第13話 信仰の聖女、盲信の聖騎士

「神を、殺す? 何と不遜ふそんな!」


 即、納得。とは行きづらいだろう。ましてやここは宗教と国政が深く関わっている国。そのトップが簡単に折れてくれるとは思えない。


「陛下も神託聖典の事はご存じのはず」


 この王城に併設された大教会。その地下神殿にある神託聖典に書かれた神による『口減らし』つまりは人口統制。


「もちろん知ってる、しかしも神のご意志だ!」


 ふざけるなよ。

 人の命が、本人の意思以外で害されてなるものか。


「ふっざけるな!!!]


 抑えきれなかった。


「何の罪も無い人々が、理不尽に殺されて。それが神のご意志だと?」


 転生前、武器を売っていた国では新興宗教が誕生していた。既存宗教を教祖の都合が良くなるようにだけ解釈したモノ。


 もしもが居るのなら、目の前で内臓を溢してる少年を救ってみせろ。兵士達の慰み者にされる少女を救ってみせろ。人の争いを止めてみせろよ。いくら祈っても神は人を助けない。


 あの子達に何の罪があった?

 生まれてきた事が罪だとでも、罰だとでもいうのか。


 RPGロケットランチャーで粉微塵になり、この世界に生まれ落ちる前。真っ黒な空間に、一人の真っ白な少女。


 神を名乗るので聞いてみた。

 この世界は、が救ってくれる事はあるのかと。


 そうして見せられたのは、神を信じた一人の神父が狂い果てる地獄の光景。確かにそこに神は居た。しかし救いと呼べるモノでは無く、その愛娘を依り代に顕界げんかいするという所業をやってのけた。


「何も考えず、何も見ず、抗いもしない盲目の羊となるのかァ?! 前を、現実を見ろ。神よ神よと、うるせェんだよ!!!」


 だからこそ、強く願った。

 がいようと救いは無い、ならば神を殺して人の時代を築こう。


 一人でも多く、救える理想郷を。


「そんな世界なぞ、私が壊してやる!」


 テロリストの発想から抜け出せないのは、私のごう。背後、中央階段の方で剣戟、魔法の戦闘音。


「そうはさせませんわ。逆賊」


 入ってきたのは聖女達が着用してる一般的な修道服をまとった女性。黒い髪を丁寧に切りそろえた、いわいる前髪パッツン。赤い瞳が印象的で尖った目つきは人物の性格を表しているのか。


「……ッ」


 ウィルが近衛騎士達を意に介さず、前髪パッツン女を警戒する。女の背後から、少し背の高い、すらっとした騎士。逆雫型の兜は覗き穴が一切無く、代わりに耳の装飾だけが緻密に作り込まれているのが分かる。神父服のような短いマント状の鎖帷子がついた胴鎧。


「教会騎士か」


 呟くと彼らは一礼。


「「教王陛下、御前失礼致します」」


 二人分の声。


「正義の聖女様。初めまして、信仰の聖女、フィデューセ・アブソリュートスと申します」


 前髪女は信仰の聖女。ってことは。


「初めまして。教会騎士団団長、イフィリスト・スティーニ」


 何処か、別のとこを見ているような印象。


「忌み名を、盲信もうしんの聖騎士。信仰の聖女様の聖騎士でございます」


 最悪な会遇エンカウントだ。





 

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