第29話 美味しい飲み物にも棘はある?


釣り勝負開始から、1時間程経った


「なにこれ〜、全然釣れないんだけど〜!!」


結構離れた場所で糸を垂らしてるんだけど、ここまでシア姉さんのそんな声が届いてきた



ふっ!釣りの良さは来るか来ないか分からない中まったりと待ち時間を楽しむ事じゃないか!


これだからお子ちゃまは!


と、余裕をかます俺だが、15センチほどの、アユのような魚が1匹しか釣れてない


周りを見ると、エルーナ姉さんとダリル兄さんは、数匹釣れているようで、楽しそうに釣りをしている


そして鬼神族2人の釣りスキルには、目を見張るものがあった!


2人は開始直後から釣り上げ、 その後も場所を点々と変えていき、完全にトップはコウかチヨのどちらかだろうな!


一見鬼と釣りって関係なさそうなんだけど、どうやらそうでも無いらしいな



それにしても、この湖の周りは空気がひんやりしてて落ち着くな!



俺は残り時間を、全く釣れる気配のない糸を垂らしながら、水の上を歩くアメンボを眺めていた!


さっきは兄さんに勝つとか息巻いてたけど、さすがにこの様子だと勝つのは無理だからな!


その後は何事も無く、父さんと母さんが俺たちを呼びに来て釣り勝負が終了してしまったよ。



結果はこう!


1位 コウとチヨ 共に11匹

2位ダリル兄さん 9匹

3位エルーナ姉さん 8匹

4位シア姉さん 3匹


そしてビリは俺 1匹


まあ優勝は下馬評通り、鬼神族2人だったよ。


兄さんと姉さんは、まあどっちが2位でもおかしくなかっただろう!


でも、シア姉さんに負けたのは、なんかちょっと癪だな!


もう少し頑張ればよかった!


って今更言っても後の祭りだけどね。



そして、ビリの俺に課せられた罰ゲームがこれまた鬼畜


釣った魚を1匹リリースだった・・・


「俺1匹しか釣ってないんだけど」


「でも罰ゲームだからしょうがないでしょ?」


「そー! ずっと動かずにボーっとしてた罰ね!」


ち、皆して俺を笑いものにしやがる!


結局俺は釣った魚をなくなく湖へ返し、丘の上へ向かった




ーーーーーーーー



今回はかなり突然のピクニックだったので、昼食は執事のセブとチヨ、そして俺が作る


最近ちょくちょく厨房に入って色々試しているので槍玉に上げられたのだ



「はぁ、やるか」


決まってしまったものは仕方ない、材料は色々と持ってきているので、まあ簡単なサンドイッチでも作ろうと思う!


もちろん食材が痛まないように氷魔法で保冷した箱に入れておいたよ!



ーーー


まずは土魔法で簡単なかまどを作る、次に、普通は薪や炭に火をつけるが、今回は俺の魔法オンリーでいく


こっちの方が火加減も調節できるし何より火起こしは時間がかかるからだ!



1品目は湖で釣った魚を串焼きにする


内蔵は湖の下流で済ませてたので、枝に刺して塩を振って焼くだけだ!


串焼きは日が通りにくいイメージがあったので、最初にこれをやっておく!



つぎに、サンドイッチにするためにセブとチヨには野菜のカットをしてもらう


「じゃあ、トマトはスライス、きゅうりも同じでよろしく!」


「「畏まりました!! 」」



よし!俺は鶏肉だな!


2人に指示したら、鶏肉の下処理にはいる!


てか2人の仕事簡単すぎるよな!!



まずは鳥のもも肉に軽く隠し包丁を入れ、塩、胡椒、ニンニクのすりおろし、そして鬼の里で買ったスパイスを少し振って、揉み込む!


隠し包丁は下味を染みさせるのと、まあ火が早く通ってくれれば吉!みたいなノリだ!


揉み終わったら少しだけ待って味を染みさせ、火魔法で温めたフライパンに豪快にIN


その間に、パンもちょうどいい厚さにカットして少し火で炙る!


これは表面だけ軽く焼きたいので、強めの火で一気にいった!


あとはちぎって水洗いしたレタスにトマト、きゅうり、屋敷で作ってきたマヨネーズ、そして焼きたての鳥ももの香草焼きを乗せてパンで挟む!


まあ手間といえば鶏肉焼いたくらいだけどね!


そしてもうひとつ、サプライズがあるが、それは後でのお楽しみだな!



