第25話 神証契約
俺と父さんは、ベイリー被服店に浴衣と甚平の確認をしに来ていた
「あれなら両方売っちゃっても大丈夫そうだね!」
「そうですね! 布や帯を帰るだけでかなり個性も出せますし、テルヌスだけでなく、他領にも売ってみます! 多分売れますよ!」
浴衣と甚平の試着は終わり、どちらも製品は大丈夫そうだし、従業員達からの評判もすこぶる良かった!
「それなら秋に王都に行くから、売り込んでおくよ!」
「それは嬉しいですが、良いのですか?」
「もちろん! 息子がプロデュースした商品だからそれくらいはするさ!」
とは言うけど、貴族同士の集まりでは田舎貴族は遠回しにバカにされる事も多々あると言っていたし、少しは見返してやりたいと思っているんだろうな!
まあ浴衣と甚平で見返せるなら、かなりの低リスク高リターンだから俺も別にいいけどさ!
「それでは契約の方ですね!」
「そう言ってベイリーが取りだしたのは、2枚の契約書だった」
「へー、これが『神証しんしょう契約書』か、初めて見た!」
神証契約書とは、この世界において最も重い契約書であり、お互いの魔力を使って契約を交わすもの!
双方の合意がある場合でのみ解除可能という特殊な契約で、破ると魔力を吸い取られ、最悪の場合死に至る事もあるというものだ!
「ええ、これからもノア様とは長い付き合いになりそうですから、信頼を作るにはこのくらいしないといけませんからね!」
だそうだが、本当にそうか?
本当に信頼するなら契約書なんていらないとおもうんだけど・・・
と言うのは綺麗事だな!
契約の内容は、この間話した通りのものになっている
内容は簡単に言うと
『・本製品についての情報を一切外に漏らさない
・本製品の総売上高より1割を発案者ノアール・センバートへ支払う
・支払いは月に1回とすること
・ノアール・センバードが死去した場合、その直属の家族へ支払う事。』
という事だ!
最後の項目は、もし何かあって俺が死んだら、直属家族
つまり、その時俺が結婚し平民になっていたら、その家族へと行くし、センバート家次男の立場がある状態で死んだ場合には、売上の1割がセンバート家に入るという訳だ
俺は2枚、浴衣分と甚平分の契約書にサインをした!
「これをもちまして、正式に、浴衣と甚平のベイリー被服店とノアール・センバート様との契約が無事なされました!」
ふう、特に問題なく契約できたな
久しぶりにこんなに緊張したかもしれん! 少し疲れたな
前世では別に大して気にしていなかった契約だが、こちらの世界ではこれが初めてだったため、ノアールは知らず知らずのうちに緊張していた
「父さん、大丈夫だった?」
「ああ!契約内容も特に問題はなかったし、初めてにしては中々堂々してたよ!」
良かった、父さんがこう言ってるってことは問題はなかったようだ!
「ところでベイリー、浴衣や甚平の生産はどの程度の規模になるんだい?」
俺が無事契約できてホットしていると、父さんがベイリーに聞いた
さすがは領主として領地の経営をしている父さんだ
俺はどれだけ作れてどれだけ売れるかなんて考えても無かったが、領主としてだと、そこの数字次第で税の量も変わってくる。
「そうですね、物自体はそこまで難しいものではありませんので、全力で回せば日に15づつ、ですがこれだとほかの仕事が滞りますので、せいぜい日に12づつくらいになるかと」
「へー、意外と出来るんだね! 価格はどれくらいの予定なの?」
「今のところ、無地の浴衣は一律で銅貨60枚、甚平は銅貨30枚で売る予定です!」
ほぉ、つまり完売した場合、俺の手元に来るのは1日1万円位か、中々にいい商売だな!
「なるほどね、わかったよ! それと、うちの家族達の分を発注するよ! 柄や布地はまかせる! コウとチヨの分も頼みたいから、シアと同じサイズも2人分お願いね!」
父さんは甚平を気に入ったらしく、即!家族全員の分を注文した
今も嬉しそうに試作のやつ着てるしな!!
領主っぽくは無いけど!
ーーーーーーーー
「ありがとうございました!またのお越しをお待ちしております!」
用事を終えた俺たちは、ベイリー被服店をあとにし、屋敷への帰路につく。
「それにしても、5歳で物を作ってお店と契約までするとは、うちの子たちは本当に皆優秀で助かるよ!」
「そう? まあそれは父さんと母さんの教育が良いんだろうね! 」
実際、この2人の教育は本当にいいと思う
ほとんど叱られることもあれをやれこれをやれと強制させられることも無く、子供たちの話もよく聞いてくれる
剣の稽古や魔法の稽古でスキンシップもバッチリだし、本当に完璧だな!
「ふふっ、そうかい? それなら良かったよ!」
夏の真昼間、気温が1番暑くなる時間帯にもかかわらず、軽やかで心地良い風が止まることなく吹き続け、熱の篭った体をひんやりとさせてくれる
こんな日には、昼寝なんかすると最高なんだろうな!
そう思うと、途端に昼寝したくなってきた
帰ったら庭でお昼寝だな!
行きとは違い、親子2人は静か〜に屋敷へと歩いていた
ーーーーーーーー
「ノア!ノーアー! ノアちゃーん! ノッアくーん!」
「んー、ん? 」
「起きなさいノア! もうそろそろ夕食よ?」
「エルーナ姉さん?あれ?俺はなんで庭に・・・」
そう言えば、風が心地よかったから昼寝してたのか
寝起きでボケた頭も徐々に正常になってゆく
「寝ぼけてるとご飯抜きよ? ふふふっ!」
それはやだな!
俺は起こしに来てくれたエルーナ姉さんと一緒に、ダイニングに向かった
ーーーーーーーー
「そうだ!秋に第3王女様の誕生日祭があるから、私とテスナ、エルーナと、そしてノアも連れていくことになった!」
それってさっき父さんが勝手に決めたことじゃ?
まあ、当主は父さんだから、特に何か言うことでもないけど・・
「あら?ノアも連れていくの?大丈夫?」
「ああ、ノアは魔道学院に行くみたいだから、今のうちに王都を見せておきたいし、これも旅のいい経験だと思うよ?」
というのも、ここセンバート領から王都までは、馬車で1週間ちょっとかかる
母さんが、5歳の俺が心配なのは分からないでもないが、剣の稽古で体力もついてきたし、大丈夫だろう!
多分父さんもそう判断したから来年じゃなくて今年なんだろうな!
何せ自分が発案した浴衣と甚平を売り込めるチャンスかもしれないからな!
「デイリスがそう言うなら私は良いんだけど、ノアはいいの?」
「うん!前から行ってみたかったし大丈夫!」
「そう、ならいいわね!」
母さんの一言に父さんも頷く
「だから、ダリル、3週間ほど領のことを任せるが、大丈夫かい?」
「うん父さん!3週間くらいなら何とかなるよ!
「シアもできることがあれば、ダリルを手伝いないね?」
「はーい!」
ダリル兄さんも、本格的に領の仕事をこなし始め、任せてみるのもいい経験になるとの判断だろうな
シア姉さんも、最近は少し父さんの仕事を手伝い始めたみたいだし、旅に関して全員に大義名分があのはすごいな!
(ちなみに姉さんは、王都でのお茶会やらに出るんだと思う! 人が多いしもしかしたらいい人が見つかるかもしれない! とゆう事だろうね!)
そんな家族団欒をしながらの食事は、本当に最高で楽しいものだ!
てか、俺今の今まで昼寝してたけど、今日寝れるのかな?
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