第18話 空間魔法と剣の稽古


ティータイムも終わり、各自部屋に戻った


コウの面倒は歳の近いシア姉さんがやるみたい


チヨはお付きなので、メイドが色々教えるらしい


ま、俺には関係がないので、そそくさと部屋に戻ってきた。



「よし、始めよ!」


部屋に戻ってきた俺は、空間魔法について調べることにした


どんな魔法か知らないが、鬼の石像のようにワープできることはわかっているので、それだけでも使えたらだいぶ便利だろう!


そんな訳で、まずはテルヌスの雑貨屋と、鬼の里で買った、題名に『古代』と入っている本を読んでみる


分厚いが面白い本だ!


『古代歴史散』は、古代の世界を旅するある男の主観でストーリーが進んでいくものだった。


だが、古代魔法はほとんど出てこずあまり参考にはならなかった。


ただ、話は面白かったので、これも兄さんに上げようと思う



そして本命はこっち!


なんせ題名が『古代魔法』だからな!



俺はワクワクしながらページをめくる



ーーーーーーーー


数分後、俺は読み終わったのだが・・・


これは何ともな。


この本も厚みはあるが、紙1枚1枚が分厚いので、ページ数はそんなになかった


そしてこれ、古代魔法と書いてあったが、内容はその通り、古代魔法の図鑑だった


魔法名と実際に起こる現象が、文字と軽いイラストで書かれているものだった


それもほとんどが、今の魔法同士を混ぜたり組み合わせたりすればできそうなものばかり


面白そうなのは


『空間魔法』 『時間魔法』 『飛行魔法』 『回復魔法』 『認識魔法』


この5つくらいだった



はぁ正直ガッカリだ、もっとこう、古代魔法の使い方!とか、古代魔法の理論!とか、そうゆうのが載ってると思ってたんだけど…


「まあ仕方ないか、古い本だしな」



俺は切りかえ、どうやれば空間を習得できるかを考えてみる。


まずは移動の魔法をイメージして試す


土で適当に棒を作って、それを部屋の机へ移動させるのを、できるだけ鮮明にイメージして魔力を練る


が、何も起こらない。



「やっぱりか」


まあこうなる事は何となく予想はついた


というのも、今俺が使っているふつうの魔法も、元々は詠唱を唱えていた物だ


詠唱は、恐らくだけど、魔法を使う際のイメージの補完の役割をしてると思う


例えば、火のイメージを鮮明にしろと言われても、燃えている映像をイメージするしかないので、だいぶやりにくい 火は流線型だから特にな!



そんな中、詠唱というキーワードを入れる事で、魔法の完成後のイメージが浮かびやすくなる



なので、今度はイメージだけでなく、適当なキーワードを言いながら試してみる


「転移!・・・」



結果を言うと残念だった。



魔法が使えなくてやきもきするこの感じ、久しぶりだな!


空間…まあ根気強くやるしかないか


急ぐ必要も特にないしな!



気づけば夜もかなり遅いので、散らかして本をサイコキネシスで片付け、ベットに入る



空間魔法はできなくても、この魔法は本当に使えるやつだな!



最後に魔力を全部放出して、俺は眠りにつく




ーーーーー



「ノア、準備は出来たかい?」


「うん、まあ防具を付けるわけじゃないしね」


今日は剣の稽古の日


我が家では、父さんに剣の稽古をつけてもらう


大体、毎週月、水、金、日、の週4日だ


午前中はほとんど稽古、日本では考えられないことだな


俺は元々剣道や剣術なんて無縁の生活を送ってたから、まだまだ模擬戦は出来ない


何をするかと言うと、ただひたすら走る!そして素振り!以上!


なんとざっくりした練習だこと…


でも5歳の体は、走れば走るだけ体力が付いていくので、これが結構楽しかったりする!



