2章 ついにタイムリミットが……

第31話驚きの連続……迫るタイムリミット

俺が明石先輩との再会を果たし、二日が経過した現在いまも驚きと動揺は払拭出来ずにいた。

懐かしい人物に逢えば、当然である。

二人——というのは、明石希咲……と羽風眞奈美である。

羽風眞奈美、の名があがり、混乱するだろう。俺も一日に二人も懐かしい人物に逢い、激しく動揺した。

明石先輩と別れ、妹に連れられるままに妹と金瀬とおち合う予定であったカフェに向かうと羽風眞奈美が金瀬の正面の席で神妙な面もちで座っていた。

羽風も俺を捉えると驚きを隠せなかったようだった。

金瀬の御両親とばかり思っていて、意表を突かれ、挨拶が遅れたのだった。

「叔母、です……」

との金瀬が発した単語で羽風と金瀬の関係性が僅かに合点がいった。

羽風によると彼女の姉、金瀬からすると母親は事故に遭いこの世にはいないとのことだった。父親は居るには居るが仕事がたて込んで一人娘にかまけられない。

金瀬の父親に相談をされ、羽風が金瀬を面倒みることになった。

要するに、羽風が金瀬を育てている。——金瀬の保護者が羽風眞奈美であった。

話し合いの結果、俺は羽風に警察へと突き出さないこととなり、羽風が金瀬を強制的に連れ帰るのは三ヶ月後になった。金瀬の決断の猶予期間は三ヶ月だった。


「——で……どうするかは、決まった?」

「……いえ。か、帰らないと……とは、思ってます。でも……」

正面に座る金瀬が顔を上げ、すぐに俯いて言い淀む。

「金瀬さん……羽風先輩、は好きかな?」

「……はい」

「じゃあ……お父さんは、どう……かな?」

「……い、です」

俺がお父さんと発した瞬間に俯いていた彼女が肩を小さく上下させた。羽風先輩に対しての返答より声量が小さかった。

彼女はガーゼが貼られた左頬を摩り、テーブルの下へと左手を下ろした。

「そう……金瀬さんは、男性不信——」

「がいっ、ます……んじゃ……」

「ごめん、金瀬さん……」


父親、が原因か……彼女の反応をみると、そう感じざるを得なかった。


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