第7話 3人の悪ガキ
「帰ろうか…」
「「うん」」
俺達3人は、山の開けた場所で、オークの死体の横で疲れ果て、倒れ込んでいた
だがいつまでもここにいては、また襲われるかもしれないので、直ぐに下山する!
サイコキネシスで、オークを持ち上げ、俺達は下山する
来る時に見かけたクワガタを見つけるが、捕まえるための魔力もサイコキネシスを使うので精一杯、何より、そんな気力なんて残ってもいない!
ちなみに、サイコキネシスは物に対してしか使用できない!
オークが生きていた場合は魔法は発動せずに終わるが、今は心臓が止まり、ただの肉塊という事だろう。
行きのワクワクなど微塵もなく、俺達はただ黙々と街へ帰る
ーーーーー
「な、なんだよありゃ」
「あれ、オークだよな? 運んでるのはザダルマンとヘルツェンの子供か? もう1人は誰だ?」
「あれはセンバート家の次男、ノアール様だよ!」
「顔が潰れてるぞ、何したんだ?…」
もう日が暮れ、夜の帳が降りてくるころ、俺達はなんとか街に到着した
街の門にいた門番の1人が、大慌てで屋敷へ走っていき
もう1人の門番に、物凄く怒られた!
実は俺達は、3歳児だけで街の外には出られないので、何とかバレないようにすり抜けていたのだ
「後でデイリス様にも言われると思いますが、二度とこんな事はしないでくださいよ!」
「「「はい…」」」
ハリーもチコも騎士の息子、娘であり、ある程度の知識と教育も施されている、何より1歳の時から俺と一緒に居たからか、周りの子らよりも頭脳の発育が良く
そして俺も魔法を習得している事で、なんでも出来る気がしていた。
なのでついつい付いて行ってしまったが、俺も2人もまだ3歳なのだ
門番の男に説教され、初めて思う。
大人の俺が止めるべきだろ、何やってんだ俺は!!
そんな事に気づかなかった自分がなさけなくて恥ずかしかった。
日本だったら3歳の子供だけなら、外で遊ばす事さえさせなかっただろう
この世界に来て、優しい両親と姉弟に恵まれ、俺は浮かれていたんだと自覚した。
ーーーーーーーー
門番のおじさんに通され、俺たちはとぼとぼと門を潜り、屋敷の方へ歩いていく
3歳児3人が、オークの死体を運んでいる光景なんて、周りの人の目を引くには事欠かない
「やっぱり見られてるな」
「ええ、それは…まあね…」
「そんな事より、帰ったら絶対に怒られるよな」
「まあ、そうだろうね」
街の野次馬達は、何やらヒソヒソと話している
まあ俺も、向こうの立場だったら、間違えなくヒソヒソ話をするので、別になんとも思わない。
というか、そんな事を考える余裕もない
「やっぱりさすがにやりすぎだったな」
「うん」
「いや、俺が2人を止めなかったのが悪いよ、一応俺も貴族の息子、領民を守るのが仕事なんだから」
3人で反省しながらあるいていると、周りの人だかりを掻き分け、デイリス父さんと、騎士団の幹部であり、ハールとチコチーニの親である、ザダルマンとヘルツェンが走ってきた
「ノア、一体何をしているのかな?」
父さんは、冷えた笑顔で聞いてくる
普段は優しい父さんだが、物凄いオーラを放ち、俺達を威圧する
「ごめんなさい。門番をやり過ごして、山に入り、オークに会って、何とか倒すことは出来ましたが…」
俺がそう答えると、大人3人は自分の子供の前に行き、1発のゲンコツを食らわせてきた
「「「イッテェーーーー!!!」」」
父さんのゲンコツは、脳が揺れるほど重い1発だった
「子供だけで山に行くとは何事か!この馬鹿者!日が落ちても帰ってこない3人を、私たちがどれだけ心配したかわかってるのかい?!」
「「「ご、ごめんなさい…」」」
俺達3人は夕暮れの街の大通りで、正座で説教を受ける
そんな光景を、街の人達は面白そうに見ているよ、クソったれ!
