第19話居てくれて、ホッとする
私は泣き止み、ダイニングチェアに腰を下ろして兄が買ってきてくれた弁当のおかずを口に運んでいた。
隣には友人の古清水が静かに弁当を食べ進めている。
「あやちゃんに弁当買うなんて……私が言ったとき、渋ってたじゃん。いー兄は女子だったら誰でも手を差し伸べるんだ……いー兄のバカっ」
頬を膨らませ、唇も尖らせ拗ねる。
「おまえが世話になってるって聞いたから弁当くらい買ってやらないとって思ったんだよ。不貞腐れんなよ、いちいち……」
兄は呆れたようにため息を吐きながらガラスのコップを傾け、麦茶で喉を潤す。
「てか、俺が居て良いのか?」
「うん……」
昼食を食べ進める三人の咀嚼音と掛け時計の針が進むカチカチという音がリビングに響く。
「なっつん、あのさ……」
古清水が箸を弁当の容器に置き、遠慮がちに口を開いた。
「……」
「いつもみたいにくだらない話しで良いから……話さない、なっつん?笑えないかもしれないけど……話そうよ、色んなことをさ」
「うぅ、うん……あやちゃん」
泣き腫らした顔の私と彼女はクシャッとした笑みを浮かべ合い、笑い声を漏らした。
「ったく……」
と、兄の呆れたような安堵したような声音の言葉が聴こえた。
※※※
古清水は一泊していくことになり、同じベッドで抱き合う形で就寝した。
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