第31話 はぁ、俺ってトラブルに愛されてるのか?


ラグから落ちた俺は危機一髪で父さんに助けられたが、その後シア姉さんとテスナ母さんに、たっぷりと絞られた。


そして今は父さんの話で盛り上がっている!



「お父さんも雷魔法の使い手だったのね」


「うふふっ、シア、西国との大戦の英雄さんは『雷帝のデイリス』ってゆうのよ!」


「ちょっとテスナ!その話はなしだったはずじゃ」


「でもいずれ知られるのよ? 遅いか早いかの違いじゃないの?」


母さんはデイリス父さんを、ここぞとばかりにイジっている!


それも満面の笑みで物凄く楽しそうに


母さん、その辺にしてあげてよ!


俺は心の中で止めるしか出来ないよ そう、心の中だけではね!


世界が変わっても、女性の恐ろしさは同じだとゆうことを、俺はつくづくと感じたよ。



ーー


でも

それにしても、雷帝って・・・


父さんが頑なに英雄になった経緯を話さない理由が、少し分かったような気がする


父さんは当時17歳の青年


そんな青年が青白い光を纏って戦場を右往左往する姿から、現場では『青い首狩り』と呼ばれたらしい


それだけでもかなり恥ずかしいが、雷帝という二つ名は父さんが貴族として叙爵される時に、ドリス王国国王 アレス・フォン・アリバール・ドリス に命名されたらしく、捨てるに捨てられないものだそうだ!


17で背負った痛い二つ名…


父さんも大変なんだな


もし俺がそんなふうに呼ばれたら、恥ずか死する自信があるぞ!


俺は「父さんには優しくしよう」と思ったのだった。



ーーーーーーーーーー


そんなこんなで昼食を終え、みんな散り散りになってゆく!


エルーナ姉さんはテスナ母さんとお話をしており、ダリル兄さんは本を持ってどこか行ってしまった


まあ兄さんのことだから、心地いい場所で寝っ転がって本を読みたいんだろうけどね


そして俺はと言うと、シア姉さんに何か面白い遊びは無いかとせがまれたので、炭酸ジュースドッキリの謝罪も兼ねて、丘の1番坂が急な場所に来ていた



「で?何するの?」


「別に大したことじゃないけど、この坂を滑り降りるんだよ!」


そう言って、土魔法で板を4枚作る!


「なるほどね、それに乗って滑り降りるのね?」


「うん!」


まあこの遊びに説明もくそも無いだろうから、まずは俺が板に座って滑り降りていく!



「うぉわっ!」


ただただ斜面を滑り降りるのが楽しいかと言われると・・・


これがめちゃくちゃ楽しい!


丘には凹凸があったり大きめの石が転がってたりと、ただ滑り降りるだけでは済ましてくれない天然のギミックが沢山ある!


これを体重移動や足を使って避けていくのは結構面白いのだ!


それに速度も意外と出る!



俺が楽しく滑っていると、後ろから話しかけられた!


「ほら、ノア!見てみなさいよ!」


そう言いながら、シア姉さんは立った状態でサーフィンのように斜面の凹凸を乗り越えて滑っている!


「へ〜、なかなかやるね」


俺は、「それがどうしたの?」というような呆れ顔をしながら姉さんにかえす!


まあ、俺も昔はよく坂滑りをしたものだ!


立って滑るなんて当たり前な事で威張られてもねぇ〜?


「何よその言い方! 」


「別にー! そんな事で威張られてもと思ってね」


「それなら、次はどっちがかっこよく降りれるか、勝負よ!」


「ふん!望むところだね!」



こうして、釣りに続き、またもやバトルが繰り広げられるかに見えたが、そうはならなかった


俺とシア姉さんは下に着き、軽い言い合いをしながらも、そそくさと斜面を登っていると、上から1つの影が近寄ってくる


「ん?あれはコウね! さて、鬼神族はどんな滑り方をするのか、見せてもらおうかしら!」


なんて言いながら滑り降りるコウを見るのだが、明らかに速度が早い!


重心を下げ、より加速をしながらも、障害を綺麗に超えてゆくのだ!


そして俺たちの目の前に来ると、コチラをチラッと見た途端、少し大きめの石に乗り上げて、それまでのスピードも相まってか、ボードが上へ跳ねたのだ!


「危ないッ!」


俺とシア姉さんは同時に走り出し、コウの方へ踏み出すが、すぐに足が止まった


高く跳ね上がったコウは、そのままボードを掴んで前宙し、すぐさまボードを下に敷いてそのまま滑って行ったのだ!