この日から、俺達はこの街で、悪ガキ3人組と呼ばれるようになった
1時間にも及んだ説教が終わると、親に連れられ、3人とも帰路に着く
「ほら、入りなさい!」
屋敷に着くと、玄関で家族のみんなやメイドや執事、料理人までもが待っていて、真っ先に、テスナ母さんが飛びついてきた
「ノア!無事でよかったわ!もう、みんなに心配かけて!」
母さんは玄関にしゃがみ込みながら、少し痛いくらいつよく俺を抱きしめる。
母さんのこの態度に、俺は本当に愛されてるんだなと思うと、嬉しく、そしてそんな家族に心配をかけたのが情けなくて、胸が苦しかった
「ごめんなさい。」
きっと知能は34歳の田中武雄のもので多大な影響は受けるものの、本質は3歳児なんだろうな
俺は母の胸の中で、無意識に涙を流していた
母さんは特に説教らしいことは言わず、数分ハグされると、夕食のためにダイニングへ移動する
「ご飯の前に、すぐにシャワーを浴びなさい!そんな格好で食事はさせないわよ?」
母さんはほんのりした笑顔でそう言ってきた。
反省はしていてもお腹は空くもので、俺はとっととシャワーを浴びてダイニングへ向かった。
「ノア、怪我はしなかった?」
俺が席に着くと、シア姉さんが心配そうに聞いてきた
「うん、別に大した怪我はしてないよ」
「そう?ならいいのよ、今度からノアが外に行く時は、私もついて行くことにしたわ! 二度と危ない真似はさせないわよ!」
「うん…ごめんね、姉さん」
そんな俺とシア姉さんのやり取りに、周りの大人たちやエルーナ姉さんとダリル兄さんまで微笑んでくる
少しすると、メイドたちが夕飯を運んで来てくれた!
「本日は、ノアール様が仕留めてきたオークの肉を使わせていただきました」との事ですよ!
と、メイド長のネモが俺に耳打ちしてくれる!
テーブルに並べられた料理は、オーク肉づくしで、正直豚と見た目は変わらないので、めちゃくちゃ美味そうだ!
「グゥ〜〜〜!!」
どうやら俺のお腹も待ち来れなかったようで、腹の虫が泣いてしまった!
これにはシーンとしていた場の雰囲気も、一気に笑顔になり
「ふふ、ノアも待ちきれないようだし、頂こうか!」
とゆう父さんの一言で、皆が食事を始める!
ーーーーーーーー
なんだよこれ!美味い! 美味すぎる!
初めて自分で仕留めたオークは、甘みが強く、そして旨みも強い
肉は3日ほど熟成させた方が、微生物の働きでタンパク質を分解し、旨み成分のアミノ酸を増やすので、少し熟成させた方が美味しくなる!
それに比べ、このオークは獲れたてを調理しているがそれでも抜群に美味い!
この味は今日の苦い経験と共に、忘れることは無いだろう!
「ノア! ノアは頭がいいし、3歳だけど信頼もしている、街を出るなとは言わないが、今度からは絶対に屋敷にいる大人に相談して、付き添いを付けなさい、良いね?」
「はい、すいませんでした」
さっきも散々説教されたが、最後の念押しをされてしまった。
まあ、あんな体験をしたのだから、子供だけでまた外に出ようとは思わないよ
あの二人は分からないけどさ…あいつら大丈夫か?
一応反省はしてたみたいだけど。
ハリーとチコのことを考えるとなんか怖くなってきた
ーーーーーー
食事を終え、そうそうと部屋に戻ってきたが、今日は本当に疲れた
特に、1発の魔法で一気に全魔力を込めて使ったのは初めてだった
毎日魔力を使い果たすまで魔法を発動してるが、それは徐々にやっていくのだ
魔力切れとはガソリン切れの車ような状態だ、気だるさが体を襲い、やる気を無くす
普段は寝る前にゆっくりと体を慣らしながら行うが、今日はそれを一気に行ったからな、反動で疲れが半端ないのだ
俺はベットに入ると、泥のように眠ってしまった。
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