ーーー


「とゆう事で、これはみんなが釣った魚と、鶏肉のサンドイッチね!」


「あら、いい匂い! ありがとね!ノア!」


「別に大したことしてないからいいよ!」


母さんに感謝されると、少し照れてしまう自分がいる


所詮おっさんの部分は知識の所だけという事だ。




「「「「「「「「いただきまーす!」」」」」」」」


そう言って、みんなで食べ出すのだが


休憩してる場所のすぐ隣で調理していたので、香ばしい匂いをずっと嗅ぎ、食欲が増幅した皆は、我先にとサンドイッチにかぶりつく!


「へー、手で掴んで食べれるのか!これは面白いね!」


「鳥がジューシーで美味しいわね!」


実はサンドイッチはこの世界には無いらしい


手で掴んで食べれるのは結構画期的な事だろう!


まあ似たような食べ方はみんなするだろうけど。



「あ!これってエシャロットが入ってる?」


おっ? どうやらコウは、ふるさとの味に気づいたらしい!


「名前は知らないけど、鬼の里のスパイスを入れてるよ!」


「やっぱり! うん、さすがは私のふるさと、 美味しい!」


鬼の里産のスパイスが入ってると伝えると、コウは満足気にもう一口サンドイッチを頬張った!


エルーナ姉さんとダリル兄さんは、魚の串焼きを食べている


「ふわふわで美味しいね!」


「ええ、口の中で身がほどけていくこの食感が何とも楽しいわね!」



ふふ、喜んで食べて貰えるのは作ったかいがあったと言うもんだな!


一通りみんなの反応を見て、俺も食事に手をつけた!


「うん!美味しい!」



炭火ではないが、ジューシーな鳥の油をトマトとマヨネーズの酸味が調和させ、レタスときゅうりのシャキシャキ食感がたまらない逸品だ!


特にパンを少し炙ったのが良かった!


初めは少しサクッとして小麦の香りが香ばしいが、中はフワフワ!


日本では完全ご飯派だった俺も、このパンはかなり美味しく感じた!


そんなこんなで俺たちは食事を進める。




まあ、この食事なんてただの前フリみたいな物、本命はこれからだ ! ふっふ!



ーーーーーーーー



皆がある程度食べ終わったのを確認して、俺は満を持して新作をもってきた!


「これは夏みかんで作ったジュースなんだけど、良かったら飲んでみてよ!」


そう言って、みんなの前にジュース入りのコップを並べる!



一番乗りでコップを手にしたのは、シア姉さんだった!


「夏みかんのジュースなんて初めてね! 頂くわよ?」



シア姉さんがそう言うと、新作ということで皆も気になるんだろう


みんなが手を止めてシア姉さんを見守っている


「うん!一気にグビっと行っちゃってよ!」


俺がニヤニヤしそうなところを必死に抑え、そう助言すると、シア姉さんはその通りに、コップを一気にかたむけ、ゴクゴクと飲む!


が!途中で素早くコップを口から離し、喉を抑えながらゴホゴホと咳き込む!


「ゴホッゴホッ!ノア!ゴホッ、これ何入れたのよ! ゴホッゴホッ!!」


ふふっ! 姉さんはさっき釣りゲームで鬼畜罰ゲームを設けた。


これはその分の天罰なのだよ! ハッハッハ!


「ちょっとシア?大丈夫なの?」


「ノア!何をしたんだい?」


「大丈夫だよ!それちゃんと飲めるやつだから体に害はないよ!」


周りのみんながあまりにも心配そうにシア姉さんと俺を交互に見るので、一応危険はないことは伝えておいた!



さて


パンがフワフワなのと、夏みかんという柑橘を使ったことで気づいた人も居るかな?


そう!俺が仕掛けたのは 炭酸ドッキリだ!


知らない人も居るかもしれないが、炭酸飲料は材料があれば結構簡単に作れる!


ちなみに材料は食用の重曹と、クエン酸、そして水のみ!


水にクエン酸(今回は夏みかんに含まれるクエン酸)を溶かし、そこに重曹を入れると、炭酸ガスが発生するのだ!


この国は昔からパンに重曹を入れてふわふわのパンを作る文化があったらしく、割とどこの家庭にも食用の重曹は置いてあるらしい!


それにしても、あのシュワシュワ感は初めてだとさぞびっくりした事だろうな!


シア姉さんは涙目になりながら咳き込んでるし・・・


ヤバいかな?…これちょっとやり過ぎたか?


シア姉さんがだんだん落ち着きはじめると共に、物凄い形相で俺の方を見ている!



なんかヤバそうなので、俺は今のうちにシア姉さんから少し距離をとっておいた!

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