第37話 スパイスの謎



午前中にある程度の話は終わったらしく、昼食後に1度、決まったことの簡単な説明をされた


まずはここ、鬼の里を率いるアマツカミ家とセンバート家の友好条約を結んだ事!


この条約の意味はかなり大きい!


今は俺とゆう鍵が無ければ行き来は出来ないが、そこはいずれ、俺が何とかすると父さんもルイも思っているようだ!


空間魔法もまだ使えないので、その期待に答えれるかは分からないがまあ頑張ってみる!


行き来が自由になれば、大陸間の文化交流と貿易が出来るということになる


山に囲まれたセンバート領が港を要する街と同じような貿易ができるようになるかもしれない!



次に、鬼神族については、まだ公表しない事になった!


人間社会が亜人との関係を築いた経験が無いため、何が起こるか予測もできない!


なので今は、公表はせず、少しずつテルヌスでの共存の仕方を慣らしていこうという事になった!


王都から戻り次第またこの里に訪れ、数人の鬼にテルヌスで生活してもらう事になった!



大きな決まりはこれくらい


後は、今回の王都遠征に関する情報のやり取りだった!


俺たちが王都へ行っている間、コウはテルヌスで過ごす事になった!


ダリル兄さんとシア姉さん、うちの文官達と協力して、鬼の受け入れ態勢と、珍しい亜人を誘拐しようとする輩などの調査と警備について話し合わせるらしい


まぁ言い方的に、父さんの中ではその件をどうするかの答は既に出ているようなので、時期領主として兄さんがどこまでできるのか、シア姉さんとコウが何をするのか、とにかく色々な経験を積ませたいんだろう!



そして、できる限り、月に1度は意見交換をする為にお互いの領へ行く事になった!



ただ、テルヌスト鬼の里を繋ぐ空間魔法が付与されたの石像の鍵である俺が、魔道学院に通う2年後からどうするかとゆう問題が生まれた


話し合いの結果、今は分からないので、その時に話し合う事になったらしい!



でも、まあそこは大丈夫だと思う!


実は昨日のサイコキネシスによる浮遊の魔法を使って、もしかしたら空間魔法行けるかも!


そう思える発見があった!


テルヌスに戻ったら、直ぐに実験するつもりだ!



空間魔法で転移を覚えたら、月に1度テルヌスに戻ることも容易にできるという事だ!



午前の話し合いはこんな感じ!


午後は自由にして良いらしく、アマツカミ家の従者を連れるとゆう条件で里を回ることも許されたので、俺は1人の従者についてもらい、ヨウとフウも一緒に里に出た!




ーーーーーーーーーーーー



「ねーお姉さん、なんでそんなに警戒してるの?」


「「ツキミ変!」」


ツキミというのは、俺に着いてきてくれたアマツカミ家の従者だ!


歳は18歳くらいで、まだぺーぺーの新米従者らしいのだが、そのツキミがソワソワと周りを異様に警戒しながら歩いているので、怪しくて仕方ない!



「いえ、この里のものは人間に慣れる慣れないどころか、恨んでいるものがほとんどです! ルイ様と契りを結んだあなた方を傷つける訳にはいきませんから!」


とゆう事らしい



一応コウが屋敷で暮らすと決まった一ヶ月前に、ルイから説明はしたようだが


まあそれだけで溜飲を下げきれるわけもないか。


人との争いで数人死人も出たみたいだしな・・・



「ツキミさん、ありがとね!」


俺はそれだけ伝え、目的の場所へ案内してもらった!



ーーーーーーーー



「ここがサイ爺の香辛料のお店です!」



俺はまず、スパイスを売るお店に案内してもらった!


スパイスは種類があるだけ料理の幅が広がるからな!


現代食の再現には欠かせない物だ!



「ノア様、ここの主人のサイ爺はかなりの頑固ジジイです! 人間のノア様が行っても、取り合って貰えないと思うんですけど、良いんですか?」


「うん! ここにはウチの領では手に入らない香辛料も多くあるみたいだし、里で売ってるなら栽培してるってことでしょ? それなら色々教えて欲しい!」


そう言って、スパイスのお店に入る!



「こんにちはー!」


「・・・」


挨拶をしても返事は返ってこない。


店内はただただ静かで、様々なスパイスの香りが混ざり合い、物凄くいい香りだった!


ツキミに聞いてたじいさんの姿は見当たらないので、俺は各種スパイスを見て回る!



気になるスパイスを見ていて、気づいたことがある!


それはスパイスの種類だ!


地球にもあるスパイスで、名前も同じなので分かるのだが


シナモン、バニラ、クローブ、カルダモン、クミン


これらのスパイスがここには置いてあるが、地球で言うと、産地がバラバラなのだ!


