E4-D4-Eb4-E4
みたいな。
最後のEbが決めて、というかワサビ。(?)これはブルース・フィーリング。
リフレインし、Aメロ前に1オクターブ上に移調する。
このあたり、シーケンサーでは簡単だが、効果的な方法である。
ドラムスは、8beat-rockの基本型を叩き、4小節でfill-in。まあ、基本。
<イントロの構成>
elp は先のパターンにはじまる。egはカッティング・コンプレスで、小気
味よいリフを小節単位でアヴェイラブルに。
これはおそらく、'70年代のSweet-soul-Musicの模倣であろう。
基準となるのは、ロング・トーンのコーラス。これも、フィーリー・サウンド辺りの流れ。
いってみれば、スペクターサウンドの子供達、である(?)。
男女混声のノーマルなハーモニーに弾むようなギターリフ、明るい感じのelpのパターンが
徐々に上行する様子は
コーラス=世界、ギター=時の流れ、elp=恋の歓び、を表している。(ほんとかなぁ?)
まさに、“明日に憧れる”といった情景の'70soul的解釈である。
このようなアレンジの曲の代表は、「You make me feel like dancing / Leo Sayer (廃盤)などが有名かな。
また、前述したがelpのパターンの最後、次のシークエンスへの継続部分には
半音階の上行メロディがあり、この部分で、「ちょっぴり不安な感じ」というイメージを不協和感で
表現している。
8小節1ユニットで、16小節、最初の1コーラス終了前にブラスが入り、輝かしい。
パターンはelgに類似のもので、ホーンらしくハーモニーで演奏される。
<A-Melody>
16小節で、4小節単位で変化する。A-A'-A-A''といった。
それぞれ、終端にfill-inがあり、?T-?Y転調し、循環する。
これも常套句であるが、編曲の意図としては、「平穏な日常の、小さな変化」かな。
歌詞の内容も冒頭の部分であり、始まり。「起」。
ある少女が、昼下がりの街で好きな人に似た男の子の背中を見て、どっきりする。
「恋」していることに気づく...みたいな。愛らしく、純真な若さが描かれる。
<B-Melody>
これの展開で、「承」の部分。同じく16小節で、8小節で1ユニット。
B-B'みたいな。Amelodyに対し、平行短調のように機能する。
....でも、彼の前にでると、素直になれない...?といった、可愛らしい歌詞。
聞き所としては、グリッサンドを多用するelgのコード弾き。
これも前述同様、Stylisticsなんかで良く聞かれるアレンジです。
そして、サビ。
イントロに使用されたelpのメロディが、そのままサビメロディ。
16小節で、4小節1ユニットで展開としてはAメロと同じ。
そして、メインテーマは、というと、以下の原案を彷彿とさせるよいメロディ。
<原案>
おそらく、「You don't have to be a star (to be in my show)」、
「You are everything 」で、あろうと思われる。
邦題=「星空のふたり」(/マリリン・マックー&ビリー・デイヴィスJr)
=「ユー・アー・エヴリシング」(/スタイリスティックス)
たしか、'75頃。/'71。
やっぱり、あの頃ですね。
スイート・ソウルなんて言う言葉も流行ったな。
あまーい、ラブソング。
愛という名の幻想が、未だ有効だった頃の流行歌。
いまや、こうした甘酸っぱさを「大人」が語ってはいけないのでしょうか?
<編曲の進行>
さて、コードネームや進行表を書いても、一部の音楽マニア以外にはあんまり意味がある
とは思えない(ぜんぜんわかんない、っておたよりもありました)ので、どーしようか考えました。
普通、コードには意味があり、文法というか、響きの印象があります。
例えば、短調の曲には寂しい、悲しい、みたいな感じを受けるのと同じように
コード(和音)にはそれぞれ意味あい、色合いがあります。
まあ、それは折々ご紹介していくこととして。
とりあえずはその意味合い、色合いで説明しようかな、と。
(だって、彩のラヴソングですし^^;)
さて、こうした観点から全体の構成を見てみましょう。
イントロ:解放。サビと同じ。
Aメロ:基本、
Bメロ:ちょっと寂しげ。
サビ:解放。
という感じで、全体的な進行でもこの曲が揺れる気持ちを良く表していることが解ります。
実際には、それぞれのブロックの中でコードは進行し、一つのブロックだけで起承転結が
あります。それだけ複雑な構成であるのは、まあ、現代の曲ではあたりまえ、かな。
この当時、'70後期に流行したタイプの楽曲の傾向を良く捉えています。
編曲者の岩崎元是氏(まさか、サンデーソングブックのディレクターさんじゃないでしょうけど??)
