第36話 異国の料理!


午前中、まったりと縁側で過ごした俺は、女中さんに呼ばれて、先程の大広間の大きな机に着いた


「「ノアー!!」」


「お? なんだノアール坊主! えらく2人に好かれたな!」


席に着くと、ルイが笑顔でそう言い、周りのみんなもこっちを見て微笑んでくる。


原因は、俺の両サイドにヨウとフウが陣取り、ニコニコしながら俺の名前を呼んでいるからだ!


「ええ、懐いてくれるのは嬉しいですけど、なんででしょうね」


と言いつつも、多分かき氷を食べさせたからだろうなぁ〜、と思っている


俺がそう考えてると、エンさんが話しだした



「きっとノアールくんが、歳が近いのに落ち着いてるからじゃないかしら」


「うふふっ、ノアは少しおじさんくさいから、きっと近所の面白いおじさんみたいな存在なのよ!」


「あら?そうなの?テスナちゃん」


「ええエンちゃん、子供っぽい事もするけど、基本おじさんみたいなことを言っているわよ!」


「「うふふふっ!!」」



だってさ、失礼すぎない?


まあ知識がおじさんだから、ぽいような態度をとる事も多々あるけど、それでも息子だよ?


健康優良児の5歳児を捕まえて言うセリフではないと思うんだけど!



・・・ってか! いつの間に2人は仲良くなったんだ!


会ってから3時間も経って無いんじゃないか?


もうちゃん付けで呼びあってるよ! テスナ母さんもエンさんも適応力凄すぎだろ!


確かコウもエルーナ姉さんもシア姉さんも直ぐに仲良くなってたよな!


俺の周りには適応能力が高い人が多すぎるみたいだ!



ーーーーーーーーーー


そんな感じで、一通りママ友連中にいじられた後は昼食だ!


俺はこれをめちゃめちゃ楽しみにしていた!


だって全く知らない土地の料理だぞ? 楽しみに決まってるだろ!


それに前回この里に迷い込んだ時も、屋台には結構色々な食べ物もあったからな!



ルイが合図を出すと、給仕係が次々と料理を運んでくる!



ゴクリッ!!



机いっぱいに並ぶ料理は、テルヌスでは見たことも無いものがほとんどで、どれも食欲を誘ういい匂いを放ち、部屋に充満させる!



全ての料理と飲み物が出揃うと、ルイが一言添える


「今日は嬉しい日だ! 送り出した娘が帰ってきて、新たな友もできた! そして何より、人とも共に生きられると証明された日だ!

突然だったが、できる限りのもてなしをさせてもらった! 皆大いに楽しんで行ってくれ!」


ルイが言い終わると、皆が一斉に食事を始めた!



格式の高い食事の場では、食事中の会話は食事の邪魔にならない程度がマナーなのだが、今回は宴に近い!


皆楽しく話しながら食事を楽しんでいる!



いただきまーす!


俺はまず、目の前に配膳された料理を手に取る!


緑色の透き通ったスープの中に、お肉と付け合せの野菜、多分ほうれん草のような葉野菜と、人参のような根菜が添えられていて、その下から顔をのぞかせているのは!


君は麺くんではありませんか!


そう、その下にはきしめんのように平ペったい太麺があった!


俺はすぐさま器を手に取りスープを一啜りする!


出汁が…出汁の味がする!


少し薄いが、しっかりとした魚の出汁をベースに、野菜と肉、そして香辛料の旨味や香りがお互いに相乗効果を発揮していて、めちゃめちゃ美味い!!


その流れのまま野菜と一緒に麺も啜るが、これはもう芸術だ。


日本食大好きで、出汁に飢えてた人間が、5年ぶりに出汁の効いた麺料理を口にしたんだ


人は幸せな気持ちになると涙が溢れてくるらしい!


俺は麺料理を啜りながら、目元からは塩分を少し含んだ液体を垂れ流している。



「なっ、どうしたのノア! 」


「ハッハッハ! なんだ坊主! 泣くほど美味かったか?」


兄さんは心配し、ルイは茶化してきた!



「うん!美味すぎるよこれ! 」


これは反則だ!


現代の料理にも引けを取らない美味しさだよこれ


「それはアンテスという麺料理だ!里の伝統料理のひとつだぞ!」


「あらあら、それは料理人たちも喜ぶわね!」


「あぁ! 後で伝えてやらんとな!」


アンテス、なにか意味があるのだろうが名前の由来なんてどうでもいい!


「美味い!」



ーーーー



ひとしきりアンテスを堪能した俺は、また机を見渡す


見たことも無い煮込み料理や炒め物が沢山並んでおり、俺は片っ端から食べて行く!


何度か父さんや兄さん、ルイにも話しかけられたが、適当に返答し、料理を食べ続けた!


結構大事なことも言ってたけど、さすがは三大欲求、俺は勝つことができなかったのだ!




ーーーーーー


「はぁ〜〜〜! お腹いっぱい!」


あの後もかなり食べたのだが、ほとんどの料理は美味かった!


中には苦すぎるものや辛すぎて口に合わない物もあったが、充分満足出来た!


「ふふっ、ノアったらあれだけ食べてお腹いっぱいにならない方がおかしいわよ!」


「そうよノア、あんなにいっぱい食べて大丈夫なの? 私は心配よ!」


「確かに凄かったね、あんなに食べるノアは初めて見た!」


姉さん達がそう言うのは分かるが、兄さんまで言ってくるって事はよっぽど食べてたんだろうな!


パンパンになったお腹を擦りながら、お茶を頂いてゆったりとする!



ーーーー


そんなふうに食後の一息を満喫していると、両サイドの双子ちゃんが、めちゃめちゃ上目遣いのあざとい顔をさせて


「「ノア〜、かき氷ちょ〜だい?」」


と言ってきた!



クソ! 1人だけでも3歳児にこんな感じで言われたら断れないのに、双子ちゃんが同時にハモって言うとインパクトが凄すぎる!


こんなおねだりされたら、全世界の人、亜人、ある程度の知能を持つ生物なら、何でもしてしまうと思う!



俺は当然のように土の器にふわふわかき氷を山のように乗っけてあげた!


ジャムのシロップはコウがお願いしてくれたらしい!



そして双子ちゃん達だけでなく、うちの家族は当然のこと、ルイとエンも今日深々だったので、みんなの分を渡しておいた!


まぁお昼のお礼も兼ねてね!



「何これ!冷たくて甘くて美味しい!」


「本当だな! 氷にこんな使い方があったとは面白い!」



こちらの人達にもかき氷はウケるみたいだ!


これは上手くすれば、王都みたいな人と金が多く集まる場所で売れば、かなりの儲けになるんじゃ?



俺は王都でできそうな新たな小金稼ぎの商売を思いつき、ニヤニヤしながら構想を練ってゆく


王都にはハリーとチコも来るらしいからな、2人を馬車馬のようにこき使ってやろう!


イテッ!


あくどい商売を思いつき、1人でほくそ笑んでたら、双子ちゃんにスプーンで頭を叩かれた!


「ノア悪い顔!」


「ノア意地悪の顔!」


だとさ! 俺はいい笑い者だよ !自業自得だけど!



3歳児にでも分かるくらい悪い顔をしてしまっていたらしい


母さんやエルーナ姉さんいわく、俺は冷静で落ち着いてはいるが、意外と顔に出やすい! とのことだ


だがまさか3歳児にまで指摘されるほどとは思わなかったよ



これからは気をつけよう! そう思いながらも背もたれにもたれ掛かり、俺は一息いつく。

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