第43話 やり返しは1000倍に


「行っちゃったね」


「うん」


「そうですね」



デイリス一行のお見送りをしに玄関に集まるダリル達から、たった今、2台の馬車が見えなくなった。


「テス、色々迷惑かけるとおもうけど、よろしくね」


「ええダリル様、こんな老木で良ければいくらでも使ってください!」


テスはデイリスが領主になる前、ここが王家直轄地だった頃にここの運営をしていた人で、現在は文官をまとめたり、父さんの執事をしている



「ふふっ!テスが老木だったら大概の人は落ち葉程度ね!」


「シアの言う通りだね! 俺たちに勉強を教えたのも、父さんたちに領地運営の事を教えたのもテスなんだからね!」


ダリルがそう言うと、周りでこの会話を聞いていたメイドや文官が一斉に頷いた!


「それは過大評価だも思いますが、そのお言葉、ありがたく受け取らせていただきます!」


「はい! じゃあいつまでもこんなところにいてもあれだから、少し早いけどみんな戻ろうか」



ダリル兄さんの声掛けで、見送りに来ていたメイドや執事、料理人たちそれに文官、武官の人間が、いっせいに職場へと動き出す!




ーーーーーーーーーーーー



ガタガタガタガタ



一方王都へ向かうノアール達は、馬車でお話をしていた!



「ノア、分かってると思うけど、人前で空間魔法は絶対に使っちゃダメだよ?」


「うん、バレたら面倒くさそうだから使わないよ!」


ノアールは、少し前に家族会議になった空間魔法について、デイリスから念を押されている!


「でもそれにしてもよ、適性があるのは聞いてたけど、まさか使えるようになるなんてね」


「ふふふっ! さすがの母さんも驚きすぎて空いた口が塞がってなかったもんね!」


しまった!! ・・・・・・・・・・あれ?


ついうっかり口を滑らせ、軽口を叩いてしまったが、母さんはいつものようにニコニコと穏やかな笑顔だった!


あっぶねぇ〜! わかっててもつい思った事言っちゃうんだよなぁ〜、どうにかしないと。



「それでノア、その空間魔法は転移の他にどんなことが出来るの?」


「あぁ、こうゆう事くらいだね!」


そう言って、俺は空間コンテナを発動させる


「な、空中に扉・・・ これはなんなの?」


馬車にいる全員が、めちゃめちゃ不思議がっている!


まあこんな、魔法にしてもありえない意味不明な現象が目の前で起きれば、誰だって驚くし、興味を引くものだ!


もう一度チラっと周りを見ると、今度は不思議ではなく、知りたい! とゆう顔を皆がしていたので、おれは空間コンテナの概要を説明した!



ーーーー


「なるほどね、ちなみに扉の大きさは変えれるのかい?」


「うん、発動する時に込める魔力の量で変えれるよ!」


「あら、それは商人は喉から手が出るほど欲しい能力ね!」


劣化せずより遠くへより多くの物を運べる。


この世界の商人にとって、移動時間と劣化、商材量は、商いには切っても切り離せない問題だ!


だが、空間魔法はこの3つすべてを解決する!!



本当に万能だよな、空間魔法!


もし将来何かあっても、この空間魔法と知識があれば、俺は食いっぱぐれることは無いな!



そんな事を思っていると、デイリス父さんがめちゃめちゃ聞きにくそうに、だが聞いておかなければならない事を、ゆっくりとした口調できいてくる


「ノア、これは聞いておかなければならない事なんだけどね、人は、そこに入れるのかい?」


とゆう事らしい!


父さんが聞かないといけない立場なのは分かる!でもそれは禁忌の質問だよ全く。



「たぶん、たぶんだけど、人は、入ることも入れることも出来ると思う」


俺がそう答えると、父さんは渋い顔をさせながらも続けて聞いてきた。


「人が入ると、どうなるんだい?」



まあ、そうだよね


「バッタで実験したんだ、そしたら、扉を通り過ぎて、手を離したた瞬間に全く動かなくなった!」


そう言うと、皆の表情が曇るが、俺は続ける


「それで俺は、バッタは死んだと思ってね、すぐにとりどしたんだけど、生きてたよ! 」


そう、いきてたのだ! 俺が触れた瞬間、元気よく動き出したのだ!


あれには驚いたが、多分時間の影響だと思っている!


この魔法は異空間と現実を繋ぐ扉を作るための魔法


つまり異空間にはそもそも時間の概念すら無い場所だから、完全に向こうに行き、こちらとの接触が絶たれると物も動物も止まるんだろうな。


これはあくまで予想だが、皆には伝えておいた!


「なるほどね、答えにくいことを聞いたね、ありがとうノア!」


「うん!」

父さんが優しい笑顔でねぎらってくれた!