は、こうした懐かしいアレンジがとても上手で。うれしくなってきます。
いやね、やろうと思っても、こう見事にはできないんです、やってみればわかるけど。
そのままコピーするなら簡単なんだけど、見事に「岩崎サウンド」になってる。
これはやっぱり職人芸。(^^)
イントロより、まず明るいエレクトリックピアノ(を模したDXシンセ)のメロディが。
いきなりオクターブ上に跳躍する。これは、いわば弾むような若さ、明るい兆し、といっ
たものの暗喩であり、クライマックスのメロディをそのまま使用しているところ、単純な明
るさ、屈託のなさ、といった演出がなされている。
しかし、このメロディパターンの終端部、Eb-Eといった感じで半音階があり、
これは、ブルース・スケール的な陰翳の表現であり、“ちょっと不安”といった感じの演
出である。
これに、ギターが絡み、5小節目からはドラム、ブラスが入る。ドラムは、基本的なロッ
クビートであり、スキップするようなビート感中心(付点4分-8分といった)で進行する。
これは、弾むような躍動感の演出であり、これも'70に流行したソウル・ミュージックの
流れ。
まあ、ソウルという言い方には語弊があるから、R&B、かな。^^;。
Graphicalには、こんな感じですか。
intro
[解放]
|---------[基]------|-------[基ちょっと寂]-----------|
|---------[基]------|----------[起]---------------|
オクターブ上がる、ブラスが入る、ドラム・ベースがダイナミックに。
|---------[転]------|-------[転ちょっと寂]----------|
|------------[転]---|-----------[結-次節の予兆]---|
みたいな感じ。コードネームで表記する方が楽なんだけど、マニア以外には
殆ど意味がないかな?と思って。
で、これが曲全体でいうと、「サビ」にあたるMelodyとおんなじ。
つまり、のっけから「いくわよぉ〜!」って感じで、
なんとも片桐さんらしい。でも、ちょっと寂しげな響きがどこかに入るところ、
たおやかな感じ、の表現みたいにも思えます。
それで、このintroを受けて、最初のメロディ(A)としましょうか。
ここに入るわけですが、これはintroから見ると、
[基]にあたる。
つまり、ここから本編が始まる。...という感じ。
で、同じように図にすると、
|-----[起]-------|-----[起-微妙な変化]------|
みたいな感じで、2番目のところは歌詞で言うと、〜だれかの時計で...となり、
物語の展開であることがわかります、
ここで、ブロック・コードでfill-inし、次のブロックへ。
|----[転-ちょっと寂しげ]---|----[結]------|
で、ここんとこは、歌詞も、
〜恋人達の交差点〜 似ている誰かを見つけた...
と、なってハーモニーの感じと一緒になりますね。
ここでいったんシメて、また冒頭の感じに戻ります。
|-----[起]-------|-----[起-微妙な変化]------|
信号待ってる間に.....ひとりでテレ笑い...
と、次の節のはじまり、ですか。
|-----[起]-------|-----[結-やや変化]------|
...やっぱり好きに..見上げる青空.....。
と、まあ(笑)見事、見事に編曲されてます。
Aブロック全体を見ると、これ全体がひとつの[基]を構成しています。
|-----[起]-------|-----[起-微妙な変化]------|
|----[転-ちょっと寂しげ]---|----[結]-----------|
|-----[起]-------|-----[起-微妙な変化]------|
|-----[起]-------|-----[結-やや変化]--------|
で、次のB-blockにゆく訳で、ここは全体でちょっと寂しげな展開
(短調、ですね。)にもって行く。歌詞の内容としても、
好きな人に何故か冷たい態度をとっちゃう自分。どうして?みたいな感じ。
[寂]
|-----[基]--------------------------------|
らしくなくて、ごめんなさい......
みたいに、内省的な歌詞にぴったりマッチ。
で、その次。
|------[転]--------|------[結]--------------------|
....素直に言えない....悲しいくらい...
と、いきなり展開してしまいますが、これはまあマイナーだから出来るので。
で、サビに行く。
そこでいったんブレイク(主な楽器が音を止めること)し、
チューブ・ベルとドラムで....始まるよ!みたいな感じを奏でます。
これは、よく'70soulでは使われていたもので、こう、幕開けという感じを
表現していますね。“2”の方でも、「笑顔の決心」のintroなんかに使われて
いて、明るい、前向きな予兆。なーんて感じにも聞こえます....。
[開]
|--------------[基]----------------------------------|
....だって、あなたのせい、ときめきさえ...
|---------------[承]---------------------------------|
〜雲の形が舗道に映る...
|---------------[転]---------------------------------|
..........こんな気持ち、初めてなの...
|---------------[結]---------------------------------|
とてもいいことがありそうで、明日に憧れ...
と、ここは基本的なパターンで展開し、素直な感じ、素朴なイメージを
演出し、なおかつMelody-lineを少し寂しげな感じ(b3)に味付けて、
ちょっと不安定な感じ、という表現に至っています(と思います)。
で、1コーラス全体を見る、と。
起-承(やや寂しげ)-転(ちょっと寂しげ)-結(明るく、解放)
と、いう前向きな感じ、かな。
------|長くなりそうなので、次回に続く|-----(近日配信予定!)
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