立つ立たないで押し問答になっていた俺たちが、急にバカバカしく思えてきた


「やめよっか、勝負」


「うん、あんな神業出来ないしね・・・」


鬼神族は、やはり身体能力が人とはかけ離れていると再確認する俺たちだった。



その後も数回坂滑りをして、俺はその場を後にした



シア姉さんはあの宙返りがしたいらしく、コウに教えて貰いにいったようだよ


あんなの真似できるのかは疑問だけどね



ーーーーーーーー



俺は姉さん達と別れ、湖の方へ1人で来たのだが…


さっきも来たはずの場所が、なんか凄い光ってる


比喩でもなんでもなく、本当に茂みの奥から淡い光が盛れてるのだ!


「なんだあれ」


もちろんそんなものを見てしまった以上、何がどうなってるのか確認しない訳にはいかない


ゆっくりと茂みの方へ行き、チラッと奥を除くと


そこにはダリル兄さんがいた!


「なんだ、ダリル兄さんか!」


俺がそうつぶやくと、少し驚いたのか、俺に背を向ける形でしゃがんでいた兄さんの肩が、ピクッ!と反応した!


「ノア!びっくりさせないでよ!」


ホッとした表情で、兄さんが言ってきた!


「ごめんごめん、驚かすつもりはなかったんだけど、なんか光ってたから…何してるの?」


俺がそう言うと、兄さんが目の前にある物を指さして言う


「これだよこれ、これを観察してたんだよ!」


と、指を指した先にあるのは、ソフトボールくらいの大きさの、花の蕾だった。


ただ、そのつぼみは何故か薄い光を発しており、辺りに似たような花や植物があるかというと、そうゆう訳でもない


「でかいつぼみだね、これって何なの?」


そう聞くと、兄さんはおもむろに持っていた本を開いて見せてくれる


「コレ見てよ!!」


兄さんは本を開きながら教えてくれた


それはこの世界の植物について書かれた本の1ページ、魔力を餌にする植物に関するページだった


「この世界には魔力を餌に成長する植物があるんだよ! そうゆう植物は基本的に、魔力が溢れた限られた土地に自生するか、小型の魔物を自ら捕食するような植物のはずなんだけどね」


そう言いながら、兄さんは目の前の蕾をみる


「つまり、そのつぼみも多分魔力を餌にする植物って事?」


すると兄さんは顎に手を当て、首を傾げる


「うーん、どうだろうね、 多分そうだと思うけど、ここはほら! 土地に魔力が多い訳でもないし、この植物が小型の魔物を食べれるとは思えないんだよ!」


そう言っている


確かに謎だな!


それにさっきもここに来たけど、その時はこんな光は見なかった


それも含めてかなり謎だ!


兄さんの予想だと、この光は開花するために吸った魔力を蕾に集めてるんだろう! との事だ!


もしそうだとすれば、多分そんなに長い時間をかけて花を咲かすことは無いと、2人で予想した


花が咲くのは受粉して種を作る為だろ? つまり植物的には、花が咲いてからが本番という訳だ!


なので、多分魔力を集中させ、身体強化みたいな事をして一気に開花させるんじゃないかと予想したわけだ!


なので、数分間つぼみに変化がないか2人で見ていたが、特に何か起こる様子はない


そこで俺は、ある事を思い出した


「兄さん、農家のおっさんに聞いたけど、蕾が開花しない1番の原因は栄養が足りないことだってさ、蕾の時は1番養分が必要になるんだって!」


俺がそう言うと、兄さんは急いで蕾に手をかざして魔力を流した!


「間に合うかな?」


「さあ、これでどうにもならなければ分からないよ! そもそも開花のために光ってるわけじゃ無いかもしれないしね!」


兄さんが魔力を流しながら答えてくれた!


すると、蕾に変化が現れた!


だんだんと光が強くなっていき、少しづつ花弁がひらきはじめたのだ!



「来たきた!」


「よし! 助かったよノア!」


俺たちは少し興奮しながら開花の瞬間を見る!



と、見ていたはいいが・・・・


はぁ、またトラブルだ。


俺は心の中でそう呟いた!


何故かって? だって、開いてきた蕾の中に、小さな人形みたいな足が見えるんだよ?


そんな花ないだろ?



俺は左手を腰に、右手で頭を抱えてため息をつく!

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