第17話 無事帰還


「これからもよろしく頼む!」


「ええ、こちらこそよろしくお願いします」


「コウ!色々な世界を見て大きくなるんだぞ!」


「はい!」



ーーーーーーーー


<<< 数時間前 >>>



空間魔法でセンバートとここ鬼神族の里を行き来できると知った後は、互いの長同士の話し合いがされた


その話し合いの結果、センバート領と少しずつ交流をしていく運びになった


と言っても、鬼神族の里はつい先日人に襲われた場所であり、そこに人がいると何があるか分からないので里の者がセンバート領に来ることになった。


来ると決まったのは里長の娘であるコウと、そのお付のチヨの2人だ


まあ田舎街に来たところで、何がある訳でも無いんだけどね


そんなこんなで2人を連れて、俺たちは里を後にした



ーーーーー


「ここの通路を抜ければセンバート領だ、覚悟は出来たかな?」


「「はい!」」


覚悟ってそんな大袈裟な、平和極まりない田舎町じゃないか。


そんなことを思いながら通路を抜けた



ーーーーーーーー


街に出ると、こちらも多くの人が野次馬に来ており、その中心には、ウチの家族が勢揃いしていた


「デイリス、ノア、一体どういうことかしら?」


と、テスナ母さんが少し怒った感じで話しかけてくる


まあ母さん達には何も言わずに里へ行ったから言い訳なんて出来ないんだけど。


「すまないねテスナ、急ぎの要件でちょっとね、調度いいし2人とも、ノアを含めこの6人がセンバート家の家族だ、挨拶をお願いするよ」


父さんの言葉に2人は頷き、今まで後ろにいた鬼神族の2人はトコトコと前に出てくる



「初めまして、今日からこの街でご厄介になることになりました、コウと申します

よろしくお願い致します。」


「同じくご厄介になります、コウ様のお付のチヨと申します、よろしくお願い致します」



自己紹介をした2人を待っていたのは、沈黙だった。



「あ、あの、なにかまずかったでしょうか…」


「大丈夫よチヨ、シャキッとしなさい!」



どうやらチヨは、かなりのテンパり癖がありそうだ


今もあたふたあっちを見たりこっちを見たりしている


屋敷では大丈夫かな?


屋敷のお皿とか花瓶を何枚も割りそうで、少し心配だよ。



それはさておき、反応が沈黙になるのも仕方がないのだ


それは2人に角が生えているために他ならない


この世界には、一応亜人と呼ばれる人種がいる


ファンタジーのおなじみ種族達なのだが、いるのはいるが、人の生活圏内にはほとんどいないとされ、エルフもドワーフも獣人も、亜人はかなり珍しい種族であり、一生のうちに見ない人間の方が圧倒的に多い


そんな亜人、しかも鬼だ、誰しもが見入ってしまうのも仕方の無い事だろう。



「デイリス、話が見えないんだけどどういう事なの? 何があったのか、帰ったら詳しく聞かせてもらうわよ?」


沈黙の中、誰よりも早く声を出した母さんは、答えになってない父さんの返事と、謎の鬼の子2人組の挨拶に


ただただ困惑している


まぁ普通はそうだよね、いきなり家を飛び出した夫が、数時間後には2人の子供を家で引き取るって言ってきてるようなもの…


それは困るわ!


向こうではトントン拍子に話が進んだから考えてなかったけど、思い返すとだいぶおかしな状況だな



それはさておき、気がつけば日が沈みかかった夕暮れ時、野次馬たちを解散させ、夕焼けに染まるテルヌスの街をゆっくりと屋敷の方向へ歩く。




ーーーーーーーー


「と、そういう事で彼女はここで生活することになったんだ、文化が違うから慣れないことも多いだろう、皆も2人のことをお願いね」



家に着くと、リビングにメイドや執事、文官武官のトップ、この家に仕える人たちが大集合し、俺と父さんで今日の出来事を説明した


説明してて思ったが、今日はだいぶ濃い1日を過ごしたな。



「そう、またノアがなにかしでかしたのね…」


テスナ母さんはそう言いながら、コウとチヨの方に体を向ける


てゆうか、俺がしでかしたって何? 普段は別になにかしでかしたりなんてしてないよね?酷くね?


「改めて、私はテスナ・センバート デイリスの妻よ! あなた達も最初は大変だろうけど、分からないことがあれば遠慮なく聞いてちょうだいね!」



「「はい、奥様 よろしくお願い致します!」」


最初だから仕方ないが、2人はめちゃくちゃ硬いな


『致します』なんて付けなくてもいいんだけど



その後は自己紹介が始まった!


落ち着いた大人っぽいエルーナ姉さん


優しい雰囲気のダリル兄さん


活発で好奇心の強めなシア姉さん


そして俺


順々に挨拶をしていき、夕食を摂ることになった




ーーーーー



食後のティータイム



「2人とも、こっちの食事が口に合わなかったりはしなかった?」


「はい! どの料理も美味しくて驚きです!」


2人とも、目をキラキラさせながらがっついてたからな


そう言えば鬼の里で調味料を買ったんだった


どんなものか試さないと分からないけど、料理のレパートリーは増えるからいいか


向こうの料理の再現もしないとな


こっちの食事は基本はパンに主菜と副菜


俺は断然お米派だったので、お米が恋しすぎるがこればっかりは仕方がない。


いつか米を見つけれればいいんだけど・・・



そんなことを考えていると、会話は剣の話になっていた


まあここら辺では刀なんて使う人は居ないからな



「じゃあその剣、刀は切るのに特化した武器なの?」


シア姉さんの問にコウが答える


「はい、反りがある事で切断がしやすい武器です」


「ほお、それは面白そうだね、俺達も父さんに剣の稽古はつけてもらうけど、体の動かし方は全然違いそうだね」



「そうそう、ルイ殿との約束で稽古も一緒にする事になってるから、5人で切磋琢磨して強くるんだよ」


父さんはそう言った


この家は軍系の家であり、5歳から剣の稽古が始まる


俺も5歳になったばかりだが、稽古は始まっている


と言っても今は基礎の走り込みと素振りしかさせてもらってないけどね



と、稽古の話をしていたら、コウが俺の方いた


「ノアくん、さっきは逃げられたけど、稽古では逃がさない!」


と、口角を上げながら告げてきた


コウはシア姉さんの1個したの7歳だが、刀の威力は明らかに人の成人男性以上の力だった


なんせバリアが割られたからな


あれは魔法を防ぐための魔法だから、かなり強固なのだ


それを容易く割る相手…木剣の模擬戦でも、絶対したくないんだけど



そんな俺の願望虚しく、コウに完全にロックオンされたノアだった。

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