13話:オークを狩りに
この世界で一番嫌われている魔物はゴブリンだろう。
危険度はそれほど高くなくても、醜いし、臭いし、汚い。
ずる賢く、更には種族関係無しに繁殖する魔物だ。
少なくとも俺はゴブリンに良い感情を持ってる人を見たことがない。
逆に、一番好まれている魔物は
力は強く、分厚い脂肪が厄介ではあるが、頭が悪く比較的狩りやすい。
そして何より、美味い。
魔物のせいで畜産が難しいこの世界では、肉を入手したければ獲物を狩るしかないのだが、地球と違って銃などは無く、更に魔法を実戦で使える者は十人に一人程度。
更には比較的知能の低い野性動物ですら簡単な罠なら容易く見破ってくる始末だ。
つまり、狩りの難易度が高すぎるのだ。
その為、熟練の猟師は下手な冒険者より余程腕が立つ。
何度か共に狩りをした事があるが、猟師が
あの人たち、確実に俺より強いと思う。
ともあれ、その様な経緯があり、猟師や冒険者の手によってオークは日々乱獲されているのである。
尚、乱獲されているにも関わらず数が減らないのは、繁殖力が強いからとされているが……
実際は、女神の大好物なので絶滅しないよう調整されているから、らしい。
女神に直接聞いた話ではあるが、相手が相手だけにイマイチ信憑性がないので何とも言えない。
と言うかぶっちゃけた話、正直どうでもいい。
だがまあ、アレで一応神だからな。
夢とはいえ直接
非常に気が進まない話ではあるのだが、今日は森へ狩りをしに行く事になった。
ちなみに。昨晩、夢でお告げがあったことを朝食の席で話してみた反応がこちら。
「ああ。またですか」
「相変わ、らずだ、ね」
「お兄様はあの女との交流を絶つべきです」
「じゃあ今日はオーク狩りに行く感じでファイナルアンサーなのかなっ!?」
「……ええと……あはは」
京介、楓、歌音、蓮樹。最後の愛想笑いがリリア。
一介の冒険者の夢枕に立つ女神とか言われても困るよな、うん。
とてもよく分かる。俺も未だに納得してない。
何で俺の夢にだけ出てくるんだろうか。
「……でまあ、少し多めに狩ってリリアの家に持っていくつもりなんだが」
「え、私の家にですか?」
「挨拶も無いままだと誘拐扱いされかねんからな」
王都に来て三日。
明らかにお嬢様なリリアが冒険者なんて危険な事をしている理由は知らないが、何の連絡も無しで良い訳ではない。
少なくとも一報くらいはいれておいた方が良いのは確実だろう。
幸いな事に
最近王都に移住してきた大商人らしい。道理で俺が名前を知らなかった訳だ。
「どうする、リリアも一緒に行くか?」
「うーん……出来れば遠慮したいです」
「分かった。手紙を書くなら持っていくが」
「あ、ちょうど出す予定だったので、お願いできますか?」
「おう、預かっとく」
指輪の型で蝋の封印が施された封筒を受け取り、懐に入れておく。
「で、だ。今日暇なやついるか?」
「はいはいはいっ!! 私も行きたいっ!!」
「いやお前、仕事はいいのか?」
「ふふーん!! アタシに書類仕事ができると思うのかなっ!?」
「ああ、大体理解した」
副騎士団長の顔を思い浮かべ、そっと手を合わせておく。
相変わらず苦労してそうだな、あの人。
今度、折を見て酒でも差し入れに行くか。
「僕は治療院と教会の仕事がありますので。それに面倒ですし」
「残念ながら、私も政務があるので難しいですね。武術大会さえ無ければ……」
「行きたいけ、ど。森がなくなるか、ら」
「理由が凄いなお前ら」
同行できない理由すら最早チートである。京介以外。
いや、面倒の一言で女神のお告げを無視する辺り、ある意味凄いが。
まあとにかく、これが訓練された仲間達の反応である。
既に慣れきったものだ。
「ふむ。じゃあ俺と蓮樹だけだな」
「なんだか久しぶりな感じだねっ!!」
「あぁ、確かにそうだな。いつ以来だ?」
昔は蓮樹とよく狩りをしていた気がするが。
一度、食べきれない量を狩ってしまい、近くの村にお裾分けに行ったのも良い思い出だ。
あの時は凄く喜ばれたが、理由が理由だけに何とも言えない感じだったな。
「あぁそうだ、一応言っておくが、狩るのは三匹までだからな」
「ええぇぇぇっ!? つまんなーいっ!!」
「いや、食いきれんだろ?」
「むむっ!! 確かにそだねっ!! りょうかーい!!」
若干不安が残るものの、とりあえず釘はさせたので良しとしようか。
むしろ、狩りなんて久々過ぎて鈍ってないか、そちらの方が心配である。
まあ、最悪蓮樹に丸投げするのも有りか。
何にせよ面倒な話ではあるが、とりあえず森に向かうとしようか。
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