それでも、結構怖い話をしたせいか、馬車内はしーんと静まり返ってしまい、朝3時程とかゆう意味のわからない時間に起こされた俺は、まぶたが異常に重たくなり、気づかぬうちにスヤスヤと寝てしまった。




ーーーーーーーーーー


出発から5時間ほどたった頃


「テスナ、起きなよ!」


「ん、ごめんなさい、寝てしまったわ!」


「ふふ、全然良いよ! むしろ可愛い寝顔が見れて幸せなくらいだけど、一度休憩にしようか!」


デイリスはいつもの爽やかスマイルでそう伝える!


すると…


「分かりました、アナタ!」


いつもはデイリスと呼ぶテスナは、頬をピンクに染めながらも、少し得意げな「これは仕返しよ!」とでも言いたげな顔をさせながら、あえてアナタと呼んだ!


出会って15年経ち四児の親になっても、この2人はお互い、こんな風にたまにキュンとする事を言っては言われ、いつまでもラブラブらしい!


そんは事もあり、頬を少し赤くしたデイリスが御者に声をかけ、少し進んだところにある広まった場所で、馬車は停止した。



ーーーーーーーー



「ふふふっ!いつもは軽口ばっかのノアも、こうしてれば赤ちゃんみたいだな!」


「本当ね! 指でも咥えてくれたらもっと可愛いのに!」



「うふふふっ!2人は寝なくても平気なのかしら? 朝はだいぶ早かったでしょう?」


休憩になり、別の方の馬車から降りてきたハリーとチコはノアを呼びに来たのだが、残念なことにテスナに膝枕をされながら眠っていた!



「私達は大丈夫ですよ、将来は冒険者になるのでこれくらいは訓練してます!」


「おいチコ! 何デタラメ言ってんだ! 一昨日から楽しみすぎて寝れてなくて、昨日爆睡したから眠くないだけだろ!」


「なっ、ハリーだって同じようなもんだろ! 朝ザダルマンのおっさんが言ってたぞ!」


「なっ、あんのアホ親父!」


ワチャワチャワチャッ!!



「ふふふっ!」


ハールとチコチーニは、仲がいいのか悪いのか、いつものごとく言い合いをし、そんな悪ガキ2人の言い合いを聞いて、テスナはなんだか懐かしくなり笑ってしまった!


「2人とも、ノアのことは好き?」


いきなりのテスナからの質問に、ワチャワチャと言い合っていた2人は少しポカンッとした後、息ぴったりに答える!


「「好きとか嫌いとかじゃなくて」」


「なんかもう兄弟?」


「相棒?」


「「みたいな感じだよ!」です!」




息子の親友2人から返ってきたその迷いのない返答に、テスナは心の底から嬉しくなって、自分の膝の上で気持ちよさそうに寝る息子の頬を指でツンツンしながら


「ノア、あなたは本当に良い友達を持ったのね、大事にしなさいね!」


と、まるで女神のように優しい声、優しい表情でそう呟く。


そして今度は、ハリーとチコの頭を撫でながら


「これからもこの子と仲良くしてあげてね!」


と、これまた優しく言うのだった。



いきなりそんなことをされた悪ガキ2人は、照れたのか頬を赤くして、少しおどおどしている!


いかにテルヌスの悪ガキでも、母親には勝てないらしい!



そんな事をしていると・・・



「ん〜、 ん?馬車が止まってる、なんでだ? はぁ〜〜〜!!」



ノアールが目を覚ましたのだ!


ーー


あれ? 頭の下にもちもちの枕がある、こんなの持ってきたっけ?


それに馬車も揺れてないような…あ、夢か・・・



そう思い俺はしっかりと目を開けるが、目に映るのは馬車の天井だった。


「ん、ん〜」


状況から、休憩だと察したおれは、状態を起こし、伸びをするのだが、なんとびっくり!


テスナ母さんがすぐ横に、それもちょうど俺が頭をついてた場所に…


「おはようノア!」


おれが状況を理解すると同時に、母さんはおれの頭を撫でながらそう言ってきた!


俺、膝枕されてたのか・・・



その事実と頭を撫でられているこの現状に、少し心がホワっとして、頬っぺが少し熱を帯びるのが、自分でも分かった。


俺は恥ずかしくなり、目線を入口の方へやるのだが、そこで絶対に目にしてはいけないはずの2つの影を見る。


「あらノアく〜ん! もう起きちゃったのぉ〜?」


「ノアちゃぁ〜ん! もう少し寝ててもいいんでちゅよ〜!」



なっ! なんでこの二人が・・・・やばいやばい!


「ふふふっ!あら?ノア、口が開いたままよ? 大丈夫?」


ノアがテンパっている最中、テスナが不意にそう言った!


まさか母さん!


空間魔法の話してた時の俺の


「ふふふっ! さすがの母さんも驚きすぎて空いた口が塞がってなかったもんね!」


の仕返し?


「ノア、女性に対する発言は気をつけなさいと言ったでしょ?」



なっ、そんな!


「クソ! はかったなぁーーーーーーーーーー!!」



そんな俺の叫びは、周りの山々に反響してやまびこになり、虚しく消えていった。


はぁ、また寝よ。

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