第13話 迷い込む少女



俺はいきなり襲われ、戦闘を開始する


戦闘の為の魔法も、普段から一応練習しているが、俺は戦闘なんかしたくないんだけどな


普通に怖いし…。



少女が、刺突した勢いのまま、左下から斜めに切り込んでくる


オークとの戦闘時は、奴の武器は3歳児が持って動ける程度の大人からすれば剣と短剣のあいだくらいのもの


だが、今俺が対峙している子の武器は普通の太刀、迫力が段違いだ


(てか服装といい武器といい、日本要素強くない?)


それは置いとくか…


回避でもたついた俺は、この攻撃を避けることは不可能なので、数枚重ねのバリアを出す


太刀がバリアに当たり、バキンッ!! と、とてつもない音を立てながら、2、3枚叩き切られながらも防ぐ



「マジか、切られるのか、これが」


結構硬いんだけどな


シア姉さんと同じような体格だが、力は異常に強い


種族でここまで差が出るのか…めんどうだな



刀が止められたので、少女は1度後ろに下がった


俺も一息つけ、ようやく戦闘への心持ちを作れた



「よし、やるか」


そうつぶやくと同時に、特別性のバリアを出し数枚出し、自分の周りにふよふよと浮かせる


相手もどう戦うかの算段がついたのか


太刀を上段に構え、一息吐きつき、一気に突っ込んできた


俺もすかさず土魔法で相手の足場を凸凹にして、少し細工をした球体型のバリアを相手へ投げる


相手は、いきなり凸凹になった足場に難なく対応して来た、そして特性バリアボールをかわそうとしたので、彼女の進路にボールを移動させると、鬱陶しいかったのか、バリアボールを叩き割った


バリアボールの中には、圧縮した砂を閉じ込めている


そのボールを割ったのだ


圧縮から開放された砂は、プフゥッー!!という音を立てて勢いよく飛び出し、間近にいた相手に炸裂する


と言ってもこれはただ勢いのついた砂だ、別に相手が傷着くこともまあ無い、目も笠で守られてるしな



だがそんなのを食らった少女は足を止めた



ふぅ、次は何をして来るのか…


俺が目の前にいる少女に意識を集中させていると、少女がピクッと動いたので、つられて俺も体が動いた


その直後、左腕に何かが掠めていき、数拍置いて痛みを感じる


パッと左腕を見ると、切り傷があり、血が垂れている


「しまった!!」


俺は慌てて後ろを振り返ると、そこには先程の警察機構らしき連中がこちらに走ってきている


そして奥の1人が、大きな長弓を構えていた


どうやら、俺と少女の戦闘の音を聞きつけ、やってきたようだ


「クソっ!完全に挟まれた」


そう叫ぶと同時に、俺が目線を切ったので少女が近づいて来る


その圧倒的な気配を感じ、すぐさま浮かべていた特別性のバリアを、できるだけ広範囲に背中に展開する


気持ち悪い、黒板を爪でなぞるような嫌な音がなりながら、少女の太刀がバリアに擦れる



でも、今度は割れることも無く、少女の太刀を完全に防ぎ着ることに成功した


このバリアは、対オーク戦の最後の一撃を反省して、極力魔力量を減らして防ぐために開発した、ハニカム構造を利用したバリアなのだ


ちなみに、普通は六角形の集合体だが、このバリアには、六角形の内部に、三本の対角線状にバリアを作り、6つの三角形を中に入れ強度を強くしている


ま、発動に時間がかかるのが欠点だけどね



だが、そうして少女の攻撃を防ぐことが出来た


でも多数に囲まれて不利なのにはかわりはないか・・・



この状況になってしまったら、戦闘経験なんて無い俺が、勝てるはずもない


「これはもう無理だろ」


このまま戦闘を続けるのは無理と判断し、俺は考えうる目くらましを全てやり、身体強化で全力で逃げる


戦闘をしていた屋台の通りは、砂や水蒸気で、それは凄いことになっただろう


(ごめんね、関係ない皆さん!)


そうは思いつつ、俺は振り返らずただひたすら、俺がここに来た通路へ向かって全力で走る!



だが、ふと気がつくと背後からは少女の気配が迫ってきている


「はぁ、はぁ、クソ、まだ着いてくるのか」


少女は俺よりも足が早く、必死になって走り抜いた


が、屋台の通りの中にある、例の通路に差し掛かったところで、後ろにいた少女の手が、俺の背中を掴んだ


「捕まえっ、嘘ッ!」


だが、少女も俺の体格を見てたかを括っていたのか、身体強化を使っている俺に対して、ほとんど力をかけなかったらしい


俺に引きづられるようにしながら通路に入る


通路を走る俺は、チラっと横目で先程の不思議な空間に佇む像を確認し、サイコキネシスを使って着てる服を咄嗟に脱いだ



「うわっ、ちょっ!!」


服を掴んでいた少女は地面を転がるが、咄嗟に受身をとって、即座に追いかけてくる!



まあこれで止まるとは思っていないので、俺は気にすることなく全力で通路を抜けた


「はぁ〜、何とか着いたか」


そこには見慣れた街並みが広がっていた



でも着いたはいいが、次に問題になるのはついてきてしまった少女だ


あんな大太刀をこの街中でブンブン振り回されたら危なくてたまったものじゃない


俺はすぐに空に向かって魔法を放つ


空中で、氷水と超高温の炎をぶつけると、爆音を立て

水蒸気爆発を起こす


これは、普段から俺の魔法を見てるうちの家族や、騎士団の兵士たちに向けた合図だ


「これで伝わるだろう、あとはあの子だ」


そう言いながら、救援を呼んだおれは振り返ると、少女はいるのだが、呆然としていた


まあそうなるよね



俺を追ってきた少女は、自分が今までいた場所とは明らかに違う場所にいることに、ただただ立ち尽くしていた


少女の頭の中は、完全にオーバーヒートを起こしているのだろうな


そんなことを思いながらも、また暴れられると困るので、サイコキネシスで彼女の手に持つ太刀を取り上げておく


だが、それにすらも気づかない程に驚いていたらしい


何ひとつ抵抗はなかった



ーーーーーーーー


その頃、デイリスは書斎でダリルと共に、仕事をこなしていた


「ダリル、もうそろそろお茶にしようか」


「はい、この書類が終わったら」


ダリルの答えに1つ頷き、おもむろに席を立ったデイリスは


窓の前まで行き、大きく伸びをする


「はぁ〜・・・」


優秀な子供たちを持って、私は本当に恵まれているな…


そんなことを思いながら、窓の外に広がる街並みを見渡す


するとその直後、かなり大きな愛する息子の魔力を感じ、嫌な予感がした瞬間


パァッーーン!!


と、見慣れた爆発の大きなやつが、西の空で炸裂した



「あのアホ、街中であんな魔法を!」


デイリスは怒るのと同時に、たまに無茶をするが頭のいいノアが、わざわざ街中であの魔法を使ったという事の緊急性を察知した


ダリルとのお茶休憩のことは忘れ、窓から直接飛び降りた英雄は


全力で街の西へと向かった。

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