第28話 勝負事は突然に!





「じゃあセブ、馬の世話をお願いね!」


「かしこまりました主」



ここまで馬車を引っ張ってきた馬たちの世話を執事のセブに任せ、俺たちは丘の頂上へ向かう


「やっぱりノアがいると助かるね!」


「さすがは私たちの息子よね! 全属性の適性なんて、正直意味が分からないもの」


意味がわからないって、それって5歳の息子に言う台詞じゃ無いよ?


俺はピクニックの荷物をサイコキネシスで運んでいる



「お? これはいけるか?」


俺はくだらないが、かなり重大なイタズラを思いついてしまった!


ふふふ、今日はシア姉さんがちょっと変でいじりがいがあるし、後でドッキリをしてやろう!



「ん?何がよ?」


「別に?なんでもないよ?」


「はぁ、ノア!あんたまたくだらない事しようとしてるでしょ!」


バレてるか、だが俺がやるドッキリはくだらなくはないものだ!


「え?なんの事? 人をそんないたずらっ子みたいに呼ばないでよ!」


俺は悪びれもせずに言ってみた


「ったく、なんかしたらまたお仕置するわよ!」


「へーい!」


さっきは不意に魔法を使われたから捕まっただけだよ!


そう簡単には捕まらないもんさ!



そんなふたりの様子を見て、他のみんなはただただ微笑んでいた


シアのあの様子、なんだか気持ちに一区切りできたみたいね!


シアの心情の変化にいち早く気づいたエルーナは、妹の心の成長に嬉しく思うも、ほんの少し寂しさもあった



ーーーーー


「ノア!その辺にお願いね!」


「ほいほーい!」


丘の頂上に着くと、葉が生い茂る背の低い広葉樹が数本生えている


俺はその木の木陰に、サイコキネシスで持ってきたラグを数枚敷いていく


やっぱりこうゆうのはいくつになってもいいものだな!


芝にラグを敷くと、急にピクニック感がでてきていい雰囲気だ!



丘の頂上は辺り360°に遮るものがなく、センバートの雄大な自然を一望できる絶好の観光スポットだ!


父さんは母さんの手を取り、2人並んで仲良くラグに腰をかけた


「皆は遊んで来ていいわよ! お昼の時間になったら呼びに行くわ!」


「うん!でもくれぐれも危険な真似はしない様にね!」


父さんがそう言いながら俺の方を見てくる


まったく失礼しちゃうよ!


「どうして俺の方を見るのさ! 別にそんな事しないよ! 」


「そうかい? でも、ノアにはいくつも前科があるからね」


「「「「くふふふっ!」」」」


くそ、みんなまで笑いやがって!


だが悲しいかな、俺は何も言い返せない!



父さん達に注意を受けた俺たちは、子供たちみんなで、麓にある湖へ向かった!




ーーーーー



「ねえデイリス?」


「なんだい?テスナ」


「うふふっ!幸せね!」


テスナは持ち前のほんわかスマイルをしながらデイリスにそう告げる!


「ふふっ、本当にね! 家を飛び出して冒険に明け暮れてたあの頃からは、今の生活なんて想像もできなかったよ!」


デイリスは、実は他国の貴族家の出であるが、退屈な生活とおさらばしたくて家を飛び出し冒険者になった過去があるのだ!


「机仕事なんてつまらないことやりたくなくて冒険者になったのに、気づいたら領主として書類とにらめっこだけどね!」


「あら?今の生活にご不満でも?」


「いや?それが全く不満はないんだ! むしろ愛する家族と頼もしい領民たちに囲まれて、毎日が楽しいよ! こうして君ともイチャイチャできるしね!」


「まあっ!」


「「ふふふっ!」」


テスナはデイリスの肩にもたれ掛かり、デイリスはテスナの腰に手を回して、たわいもない話をしながら、ラブラブ夫婦は穏やかな時間を過ごしていた!



ーーーーーーーーーー


俺たち子供組は、麓にある湖へ来ていた!



「水が綺麗ね!!」


シア姉さんがそうつぶやく!


俺も近寄って見てみるが、本当に綺麗な水だ!


「これは確かにすごい!」


透明な水は地面にへばりついている甲殻類や小魚までくっきりと見えるほど、透き通っている!


「シアとノア、コウにチヨも、ここに来るのは初めてだったね!」


「「うん!」」 「「はい!」」


ダリル兄さんが、この場所の簡単な説明をしてくれた


この湖は、西の山からの湧き水が流れる川の間に、父さんの昔の仲間の魔法使いが数人で広げたらしい


掘り返した土で、今ラグを敷いている丘を作ったそうだ


全く、スケールが凄すぎる


さすがは英雄の仲間という事か、地形を丸々変えるなんて頭がぶっ飛びすぎてる!


父さん達のそんな武勇伝を聞きながらも、俺たちは釣りをすることになった!


「じゃあ、1番釣れなかった人は罰ゲームね!」


はあ、そんないかなもな事をシア姉さんが言い出した


「あのね」


「それいいわね!ふふっ!長女の名にかけて、あなた達には 絶対に負けないわよ!」


「なっ!」


シア姉さんに文句のひとつでも言おうとしたら、エルーナ姉さんが勝負に乗ってしまった!


「ふふ!俺も皆には負けないよ? ノア! 普段はあまり遊べないけど、今日は負かしてあげる! 罰ゲームを楽しみにしておくんだね!」


「ふん!良いの?そんなこと言って! ダリル兄さんの釣り糸の周りだけ氷魔法で凍らせても良いんだよ?」


「コラ!そんなのダメに決まってるでしょ! 魔法は無しよ!」


ちぇ、今言わずにこっそり使えばよかったな!


あっくそっ!兄さんがこっち見てニヤニヤしてる! くぅ〜絶対に勝つ!


「皆には悪いけど勝つのは私! アマツカミの名にかけて負ける訳にはいかないの!」


「かっこいいです!よく言いましたコウ様!! 愚かにも鬼に勝てると思い込んでいる人間に、痛い目見せてやりましょー!!」


えっ! 2人ともノリノリじゃんか! 鬼神族の2人も、もう完全にこっちの人間になったな!


鬼と人、互いを知る為という理由でウチで暮らしているコウとチヨだが、最近はめっきり人の生活に慣れ、楽しんでいるようだ!


1番最初に遭遇した時は、本気の殺気を向けてきたコウだが、今となっては少し変わった年上のお姉さんって感じになった



変わっているとゆうのは文化とか生活の違いからという訳ではなく、本人の性格が少し変わっていて、見てるだけで面倒臭いマイルールがいくつもあるのだ!


例えば、下駄を履く時は必ず左足からとか、右手を使ったら、次は必ず左手を使い、その次は右、と交互に使う手を変えたりと


俺たち常人からは理解できない世界が、彼女の頭の中には広がっているみたいだ!


とはいえ、べつに普通に話はできるし、真っ直ぐな性格で信用もできるので、本当に少し変わってるお姉さんポジだ!




まあそんな訳で、急遽魚釣り対決が開始した!

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