家族の想い

尚樹は最近だんだんとハマってきているMMORPGのゲーム画面を見て立ち尽くしていた。


【緊急メンテナンスのお知らせ】

アクセス集中によるサーバー障害によるへの対応といたしまして、下記の日程にて緊急メンテナンスを実施させていただきます。


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◆メンテナンス日程

2020年3月19日 12:00~15:00予定

◆メンテナンス内容

サーバー障害への対応


また、アクセス集中によるサーバー障害、緊急のメンテナンスにより

お客様には大変ご迷惑をおかけいたしましたことによるお詫びといたしまして

後日ゲーム内、特別アイテムの配布を検討しております。


お客様にはご不便・ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。

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尚樹はこの記事を再度見ると、すごく悩んだ。


「う~ん今日は忠勝とようやく最初のボス討伐できるかと思ったのにな……まだサービス開始して数週間程度のゲームらしいしな、しょうがないか……」


尚樹は気を取り直して他のことをやろうかと思い自室を出て一階へと降りて行くと、母親がキッチンで昼食を作っている最中だったのでその昼食の手伝いをすることにした。

最近では家にいることが多くなり料理の手伝いをすることも増えていった。


「尚樹、今日は忠勝君とゲームで遊ばないの?」


暇なときさえあれば尚樹は忠勝を誘ってゲームをしていることは母親も知っていたらしい。


「うん……今やってるゲームにメンテナンスが入ってて夕食前にはできると思うけど……」


「そうだったの、そういえば学校から課題と連絡が入ってたから確認しておいてちょうだい」


尚樹はテーブルの方を見るとテーブルの上に書類が入ってそうな封筒が置いてあることに気がつく。

食事が終わった後の時間にやればちょうどいい時間になるだろう……


「わかった、後で確認しておくよ。」


尚樹が手伝ったことによりいつもより早めの昼食ができあがった。


いつもリビングにいる父親は今日は会社の出社日になっており、ただいま絶賛お仕事中だ。

俺は二階にいる姉ちゃんを呼びに行くとすぐに部屋から出てきて一階へと向かい食卓の椅子に座る。


「なんか今日やたらお昼ご飯できるの早くない?」


「今日は尚樹が手伝ってくれたのよ」


「へぇ~、それは味に期待できますな~」


尚樹は以前に料理を作り家族に振舞うことがあったのだが味が薄くなってしまって

なんとも言えない料理を作ってしまった失敗談があり、特に姉ちゃんからは酷く言われたもんだ。


「俺は今回は特に手を加えてないから期待すんなよ」


「そんなことより早くいただきましょ。」


俺も母親に言われたとおり丸皿に盛られたピラフとオニオンスープをいただく。


(ピラフはやっぱこのホクホク感と程よい薄味がめっちゃうまいんだよなぁ~)


食事を終えるとと母親は食器を洗い始めており、姉ちゃんは満腹と言った表情を浮かべていて満足そうにしてた。


俺は母親にさっき言われてた封筒に入っている物を確認してみると、中に今日の課題のプリントと連絡事項が書かれてある書類がいくつか、それと今日のニュースの記事(?)が入ってた。


課題に関してはこの前やった課題と似ていたのでそこまで難しくないはずなので、すぐそこのテーブルで課題をやり始める。


単純な計算をこなしていくだけなのでむしろ集中が途切れてしまい難しい。

計算の合間にどうしてもMMORPGのことが頭に浮かんでしまう。

何とか数分の内に終わらせてしまい一息つく。


時計を見ると13時を過ぎたぐらいの時間になっていた。

まだまだメンテナンスが終了する予定までは時間があった。

キッチンを見ても母親がすでに食器を洗い、片付けも終えていたので自室に戻り課題が終わったことを連絡し終えたら、動画配信サービスで映画でも見ようと思い二階へ上がると部屋に戻っていた姉ちゃんが部屋から出てくるところにちょうど出くわす。