いつものように、俺は屋敷の庭をランニングしながら模擬戦を見る



エルーナ姉さんは、大人っぽい雰囲気にに使わず、姉弟の中でい1番力が強い


盾を使った戦いが得意で、ダリル兄さんもよくぶっ飛ばされてる!


ダリル兄さんはバランスタイプだ、頭が良いので戦闘中も流れを考えて行動する


ただ、今はまだ考えている時に隙があるので、エルーナ姉さんやシア姉さんによくやられている


シア姉さんはなんと言ってもスピードだ!


細かいステップと素早い詰め寄りで、一気に隙を突いてくる


そして今日から稽古に加わったコウ


やはり種族差か、基本スペックがかなり高い


力も速度も2人の姉さんを上回っている


そして、俺は鬼の里での戦闘時、本気のコウから逃げ果せたので目を付けられているみたいだ。


まあ魔法を使っていいなら、そう簡単に負けるとは思わないが、この稽古は魔法禁止!


魔法使いには極めて不利な稽古なのだ!



今はエルーナ姉さんとコウが戦っている


コウの大きな木刀での攻撃を、得意の盾術で見事に受け流している!


「すごっ!」


振り下ろされるコウの刀に完璧に合わせて盾を操るエルーナ姉さんの技術は、本当にお見事の一言に尽きる


俺は日本で何となく、時代劇などで刀での戦闘を見慣れてはいるが、剣と刀の戦闘法は全く違う


そんな初見の刀術を防ぐエルーナ姉さんは、本当に優れた盾使いなのだろう


ただ、それでも姉さんは防戦一方、攻撃まで持っていけず防ぐので精一杯!


それだけですごいんだけどね・・・



最後は隙が生じた所をコウに突かれてエルーナ姉さんの負け。



「コウは本当に強いわね、盾を持ってた左手が、ビリビリ痺れてるわよ!」


「エルーナ姉さんこそ強いよ、ほとんどの攻撃がいなされちゃったもの」



楽しそうに今の戦闘の反省を話し合う2人、いつの間にかコウがエルーナ姉さんと呼んでいるのに少し驚いた!


それとは別に、もう一方のダリル兄さんとシア姉さんの模擬戦は膠着していた


「兄さん!とっととかかって来なよ!」


「シアこそどうしたんだい? いつもは押せ押せなのに」


そんなこと言いつつ、たまに木剣をぶつけ合う音が響くのみ


そんな緩い空気のお話の最中、シア姉さんは一気に兄さんに詰め寄った!


その寄りは、今日1番の速度であった。


なんと卑怯な!


心の中でそう叫ぶ俺だが、ダリル兄さんは慌てもしなかった


「ふふっ、来たね」


そう呟くと同時に、兄さんは自分の盾をシア姉さんに投げつける!


「キャアッ!」


奇襲のため、全力で詰め寄っていた姉さんは、避けることが出来ず、可愛らしい声を上げながら盾に激突


そこでできた大きな隙を兄さんがついておしまい


シア姉さんは負けず嫌いなので、相当悔しそうだ


ダリル兄さんに、もう1回!もう1回!とねだっている


まあ、負けた時のいつもの光景なんだけどね



その後も、俺は素振り!


他の皆は相手を変えての模擬戦と、3時間くらい稽古した


ーーーーー


「よし、今日はここまでにしよう!」


デイリス父さんの終了の合図とともに、夏の暑い中汗だくになった皆は、速攻でお風呂場に向かった


残ったのは男組


「ノア、いつものおねがい!」


ダリル兄さんにそう言われ、俺は水魔法を細かい粒にして冷たいミストを降らせる


「ふ〜、やっぱりノアは頼りがいがあるね!」


「ま、いつとの事だしね」


2納屋にみんなの分の木剣を置きに行き、2人でのんびりと歩きながら玄関へ向かう



稽古は大変だけど、終わったあとの妙にシーン?ぼんやり?とした、水泳の授業が終わったあとの授業のような、なんとも言い難いまったりとした空気が、俺は好きだったりする。

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