第47話 ウォーターショー!
『ハイルデンウォーターショー!』これより開演!
転んだ上に持っていたジュースをぶちまけて今にも泣き出しそうな女の子をしずめるために、俺は魔法で即興ショーを開催する!
演目はありがちな、勇者VSドラゴンでいく!
これなら分かりやすく迫力があり、そして何よりも画になる!
始める前に!ここは人通りが多く、顔がバレると面倒そうなので、空間コンテナから面を取り出して被っておく!
もちろん羽織ってるジャケットの内側から取り出したように見せてるよ!
ーーーー
まずは少女の目の前に水の玉を出現させ、そこから形を変えていき、兄さんが契約した精霊、ホロの形にする!
「うわぁー! 精霊さんだ!!」
それを見た少女はもう泣き止み、夢中で水のホロを目で追っているが、せっかくだ!
もっと驚かせてやりたい!
とゆうのは建前で、俺のやる気スイッチが入ってしまったのでやらずには居られないのだ!
ノアールは少女がホロに夢中のうちに、人に魔法が当たらないように適当に人払いもして、ある程度の場所を確保した!
「ではこれより、『勇者と精霊、ドラゴンとの戦い』を開演いたします!」
少女に向けてそう言うと、周りにいた人たちもこっちを注目し始めた!
俺はマジックワンドを取りだし、水を発現させ、ドラゴンを型どった!
どこまでやっていいか分からないので、とりあえずは50cm程のドラゴンだ!
「むかーしむかしある国で、強大な力を持つ悪いドラゴンが暴れていました!」
そう言って土で作った簡単なミニチュアの家を水のドラゴンに壊させる!
「人々は恐怖のどん底に落とされておりました。」
ここで一旦ドラゴンを消し、ホロを出す!
周りからは、「精霊さんだー!」「お、精霊だ!」なんて聞こえてくる!
「そんな絶望の中、人々の助けを求める声に耳を傾けた1人の精霊さんがいました! ですが精霊さんは、1人では力が弱く、戦えません」
「誰かー! 私と一緒に戦って! あの悪いドラゴンを倒すのに、力を貸して! 」
ここで勇者をドーン!
「すると、1人の少年が立ち上がったのです!」
「あなた、あの悪いドラゴンと戦ってくれるの?」
「精霊さんの問いかけに、少年は静かに頷き、手を出してきました、 そう、精霊との契約です!」
ここで勇者の中にライトを発動させて、光らせる!
「精霊と契約をした少年の体は薄く光り、その背中からは妖精のような羽が4枚出てきました! 少年はその羽を使い、空飛ぶ悪いドラゴンと戦いに行くのです!」
よし! ここまではいい感じだ!
あとはここからだが、大きさの違う魔法を精巧に操るのは死ぬほど難しい!
人とドラゴン2つ同時に細部までイメージして動かさなければ行けなので、頭の処理をフル活用だ!
ちなみにドラゴンはさっきよりも大きく、1mくらいの大きさに、勇者は15cmくらいにした!
周りの観客は沸きに沸いている!
「ドラゴン、これ以上人々を苦しめるのは許さない! ここで俺がお前を倒す!」
最後にそのセリフを言い、アクションに集中するために俺は黙った!
ドラゴンに切りかかるも、その硬い鱗に剣は弾かれる!
そこでドラゴンからブレスの攻撃が飛んでくる!
これは火の魔法で再現だ!
その後も斬りかかっては弾かれを繰り返し、水の勇者にある魔法をかける!
雷をまとわせる、デイリス父さんがやっていたアレだ!
その後もド派手な動きで盛り上げ! 最後は少年がドラゴンの目玉を斬り、怯んだところを大技で仕留めた!
ここで再びドラゴンを消し、勇者と精霊のカットにする!
「ありがとう少年よ、私の父を倒してくれて」
そのナレーションに合わせて、精霊を子ドラゴンに変化させる!
「君は、あのドラゴンの子供だったのかい?」
「はい、知性を失った父は、倒すしか止めることができなかったのです・・・ ありがとう、勇者よ!」
ここで大円団! 最後にライトを発動させて光で場をつつみ、全ての魔法を消して終わりだ!
ーーーー
お、笑ってる笑ってる!
最初の目的であった少女は、完全に泣き止み、めちゃくちゃ笑顔になってる!
少女だけでなく、周りの人たちも大盛り上がりだ!
あれ? これって大道芸みたいなものだよな? なら稼げるんじゃ?
俺は王都で散財するつもりなので、少しでも稼いでおきたい!
土で器を作り、そこに銀貨を1枚入れて、集まった人々の前へ置く!