「尚樹、もう課題終わらせたの?」


姉ちゃんが空のティーカップを片手に尚樹に気づくと話をかけてきた。

どうやら姉ちゃんも同じように勉強をしている最中だったらしい。


「うん、同じような形式の問題ばかりだったからすぐに終わったよ」


「そういえばお母さんから聞いたんだけどなんか最近ゲームやってるって聞いたけど、今からやるの?」


姉ちゃんからそのことを聞かされて驚いた。

あまり姉ちゃんの勉強を邪魔したくなかったから言わないようにしていたのに……

きっと母親から聞いたんだと思う。


「やりたいとは思ってるんだけどメンテナンスが入ってて今できない状態なんだよ……」


「そうなんだ~、私も今課題終わったから尚樹がどんなのやってるのか見てみたかったのに~」


「姉ちゃんってゲームやってたっけ?」


「いや、やってないよ。ただ息抜きにちょっとそういうのみてみたいなーと思って」


「今日の15時からメンテナンス終わるからその時にやってみる?」


「ホント!じゃあできるようになったら呼びに来て!私は隣で勉強してるから!」


姉ちゃんが嬉しそうにしながら一階へと紅茶を組みに降りていく。

尚樹はそのまま部屋に入りデスクに座るとノートパソコンを開き課題が終わったことを先生に連絡し終わり椅子に深く座り込む。


(なんか珍しいな姉ちゃんが俺のやっていることに興味持つなんて……)

姉ちゃんはゲームなんてやったことないはずだし、俺がやっているところを横から見ているときはあったけれども……けどなんでいまさらゲームに興味を?


姉ちゃんは現在高3であり俺の一つ上の学年であるため、今の時期は受験期であり大学に向けて日々勉強を頑張っている。


この前、夜中にトイレに行くため廊下に出ると隣の姉ちゃんの部屋から光が漏れていることに気がつき、姉ちゃんには気づかれないように部屋に入って電気を消そうとドアに近づくとその向こう側からシャーペンで何かを書いている音が聞こえ、尚樹はその時ドアを開けようとしていた手を止め、その場から離れた。


実は自分も前から希望の大学に受かってほしいと思っているが、面と向かってそういうこと言うのはのは恥ずかしいから言ってないけれども……

そんな姉ちゃんにも息抜きが必要なんだろう。


そんなことやあんなことを思うと自然と自分も頑張るかと思ってしまい、映画を見るのをやめ尚樹は棚に並べてある参考書を手に取り、デスクに並べノートをめくり15時までの間、勉強を始めた。



尚樹は黙々と勉強を進めていると部屋の外から扉をたたく音が聞こえてきた。


「尚樹~入ってもいい?」


姉ちゃんが扉の向こうで話しかけてきて最初は何だろうと思ったけど姉ちゃんと約束していたことを思い出し時計を見ると15時半を指していた。

すぐさま尚樹は椅子から立ち扉を開ける。


「15時過ぎになったから来てみたんだけど……できそう?」


「あぁごめん、今から起動して確認してみるから中でまってて」


尚樹はすぐにMMORPGのゲームを起動させる。

お知らせを確認すると……

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◆緊急メンテナンス 終了のお知らせ

本日3月19日に予定されていたサーバー障害による緊急のメンテナンスは15時20分に終了いたしました。


今回のアクセス集中によるサーバー障害による緊急メンテナンスにつきましては皆さまに大変ご迷惑おおかけしましたことへのお詫びにつきましては

また後日に詳細をこのお知らせより伝えさせていただきます。

※詳細は3月20日に公開予定となっております。


この度はサーバー障害による緊急メンテナンスの実施にて

お客様にご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。

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お知らせの内容を見るとどうやら無事に終了したようだ。

ゲームの開始画面も復活している。


「うん……どうやらできそうだよ」


「ホント!じゃあ早速やってるところ見せてよ!」


尚樹ははしゃぐ姉を横にゲームの画面を操作する。


「これが尚樹のキャラクター?見た目頭良さそうw」


「いいだろ別に自分に寄せなくてもいいんだから……」


「え~私だったら自分に寄せるかな~その方がこの世界で生活してるって感じしない?」


「う~ん……確かにそれもありか……後でちょっと変えてみるよ」


「うん!その方がきっといいよ!」


今の俺と姉ちゃんはいつの間にか昔のようになにげない話をしていた。

その感じが心なしか心地よく感じた。

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もう一つの世界 アカツキ @akatukiKG

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