シナモンはベトナム、バニラは中米、クローブはインドネシア、カルダモンはスリランカ、クミンはエジプト


現代ではこの殆どはどれも熱帯のインドネシアなんかを中心に栽培されているらしいが、原産地はバラバラ!


なのに何故ここにそんな各地の香辛料があるのか、俺は疑問でならなかった!



今あげたスパイスはどれも使い勝手がいいのでとりあえず値段を見て、中袋ごと買うことにする


そして前回屋台で買ったセージも、あるものに使うために、少し多めに買っていく



一通り見て周り、買うものが決まったので、袋を持ってカウンターに向かった!


カウンターには禿げあがった爺さんが1人座ってたんだが、そこに座ってた爺さんは、俺の顔を見るなり表情を曇らせた!


「おい!お前人間だな? 忌々しい人間が、今度はヨウ様とフウ様まで引き連れていくつもりか! 貴様に売るもんはうちには無い! とっとと出ていけ!」


爺さんは怒りの籠った表情で、俺にそう言ってきた!


そんな爺さんの言葉に黙ってないのがツキミだ。


センバート家とアマツカミ家は友好条約を正式に結び、今の俺はこの里の客人の扱い


そのため、今度はアマツカミ家の従者であるツキミが爺さんに言い寄る!


「失礼な! この方はルイ様がお認めになられた人間の1人、その方にむかってなんとゆう口の利き方! 撤回しろ!」


「ふんっ! ルイ様がお認めになられたところでここはわしの店、誰に何を売るのかはわしが決める! うちの店にそぐわない者にうちの商品を買う権利なんて無いわい!」


「ジ、ジジイ!」


「なんじゃ小娘!」



と、俺は冷静に話したかったんだけど、ツキミが暴走してもはや話し所ではない


2人ともバチバチでものすごい剣幕で怒鳴りあってるよ!



そんな2人の怒鳴り声を聞いて、ヨウとフウが泣き出してしまった!


「あ〜、大丈夫だよぉ〜? よしよしよし!」


俺はすぐさましゃがみこみ、2人の頭を擦りながら、いい子いい子して話しかけるが、2人の怒号のせいで双子ちゃんに声が届かない!



おいおい、5歳児と3歳児の前で大の大人が怒鳴り合いの喧嘩って、正気の沙汰じゃないぞ!


怖くて涙を流す双子ちゃんを見ていたら、俺はふつふつと怒りが湧いてきて、2分くらい経った頃だろうか、俺の怒りが爆発してしまった!



俺は雷の魔法を2人に使い、数秒だけ体を硬直させて注目させる


「2人とも3歳の子供の前で何してんの? 」


「うるせー!人間なんか二ッイィィィッ!!」


俺が喋ると、硬直の解けた爺さんがまた怒鳴りながら言い返してきたので、今度は口元だけに電流を流して、口を開かなくした!


「あのさ爺さん、あんたがどんだけ人間を嫌ってるかは知らないが、ヨウとフウがなにか悪いことでもしたのか? してないよなぁ? 」


俺は至って冷静な言葉遣いでじいさんとツキミを叱る!


「2人とも仕えるべきアマツカミ家のご子息ご息女を泣かせて、その事に気づきもしないで怒鳴り合うってどうゆう事?本当に大人なの? 5歳児にこんなこと言われて恥ずかしくないの?」


爺さんは渋い顔を、ツキミは面目ないと反省しているようだ。


「ねえ爺さん、あんたが人の事を悪く思ってるのは別におかしくないし、今そこはどうでもいい、でもヨウとフウに対しての態度についてはどうだった? おかしかったよね? 大人なんだからケジメの付け方くらいは分かるでしょ?」



俺はそう言い、爺さんにかけた魔法を解く。



すると爺さんはカウンターから出てきて、ヨウとフウの前に行き地面に膝を着く。


「すまんかったなぁ、爺さん大声あげちまって、許してくんねえか?」


双子の頭を撫でながら、優しい声でそう謝罪する!


それを見ていたツキミも、直ぐに双子に頭を下げて謝罪した!


それを見た俺も、少し熱が下がってきて、ようやく充分な思考を始められた。


謝罪された双子ちゃんは一応泣き止み


「「いいよ」」


っとぐずりながら言った!



この表情を見て怒りの感情が残ってるやつなんてもうそれは人ではなくて化け物だろ!


そう思うくらい、一気に心の中に溜まった怒りや鬱憤が、サーっとどこかえ消えていくのがわかる!



子供達の笑顔を全人類に見せれば、わりかし簡単に世界平和は実現できるんじゃないか


そう思うほど、双子ちゃんの泣き止んだ後の少しニコッとした表情には力があった!

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