第23話 親子水入らず



「よし、なら今日はこの辺で終わるよ!」


「「ほーい!」」


「ありがとうございました、ノア先生!」


「う、うん。どうも」


はぁ、疲れた


「腹減ったなぁー!小鳥亭行こうぜ?」


「お、良いわねそれ!」


人にものを教えるのは疲れるものだな。



魔法の練習を初めて数日、いつもは昼食後に屋敷の庭に集合なのだが、今日は朝食後になった


それもそのはず、今日はベイリー被服店に試作を頼んだ浴衣と甚平の受け取り日なのだ!


屋敷で軽い昼食をとっていると、デイリス父さんが歩いてくる


「ノア今日は試作を見に行くんだろ?」


「うん、そうだけど ?」



「そうかい?では僕もついて行くよ!前に契約うんぬんって言ってたからね?」


父さんがこういうことをお願いするのは珍しい、大方話を聞き付けた姉さんや母さんからの圧力があるんだろうな


「別にいいけど、すぐに終わるよ?」


「ああ、仕事の気分転換も兼ねるし、たまには街に出てみんなの顔を見ないとね!」



父さんがそういうので、昼食後は2人でベイリー被服店まで向かった。



ーーーーーーーー



「あれって、デイリス様とノア様よね?」


「本当だ!デイリス様が街に出るなんて珍しい!」


「キャーー!かっこいい!」


「あっ!デイリス様だ!」


俺たちは、親子2人でベイリー被服店に向かっているのだが、やはり父さんは人気がすごい!


さすがは国の英雄、それに父さんはイケメンだしな!


「父さんモテモテだね!」


「茶化さないでよノア、ノアだって大きくなればこうなるよ? ダリルも今じゃこんな感じだって聞いたし」


「そんな事ないよ、俺はよく街に来るからありがたみなんてみんな無いでしょ!」


それに俺は悪ガキ3人組のひとりだしね・・・



「そう言えば、これから見に行く服は、ノアの将来の稼ぎとして売り込んだんだろ? ノアは将来何になりたいんだい?」


おっと、めちゃめちゃ親子っぽい質問だな!


「んー、それは決まってないんだよね 」


前世の田舎暮らしの夢は、まあ今かなってると言っても良いだろう


だから今は夢が無いんだよね、冒険者になると決めているハリーやチコが少し羨ましいよ


「そうなのかい? 魔道学院にも行くってすぐに決めてたし、魔法の研究をするのかと思ってたよ!」


あれ?俺って少し勘違いされてるよね?


「父さん、俺は魔法は好きだけど、別に研究したいって訳じゃないよ? 生活に役立ちそうな魔法を作れないか、ただ試してるだけだよ?」


研究所? 異世界にまで来てまで研究の虫と化すのは嫌だよ!


「んー、まあ夢ではないけど、今のところは田舎でまったり過ごしたいかな! 気の合う女性と一緒に過ごせたら尚いいね!」


「ちょっと現実的過ぎない? もっと有名冒険者になる!とか、国1番の魔法使いになる!とか、そうゆう大きな夢とかは無いの?」


んー、そうゆうのって絶対仕事大変だよな・・・


上との繋がりとかもありそうだし、父さんなんかいい例だ! 戦争で活躍したから貴族になった


俺は次男だから好きにできてるけど、父さんはいつも仕事してるし、兄さんもその手伝いが増えてきてる


目立つと面倒になる事は分かってる事なんだ、あえてそうなる必要も無い


「そう言われてもね、まあ、自分のペースで旅はしてみたいとは思うよ?色んな国の文化とか技術とかを見てみたいし」


ハリーとチコと旅するのだけはゴメンだけどな 、何があるかわかったもんじゃない!



「なるほどね、旅人か…まあ今はそれでも良いんじゃないかな、人の夢なんてすぐに変わったりするものだし、ノアはまだ5歳だしね!」


と、父さんはいいことを言った


いつもならここで話は終わるが、今日はせっかく親子2人なので、少し質問してみた


「父さんの子供の頃の夢は何だったの?」


まあいちばん無難な質問だろう


本当は英雄と呼ばれるようになった理由を聞きたかったんだけど、これだけは頑なに教えてくれないからな、父さん。


「私は冒険者になりたかったね、活躍して冒険者の1番上の位 Sランク冒険者になるのが夢だったんだ」


へー、それは知らなかった!


父さんはあまり昔の話とかしないしな


「でも16の時に戦争が起こってね、殺されないように必死で戦ってたらいつの間にか貴族だよ?本当に人生は面白いね! 今じゃ愛する人と子供たちができて、守るべき場所がある。

それを守り抜いてダリルにバトンを渡したら、テスナと2人で旅でもしたいね!」


って、最後のところのやりたい事って、俺と同じじゃね?


親子だからか?


でも5歳の俺が隠居が夢とか言ってたら、それは心配になるのも当然か


ごめんね父さん!


ま、だからと言ってバリバリ働くわけでも無いんだけどね


「でもまさか、ノアと夢について2人で話す日が来るとは、私ももう歳だね」


ふふっ、1人で騎士団をのしちゃう人がよく言うよ


「そんなことないでしょ、強いし」


俺はこの前見た、兵士たちの訓練場に父さんが行ったので、チラッと覗いたら、騎士団の2分隊くらいの人数を一瞬でのしてたのをね!


本当に規格外な英雄だよ父さんは


「でも今日は楽しかったね! たまには子供たちと出掛けるのも悪くない! 今度はエルーナでも誘ってみるかな!」


なんて言ってるんだけど、どうやら歳というのは本当らしい


「父さん、まだ被服店に着いてすらいないでしょ! 」


「ごめんごめん、ノアとこんな濃い話ができるようになったと思うと嬉しくてね!」


父さんは眩しいほどの笑顔でそういうが、まあその気持ちは分からないでもない


俺も楽しかったし、未来を見つめるのもたまには必要だと感じれたしね


ーーー



親子水入らずで話し合う心地良い空気感の中、父さんがいきなり声を上げた


「あ、そうだノア、魔道学院に行くならその前に1度王都へ行ってみるかい? 」


王都?


父さんにしてはやけに急な 話だな


「なんで王都?」


あまりに脈絡のない話だったので、ついつい聞き返しちゃった!


「実は第3王女様の3歳の誕生日に各貴族に招待状ご届いてね、式には参加出来ないけど、王都の街を見て回ることはできるし、どうかな?」


それは行くに決まってるでしょ、こことは違って王都は都会、東京みたいなものだ!どんな場所なのかぜひ見ておきたい!


「行きたい!俺、 まだ領外に出た事ないし絶対に行くよ!」



俺が片手を上げて元気いっぱいに答えると、父さんはニッコリと笑って


「うん、わかった!」


と言った!



そのあともお話をしながら、親子2人でベイリー被服店に向かう俺たちだった。

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