第35話 トラブルの後のまったり
俺たちは鬼の里を移動中、謎の攻撃にあい防いでいたのだが、その相手はまさかのコウのお母さんであった!
「お母様、こちらの方々は今私がお世話になっているセンバート家の皆様です! 今日はご挨拶にと思って皆様もお呼びしました、それなのにお母様、なんであんな攻撃をしてきたんですか!」
コウがキレ気味にお母さんを怒っていると、向こうの方からまた1人、今度は見覚えのある鬼がやって来た
「はぁ〜、間に合わなかったか・・・」
この里の長、ルイである。
「すまないデイリス殿、妻が失礼をしてしまった」
「いえいえ、あの時は奥方殿に声をかけることもままならず、そのまま娘さんを連れて行ってしまいましたので、当然だと思います」
「そう言って頂けるとありがたい、 失礼、私はここの長をしているルイと言います、よろしく! ほらエン!」
そうルイに促され、渋々といった感じで鬼の面の女性が前に出てきた
「ルイの妻、そしてコウの母親のエンです。 先程はついカッとなって矢を射ってしまい、申し訳ありませんでした、まさかあの矢を耐えるとは思いませんでしたよ」
と、いかにも敵意むき出しな感じで言ってきた!
まあ、確かにあの攻撃の威力はやばかったけど、そこまで怒ってはいない。
なんの相談もなしにいきなり娘がいなくなれば、誰だって少なからず怒りの感情は生まれるというもの
あの攻撃を仕掛けてきても納得はできる。
それに、俺たちもそんな事は当然わかっていたことなので、心の準備はしてきたのだ!
「ご丁寧にありがとうございます。
私はデイリス、この里と繋がったテルヌスの街がある領地を治める領主です」
「私はデイリスの妻、テスナと申します。エン様、娘さんをなんの言葉もなしにこちらへ連れて来てしまった事、本当に申し訳なく思っております。 」
「いえ、コウのその顔を見ればあなた方がコウに良くしてくださったことは分かります。いきなりの攻撃、すいません。」
ふふふっ、どうやら母さんの柔らかな雰囲気は、鬼にも通用するらしい!
ついさっきまでむき出しだったエンの敵意を、たった一会話で抜き取ってしまった!
まあコウが無事でいる事も、かなり大きいとは思うけどね
そうして大人たちの自己紹介が終わり
「積もる話もありますし、こんな所でもなんなので家に行こう!」
というルイの一言により、俺たちはアマツカミ家の御殿に通された
ーーーーーーーーーー
到着して驚いたのは、この御殿だけ、明らかにほかの建物とは違うとゆう事だ!
壁は木材と漆喰のような白壁に覆われ、屋根も普通の勾配がついた屋根
形的には、まさに大正ロマンの様な和洋折衷スタイルの御屋敷だ!
敷地もかなり広く、庭園もしっかりと手入れをされている!
俺たちは、そんな御殿の大広間に通され、大きな机を挟み、アマツカミ家とセンバート家の全員が対峙する形となった
そして最初に口を開くのは、この館の主人であるルイだ!
「みんな、今日はよく来てくれた! 豪勢にとはいかんが、もてなしの用意はさせているので、昼食は楽しんでってくれ!」
そう言われ、改めて自己紹介をしていく!
ウチはいつもの6人
父さん、母さん、エルーナ姉さん、ダリル兄さん、シア姉さん、そして俺だ!
アマツカミ家はルイ、エン、コウの3人と、コウの4つ下で、双子の兄妹、ヨウとフウが居た!
話には聞いていたが、実際に見ると可愛いものだ!
2人ともまだ言葉は噛み噛みで、歩く姿もぎこちない
この感じ懐かしいなぁ〜!
前世の俺には妹がいたのでよくお世話をしたものだ!
だけど歳を重ねるにつれて煙たがられ、悲しい思いをしたことを思い出し、瞳に涙が溜まったよ。
まあ、そんな3歳児が大人の話し中じっとしておけるわけもないので、エルーナ姉さんとダリル兄さんだけ残り、あとの子供は別室へ移動した。
ダリル兄さんは家を次ぐし精霊絡みのことも聞くのだろう
エルーナ姉さんはあと2年で成人なので、色々な経験をさせたいらしい。
そんなわけで、俺たちはリビング案内される!
