第23話気付けないよ……みちがえてるから

夏の燦々と照りつける陽射しが肌をジリジリと焼いている。

タラリと汗が垂れ続けて、拭おうと拭おうと汗が引かずにひからびそうな俺はおぼつかない足取りで歩み続けていた。

擦れ違う人々に呑み込まれそうになりながらも歪み続ける景色にしがみついていた。


朦朧とした意識で冷房の効いた建物へと足を踏み入れた俺を、これでもかというほどに冷えた冷気を纏った冷風が身体を包み込んだ。

「ふうぅぅー、生きかえるぅぅ……」

両膝に両手をつき、呼吸を整えてから目的地へと向かう俺。


喉を潤し、万全に整えた身体の調子をすれ違った女性に狂わされる。

「西條、くん……?」

正面から歩いてきた女性がすれ違い通り過ぎようとした刹那に呟きにも似た声を上げ、足を止めて振り返った。

俺は苗字を呼ばれ、足を止めて恐る恐る振り返った。

苗字を呼んだ女性に見覚えはなかった。

ミディアムボブの黒髪で、ミントグリーンのブラウスに黒のデニムパンツを穿き、白のサンダルを履いた女性ちじんに記憶はない。

「……えっと、西條ですけど人違いでは——」

「か、カイト……くん、だよね?西條……カイトくん、だよね?」

「えっと……あな——」

「アカシキサだよ、私。覚えて、ない?西條くんに告白されたアカシキサだよ。これでも、人違いだって言うのかな?」




「……ッッ!?ええぇぇぇええぇぇぇーーーッッッ!!!!希咲先輩ぃーーッッ!?」




店内に響き渡る叫び声を上げた俺に左頬をつねってきた明石先輩。

「いだだだっっ……いっばら、おおをいっばらない、でぇ……」





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