第26話改竄はいくらなんでも悪趣味ですって

「ひっ、久し振りに再会したんだしぃ……そういうのやめてさ、楽しい話題で盛り上がろうよ?ねっ、いーちゃん」

追及から逃れようと必死で話題を移そうと画策する明石先輩。

冷房の効いた店内だが、彼女の額は汗ばみ、頬に汗が垂れていた。

「希咲先輩が……まあ、それもそうですね。希咲先輩は真面目そうなのに、俺をしょっちゅうからかって楽しんでましたよね……」

「しょっちゅうって、ひとぎきが悪いよ〜ぅいーちゃんっ!私だっていーちゃんにからかわれたよ、いーちゃんだけが被害者みたいに言わないでよっ、もうぅ〜ッッ!」

納得してないようで、頬を膨らませて不貞腐れた彼女。

「被害者みたいって……実際、そうだったよ。俺がからかったのって稀だったじゃん……プール掃除を手伝ったときなんて——」

「プール掃除って……アレはいーちゃんが野生的に大胆なキスを——」

「野生的でも大胆でもなかったからぁーッ、あれはッッ!でっち上げつぅ〜か、改竄だよっっもはやさぁ〜ッッ!希咲先輩の不注意でしょ!?不可抗力だってぇっ、俺はッッ!」

彼女のでっち上げる想い出を、声を荒らげて否定した。

声を荒らげながら席を立ち上がった俺に、店内にいた客とウェイトレスの視線が集まる。

我に返り、再び椅子に腰を下ろした俺だった。


「いーちゃんとのファーストキス、興奮したんだよ。ふふっ」

小悪魔な微笑みを浮かべながら、俺にだけ聞こえる声量で囁く彼女だった。

俺の表情は引き攣っていた。

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