15話:勇者と仲間たち
いくら治安が良いと称される王都でも、やはり犯罪者は一定数存在する。
騎士団が巡回警備を行ってはいるものの、広い王都を
それらの犯罪者は近くにいた冒険者や猟師など街人によって取り抑えられる訳だが。
その後に送られるのがここ。所謂、牢屋だ
洞穴に鉄格子を着けたような見た目をしており、住環境は最悪らしい。
出入口付近では完全装備の騎士たちが見張っており、脱走するのも困難だろう。
こんな所に閉じ込められたく無ければ、犯罪など起こすべきでは無いと言うことだ。
そう。ここは犯罪者が送られる場所なのだ。
で。そんな場所まで何をしに来たかと言うと。
「……あ。久しぶり」
「おー、亜礼さんやないか。久しぶりやなー」
「どうも。御迷惑を御掛けします」
勇者とその仲間達を迎えに来た次第である。
帰還早々、なにやってんだ、お前ら。
「で、なんだ? 暴れてたとか聞いたが……まさか喧嘩か?」
「…違う。窃盗犯の捕縛」
「はい。司君はいつでも正しいのです」
「捕縛っちゅうか、
「よし分かった。隼人以外はちょっと黙ってろ」
「で、なんだ、樽?」
「大通りに足の悪い婆ちゃんがおってなー。若い男が婆ちゃんの荷物をかっぱらったんや。
で、
「……なるほどなぁ。で、なんで牢屋に?」
「あー。そこはほら、巡回しとった騎士団が勘違いしよってな」
なるほど。司、目付きも愛想も悪いからな。
悪事を働く方に見えなくもない。
……だが普通、この目立つ黒髪を見間違えるか?
これでも世界を救った『勇者』だぞ、こいつ。
「あー……そこは何て言うか。不幸な行き違いがあったんやないかなー」
「ふむ。話を聞かず問答無用で取り押さえに来た騎士団を叩きのめした、とか」
「いや、見とったん!?」
「見なくても分かる。まあ、あいつらも真面目過ぎるからなあ」
副騎士団長に聞いたところ、
良いか悪いか微妙なところだそうだが、規律が守られている以上は良い事なのでは無いかと思う。
て言うか俺的には全て蓮樹が悪いんだと思うが。
「おい司。怪我人は出してないんだろ?」
「…うん、加減したから」
「それなら上出来だ。よくやった」
拳を軽く突き出すと、ゴツン、と拳当ててくる。
おお。本当に加減が上手くなってるな。昔はこれでよく吹っ飛ばされたもんだが。
子どもは成長が早いな、と胸に暖かみを感じる。
まあ、あれから一年経っているので、当たり前と言えば当たり前なのだが。
「とりあえず、おかえり」
「…ただいま」
「ただいまー」
「ただいまです」
久々に会った子ども達は、どこか大きくなったように感じた。
とかほんわかしてた俺が馬鹿だった。
「…遠野流・椿」
しゅぱあぁぁぁぁんっ!!
遠距離で放たれた蹴りから巻き起こるカマイタチを、仰け反ってギリギリで避ける。
あぶねぇ。当たったら体が真っ二つになるぞ、あれ。
あ、城壁削れてんじゃねぇか! これバレたらめっちゃ怒られる奴だろ!
「おい待て加減しろ。城が割れるって言うか俺が死ぬわ馬鹿!!」
「おー。風圧で城にヒビ入ったなー」
「さすが司君ですねー」
呑気に言ってる場合じゃないだろ。お前らも止めろよ。
本気で死ぬぞ、俺。
「……相変わらず、避けるね」
「避けないと死ぬからな!?」
一応、反抗期とかではなく。
久々に再開したので、格闘の師匠に腕前確認されている次第である。
いやもう、地力がどうとかいう前に技術が違いすぎる。
さすが、高校生で免許皆伝を受けただけはある。
…まあ、地力の差も酷いもんだがな。
遠野司が
『ひとまず貴様を殴らせろ』だった。
その結果与えられた加護が『
神を超える身体能力。いや、正確には成長限界の解除だったか。
元から最強、それが際限無く成長するのだ。
チートというか、既にバグレベルで強い。
今でもなお成長を続けているので、魔王と戦った時よりも更に強くなっているのだろう。
こいつに勝てる可能性があるのは蓮樹くらいなものじゃないだろうか。
実際、当時この世界で最強だった魔王を殴り飛ばしてるからな、こいつ。
「あっぶねえ、油断してた……おい司、手加減はどうした」
「…亜礼さん相手に、手加減なんてしない…全力で行く」
「よし待て話し合おう、せめて京介呼んでこい」
「…問答、無用」
「くるなあああああ!!」
ガリガリガリ! しゅばあぁぁぁぁんっ! ぎゃおぉぉぉん!!
明らかに徒手では起こりえない音を出しながら、俺を追いかける司。
それを見て笑う隼人に、目を輝かやかせながら見守る詠歌。
俺達の命懸けの鬼ごっこは
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