第38話 双子ちゃんが可愛すぎる件


双子ちゃんのおかげで、ツキミとスパイス屋のじいさんの喧嘩は無事に終わった。


ヨウとフウには後でお菓子を作ってあげよう!



その後、いくら人間とはいえ5歳児に向かって色々と言ったことに罪悪感があったのだろう


めちゃめちゃ渋々にだが、スパイスを買うことが出来た!



「じゃあねじいさん! また来るよ!」


「調子に乗るな小僧! 二度と買わせんわい!」


去り際にそう言われたが、何となくあの爺さんは次も何かにつけて文句を言いながらも、買わせてくれるんだろうなぁと思う!


双子に謝った時の表情は本当に心からの優しさが溢れたようだったからな!



まあそんなことを思いつつも、1度御殿へ戻る!


本当はもっと歩きたかったが、じいさんの態度からして、似たようなことが起きてもおかしくないからね


ヨウとフウもいるし、あんな大人の喧嘩なんて見せたくないからな!


俺はチラッと横を見ると、ツキミがかなり落ち込んだ様な表情をさせていた。


まあ、それに関しては反省してくれとしか言えないんだがな。




ーーーーーーーーーー



「おや?ノア、もう帰ってきたのかい?」


「うん、やっぱりまだ人間への敵対心は強いみたいでね、例の物も一応は買えたけど何とかギリギリだったよ!」


「やっぱりそうなんだね、でもノアが言ってた物は揃ったんだろ?」


「うん! 父さんからの依頼に使うものも、それ以外にも色々あったから買っちゃったよ! 」


「そうかい? まあノアが使えそうと思ったものなら構わないよ!」



ふふふ、そう! 今回買ったスパイスは全て、俺の財布ではなくセンバート家のお金で買ったのだ!


これは父さんからとある依頼を受け、それの材料費としてもらっただけなんだけどね!


依頼については今は内緒だ!



「そう言えばノア、砂糖の方はルイ殿から買えたよ! ノアの言う通り外貨を獲得したかったみたいでね、少し話したらすぐに話はまとまったよ!」


そうかそうか、やっぱりどこの世界でも貨幣制度がある場所のコミュニティーの長は、外貨の獲得に四苦八苦するみたいだだな。



父さんに頼んだのは砂糖の買い付け!


センバート家のあるドリス王国、とゆうか周辺諸国もだが、砂糖とゆうのは高級品だ!


ウチでも月に1度、小瓶2つ程しか買わない


だが、ここ鬼の里には、何故か砂糖が沢山あるらしく、恐らく昼食にでてきた料理にも結構入っていたと思う!


なのでここの封鎖的な生活形態を利用させてもらい、安く多く仕入れたという訳だ!



「よし! ならこれで例の物もできるよ!」


「本当かい?」



俺たちはアマツカミ家の一室で、コソコソと秘密計画の内容を詰めた!



ーーーーーーーー



その後も厨房で出汁の秘密を教えてもらったり、双子にだけクッキーを焼いてあげたりと


まったりしつつも程よくやることもある有意義な時間を過ごさせてもらった!


個人的には双子ちゃんの


「「おいちぃー!!」」


に完全に心を撃ち抜かれ、今日一嬉しかった!



やっぱ年下の兄妹っていいなぁ〜! シア姉さんがよく俺に絡んでくるのも、不本意だが分からないでもない気がする



そうこうしている内に日も暮れ始め、テルヌスへ帰る時間になった。



「今日は突然の訪問にも関わらず、色々と良くしてもらって、どうもありがとうございました!」


「いやいやデイリス殿、こちらも有意義な1日だった! これからもよろしく頼む!」


「ええ、こちらこそ!」



父親ふたりは挨拶をしながらも、硬い握手を交わす!


赤みがかった空をバックに、もしこのシーンを写真にしたなら、題名は絶対に


「今、歴史はここから始まった!!」


にするだろう!



「テスナちゃん! 今日は本当にごめんね、あの弓矢の・・・」


「ええ、大丈夫よ! うちは旦那も子供たちも優秀だから! 」


「また一ヶ月後に会いましょう!」


「ええエンちゃん!今後ともよろしくお願いしますね!」


「こちらこそよろしく!」



女性陣も別れの挨拶をしている!



ヨウとフウも、実はさっきまで


「「ノアと一緒に行く!」」


と、なんとも嬉しい事を言ってくれてたんだが、そこはさすが長の家系、何度か説明したら直ぐに聞き分けてくれた!


「ノア、また来てくれるよね?」


「来てくれないとやだよ?」


かわええ、もう貰っちゃいたいくらいかわいい!