ーーーーーーーー
今は9月の始まり、まだまだ夏の残暑はあるものの、ピークよりは気温は下がってきている
そんな中、コウがかき氷を食べたいと言ってジャムを持ってきたので、仕方なく作ってやる
ヨウとフウはお腹を壊すといけないので量は少なめにして渡しておいた
ただ、そのまま部屋の中で食べるのも味気ないので、外が見える場所は無いのかと尋ねると、コウが案内してくれた
「ここなんてどう? 全部とまでは行かないけど、里を一望出来るわよ!」
「うん、めちゃめちゃ良いよ! 」
案内された場所は、まさに縁側だった!
外観こそ和洋折衷だったが、中は特に日本っぽさはなく、期待すらしていなかったので、いきなり現れた縁側に、俺はだいぶテンションが上がってしまった!
しかも景色がまた抜群!
ここは1階なのだが、庭が比較的狭くなっている場所で、敷地の周りの生垣も低い
そのため、庭に生える木や低木越しに鬼の里を見れて、ロケーションは最高だ!
そんな場所で俺たち5人はまったりとかき氷を食べる
「あ〜冷たい!」
「やっぱこれは美味しいわね〜、よく作ったはノア!」
「ノア〜、おかわり!」
「フウもおかわり!」
「えぇ〜今食べまたじゃん、てか食べるのも早すぎ!! 食べすぎるとお姉ちゃんに怒られるよ?」
「「いいの! おかわり、おかわり。おかわり!」」
そう言って、双子ちゃんは息ぴったしに首を横に振る!
「はぁ〜何よそれ!双子芸? 可愛すぎなんですけど!」
シア姉さんはそう言いながら、ヨウとフウの頭を撫でまくった!
コウもその状況に苦笑いしながらも 「ノアくん、もう一杯だけ作ってくれる?」
と頼んできたので、さささっと作って渡した
それにしてもこれが3歳か… 俺が3歳の時って何っやってた・・・ あ、そっか
何やってたんだろう、と思い返した瞬間に、黒歴史が襲ってきた
俺はハリーとチコの3人でかってに街を抜け出して、かってに山に入って、オークに襲われたんだったな!
今思えばどれだけ無謀なことを…
てゆうか、そう思うとあの二人はめちゃくちゃ優秀な奴らだな!
あの時も、ヨウやフウのようなふわふわした話し方じゃなく、しっかりとした言葉で考えながら話してたし
まあ明らかに俺の影響もあると思うんだけど、今思うと、オークとの戦闘でも冷静だったし、簡単な連携すら取れてた!
あいつらってスゲー奴らなのかもな!
何故か俺は、鬼の里に来て地元の親友2人の凄さに気付かされるという、なんとも不思議な状況になった。
でもなんかアイツらがすごいって少しムカつくけどね!
ーーーー
かき氷も食べ終え、今は縁側に座りまったりとしている
外から入る涼しい風を体いっぱいに感じながら、真夏のものとはまた少し違う虫の鳴き声の音色を聞く
これこそまさに『 ザ・田舎暮らし 』って感じがする!
3歳の双子ちゃん達は、まだ午前10時ほどにもかかわらず、冷たいものを食べて寝てしまっているが、その寝姿なんて今にも写真に収めたい!
エモいって、こうゆう時に使うんだな!
俺は将来家を建てることがあるのなら、絶対に縁側だけは作ると決めた!
昨日今日で、空を飛んだり、精霊にあったり、女性陣に殺されかけたり(自業自得)、矢をいられたりと、だいぶトラブルはあったが、そんな疲れも吹っ飛ぶくらい、時間の動きがゆっくりと感じられる
「まったりの最高のスパイスはトラブルだな」
俺は無意識にそんなつまらなくて寒い事を呟いてしまった
「は?何言ってるの?」
「別に何でもないよ!」
その後はコウはシア姉さんを連れて自分の部屋に行った!
コウもいつもより一段と笑顔が多い!
まあ、子供の頃は、友達を自分の家に招待するだけで、めちゃくちゃ嬉しいもんな!
そんな2人に双子ちゃんを頼まれた俺は、結局昼食の時間まで縁側でのんびりと幸せな時間を堪能した。
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