第14話 もう一度向かう事に・・・



「こ、ここは・・・おいお前!! ここはどこだ!!」


混乱も落ち着いた少女は


元凶である俺に刀を向ける動作をしながら俺にそう言ってきた


だが刀は俺が押収してる



「なっ、お前!」


ふふ、凶暴な少女も、武器が無ければ可愛いものだ!


「この街でこれ振り回されると困るから、預かっといたよ!」


俺がドヤ顔をしながら、少女にそう言っている最中


少女が、片手に短刀を持ち、突っ込んできた


それも、さっきまでとは桁が違い異常なほど早い


「ちょ、話してる途中じゃないか!」



慌てて避けようとするが間に合いそうになかった


「あ〜これ俺死ぬくない? 」


今の少女はそう思わせる程の迫力と殺気がこもっている



俺は普通のバリアを展開し、い身体強化を最大限かける


まあ、気休めにしかならないけど、無いよりはあった方がいいでしょ



俺は覚悟を決め、少女の短刀がバリアに当たった瞬間にそれをかわすため、かつて無い程の集中をする


段々と近づいてくる少女の短刀が、ついに俺の俺のバリアに当た・・・



ることは無かった。




「ねぇノア、これはどうゆう状況かな?今すぐ教えてくれると嬉しいな!」


「デイリス父さん!!」


なんと、俺が死を悟った攻撃をデイリス父さんは親指と人差し指で摘んで止めていた


(う、嘘だろ? 本当に人間かよ!やる事が異常すぎるよ)



ーーーーーーー



「それで、必死にここまで逃げてきたら、その少女がついてきちゃったんだよ。」


俺だけではどうにも出来ないので、今日の出来事を父さんに説明した


俺が父さんに説明している間、少女は父さんの横で大人しく立っている


攻撃をいとも簡単に止められたのが、相当な衝撃だったらしく恐怖で肩が震えている


まあ、そんな中俺はずっと睨まれてるけど



「そんな場所私は知らなかったよ、それに違う街に繋がっていた?」


え? 父さんが街の西側を勧めたのはあそこに行かせるためじゃなかったのか?


俺が驚いていると、遠くから声が聞こえてきた



「デイリス様〜!!ノア様〜!!」


俺たちを呼んだのは、ウチ所属の騎士達だった



皆汗だくになって走ってきたらしく、「ゼ〜ハォ〜」と、肩で息をしながら膝に手をついている



「ご苦労さま!」


父さんの労いに騎士は答える


「いえ、主より到着が遅れるとは騎士として失格です、まだまだ訓練が足りません。」



若い騎士達はそんなことを言っているが


こんな化け物英雄を基準に騎士が精進したら、激ヤバ最強集団になっちゃうよ



そんなことを思いながら父さんの方を見ると、考えを読まれたのかものすごい鋭い目で睨まれた


(嘘だろ?声には出てなかったはずだ、本当の化け物じゃないか)



その後は、応援に来た騎士一個分隊(8名)も混じえ、少女についてその場で話し合う



「なるほど、ではあの少女に聞き取りを行い、向こうの情報を知る必要がありますね」


「そうなるね、でもそうもいかないんだよね」


「な、そうなのですか?」


「うん、そうなんだ、ノアはどう思う?」


マジか、5歳児にその質問、さすがは騎士の国の貴族家だな


「そうだな〜、向こうの街にも騎士みたいな人達がいたから、早いところこの子を帰さないと角の一族との戦争が始まるかもね」


それだけは勘弁なんだけど・・・


「うん、その通り! 向こうから見れば私たちは人攫いだ、遅くなればなるだけ向こうさんの交渉の選択肢は無くなっていくからね」


「でっ、では、デイリス様は今からその角の一族の街へ向かわれるのですか?」


「そうなるね、でもまずは向こうのことも簡単には聞かないといけない」


そう言って父さんは少女の方を向き、遅い自己紹介をする


「遅くなってすまないね、私はこの街の領主、デイリス・センバート まず言っておくのは、君に危害を加える気は無い」


父さんがそう言うと、さっきまでブルブルと震えていた少女は豹変し、顔は笠で隠れて見えないが怒りに満ちたオーラが漂う


ものすごい迫力を放ち、角には紋様が浮び上がり、大量の魔力が湧き出ている


「貴様ら人間の話など信用できるか!」


それは少女の心からの声だった。


その一言に籠る負の感情は、一瞬でここにいる俺たちに伝わってきた


若い騎士達はそのオーラに恐れ、腰に提げた剣に手をかける


「止まれ!」


俺はこの時、デイリス父さんの叫び声なんて初めて聞いた


父さんの制止の合図に騎士たちもハッとし、すぐに落ち着く


まあ騎士たちの気持ちもわかる


俺も正直かなりびびったからね


ドラマやアニメの演技ではない、本物の負の感情の心からの叫びは、本当に圧倒されるものだった。



「君たちが人に対して相当な恨みがある事は理解したが、私たちが君ら一族と会うのはこれがい初めてでよく分からないんだ

そして君をこのままこの街に置いておく訳にはいかないん、なので今から君を君らの街に届けたい」


父さんはさっきと変わらず、優しい声で少女に言う


少女は怒りの表情を崩すことなく、ただただ父さんの言うことを聞いていた


「君は一般人ではないそうだね、君らの一番偉い人に取り次ぎできるかだけ、教えでらっても良いかな?」


事情を説明して、争いを回避するためには、向こうのトップとの話し合いは必須だからな



父さんがそう聞くと少女は1回だけ頷いた


「そうかい、では今から行こう」



そう言って父さんは少女に太刀を返す



「今から行くんですか?」


「ああ、さっきも言ったが早く帰してやりたい」


「では我々もお供します!」


若い騎士達は父さんにお供すると言うが、父さんは首を横に振る


「聞いただろ? この角の一族は人を嫌っているんだ、私たちは争いに行くわけじゃないだろ? 下手に刺激したくはない」


そうとだけ伝え、父さんは歩き出した


「ノアもついて来なさい!」


え?俺も?なぜに?


あの少女の怒りようを見るに、多分あの街の人達は相当に人を憎んでいる


怖いのでそんな街には行きたくはないが、父さんに言われたら仕方がない


「はい!」


俺は覚悟を決めて、ふたたび例の通路に向けて歩き出す。

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