「うん、王都から帰ってきたら、また来るよ!」


「「絶対に?」」


「うん!絶対に!」



俺もこんな甘々な別れの挨拶をして、俺たちは鬼の里を後にした!



ーーーーーー



「それにしてもノア、あなたあの双子ちゃんにモテモテだったわね!うふふっ! 誰かさんがヤキモチ妬いてなきゃいいけど!」


テルヌスの街に戻って、屋敷へ歩いてる途中の会話で、エルーナ姉さんがそんなことを言ってきた。


「やきもち? は、よく分からないけど、双子ちゃんは可愛かったよ!」


「ノアも意外と面倒見良かったよね! 妹か弟が欲しいと思ったんじゃないかい?」


「んー、まあ確かに可愛かったけど、大きくなって生意気になると辛いからなー、姪っ子や甥っ子とかなら欲しいかな! 兄さん頑張ってよ?」


兄さんに年下の兄妹が欲しいか聞かれたので、軽くイジって返す!



「どの口が生意気とか言ってるのよ! まるきりノアの事じゃない!」


「確かにノアくんは、うちの弟と妹に比べるとだいぶ生意気ではあるわね!ふふっ!」


「でしょ? アンタも少しは素直になりなさいよ!」


と、シア姉さんとコウに言われた!


素直になれって、シア姉さんだけには言われたくは無いんだけど!


と心の中で思いながらも歩く


口に出してしまうと絡まれるからな


今はそんな気分じゃない!



数分、家族団欒でお話しながら歩くと、すぐに俺たちの住み慣れた屋敷に着いた!



アマツカミ家の御殿も落ちつけて良かったけど、やっぱり自分の家は安心するな!


何故か知らないが、玄関の前にきて俺はそう思った!


ーーーーーーーーーーーー



帰ってきて俺がまずやるのはソース作りだ!


スパイス屋でスパイスを見た時から、これは作りたいと思ってたんだ!


醤油は時間がかかるのでまだ無理だが、ソースは、野菜が多く取れるここセンバート領では、スパイスさえあれば割と簡単に作れる!


ただ、1晩は置いてとかないと味が出ないので、帰ってきたばかりだが、今すぐに作業するのだ!


ーー


「メルー! ちょっと厨房の一角使わせてー!」


「お?坊ちゃん、帰ってきてたのかい?」


「今ね、それにしても鬼の里はスパイスが充実しててさ! 色々買ってきたよ!」


「ほぉ〜!それはありがたいね! 私も色々と試してみたいもんだ!」


「ふふっ、好きにしなよ、別に俺のお金で買ったわけじゃないからさ!」


「本当に?よっしゃー!」



この人はメルー


毎日うちの食事を作ってくれる、豪快なお姉さんだ!



「で坊主、あんたが帰ってきてそうそう作るんだからかなり美味いものなんだろ?」


「うん! まぁ料理とゆうよりも調味料を作るんだけどね」


「なるほどね! まあ今から夕食作るから、あまり邪魔にならないところでやりなよ? あと怪我には充分に気をつけろよ?」


「ほーい!」


最近は厨房で色々と作ったりしてたので、断られることは無い!


数人の料理人たちがせこせこと動き回る厨房の隅で、俺は作業を始める



と言っても、ソース作りは本当に簡単だ


各種野菜とスパイスをぶち込んで煮ないくらいに加熱するだけ!


材料はこんな感じ


トマト、人参、玉ねぎ、セロリ、にんにく、夏リンゴ、砂糖、出汁、塩、酢


スパイスは


シナモン、ナツメグ、クローブ、オールスパイス、クミン、ローリエ、セージ、カルダモン


まずは鬼の里で教えてもらった出汁作り!


チチナキとゆう魚を乾燥させて砕いたものを熱した水に浸すと、旨みがでて出汁になるらしい


カツオに比べればかなりマイルドだが、上品な味わいになるので、これは重宝しそうだと、これも沢山買ったのだ!


出汁を取りつつも、各種野菜を全て細かくすりおろしていく


これは土魔法で洗濯板みたいな物を2つ作り、野菜を乗っけて挟み、サイコキネシスですり潰していく!


スパイスもすりこぎで丹念に粉々にしていく!


これが出来たら鍋で砂糖を熱しカラメルを作る


これはコクが増すとか何とかで、前世で母さんから教えてもらったやり方だ!


カラメルが出来たら水を足し、酢と塩以外をぶち込んで火にかけて1時間放置する!


火加減は沸騰したら弱火にして、煮ることの無いようにする


煮るとスパイスの香りがとぶのだ!



後は砂時計をひっくり返し、1時間測る!




上手くできてくれれば王都で一稼ぎする手段に大いに役立つ!



俺は上手くできるよう祈り、火加減を料理人に任せてその場を去った。

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