すると、1人、また1人と器にお金を入れてくれる!
ふふふっ! 俺も楽しかったし結構頑張ったから、これくらいのご褒美は良いだろう!
ノアールは1人でそう言いながら、土をめちゃくちゃ圧縮、固めて、勇者のフィギュアを作り、少女に渡した!
ちなみにジュースまみれになったノアールの体も、水で洗い、ドライヤーで乾かしてまっさらな服になっている!
そんなこんなで、俺は少女に名前を聞かれたりお喋りをしながら、お金が溜まっていくのを眺めていた!
俺は子供に好かれる才能でもあるのか? どうせなら少し年上の女性に好かれたいんだけどさ!
俺がそんな不埒なことを考えていると、1台の馬車が通ってくるのが見えたので
「お、そろそろお開きだな!」
俺はそう呟き、土の器に入れられたお金を回収して、立ち上がる!
稼ぎは、正確には分からないが、銀貨だけでも十数枚入っていた!
日本円で10数万
さすがは王都、こんな劇でもこれだけ稼げるのか、やっぱりお金があるな、ここは!
ノアールは高額の臨時収入に、内心ガッツポーズを決めるのだった!
すると、進んできた馬車が俺たちの前で止まり、めちゃめちゃ上質で 綺麗な服を着た、どう見ても貴族の俺と同い年くらいの少年があわてて降りてきて言う!
「ルミーリア!」
「あっ!お兄ちゃん!」
だとさ!
あー、なんだ、お兄ちゃんか・・・
え?お兄ちゃん?!
このいかにも貴族って感じの少年がお兄ちゃん…
つまり君も、貴族なんかい少女!
俺は心の中で盛大なツッコミを入れた!
でもなんでこんな所に貴族の少女が1人で? まだ3歳くらいだろこの子
俺はボーっとしながらも、2人の話を聞く。
すると少年が俺に話しかけてきた!
「どうも妹がご迷惑おかけしたようでありがとうございました。 散策中に迷子になったようで、何かお礼をしたいのですが 」
「いえいえ、別に大したことではありませんので気にしないでください!」
なんか面倒くさそうなので、そう言って礼をして立ち去ろうとするが、少年に肩を掴まれて静止させられるた。
「いえ、そう言わずにお願いします! ご迷惑をかけてなんの感謝もしないような貴族だと思われるとまずいのです! お願いします!人助けだと思って!」
と、俺の両腕を掴んで地面に膝を着く姿勢でそんなことを言ってきた!
卑怯だろこれ・・・
自分で名言はしてないものの、貴族にこんなことされてなんも動かない平民なんていない。 多分こいつわかっててやってるずる賢いタイプの奴だ!
だが、多分どうしたって何かお礼をさせないとずっと着いてきそうな事なきがするので、仕方ない!
「うーん、てかあんた誰?」
と、俺がそう言った瞬間、馬車の横にたってたメイドがものすごい形相と威圧をしてきたが、少年が止める。
「いいよ サリー、重ね重ね悪いね、 自己紹介が遅れてしまってすまない、僕はアレクロット、アレクでいいよ!」
だってさ、メイドの方が気になるだろ、何だよ今の殺気は。
と、それはいいとして、今はこの少年だ! 家名は伏せて教えてきた!
まぁこうゆうことも有り得るだろうな! 俺もルミーリア、先程の少女にはノアとだけ、名乗ったからね!
いちいち家の名前を出すのも面倒だし、家に迷惑をかける可能性も充分にあるからな!
「俺はノア! アレクがそこまで言うなら手伝いをしてもらうよ、明日の昼前にもういちどここに来てくれ! 大丈夫か?」
「あぁ!もちろんだよ!」
「おれマジ? なら良かったよ!」
ふぅ、これでひとまず大丈夫そうだな!
そう思っていると、後ろのメイドさんが
「アレクロット様、そろそろお時間です!」
そう言って、アレクとルミーリアを馬車に乗せた!
馬車の窓から2人は顔を出して
「ノア!今度会ったらまた魔法の劇を見せてね!」
「ふふふっ、今日はルミーリアを見つけてくれて本当にありがとう! また明日もよろしくね!」
「ああ、気にするなよ! ルミーリアちゃんも、また今度ね!」
そう告げると、馬車は少しずつ進み出した!
ふ、何とかなったな!
どこの貴族か知らんが、明日は立派なお好み焼きマシーンにしてやろう!
アレクの思惑はしらないが、それでも思わぬ従業員の確保に、俺は明日の屋台へのボルテージをさらにあげるのだった!
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