第13話こんな日に限ってアイツが居やがらねぇ
母親から連絡がきて、数週間が経過したある日の午後9時──。
隣で身体を沈めソファに腰をおろした女子高生はベランダに視線を送っていた。彼女の表情からベランダに出ている人物に対して不安を抱いているのがひしひしと感じられた。
ベランダに出ている人物は俺の妹である夏美で、俺のスマホを片手に親と通話をしている最中だ。
20分もベランダに出ている夏美。ぐすぐすと泣き声も混じって聞こえている。
母親だろうか、今の通話相手は。
ベランダから戻ってきた夏美の顔は涙と鼻水をズビズビさせたお世辞にも可愛いとは言えない顔だった。
「いぃ兄ぃっ......ばぁだじぃ、わだあぁじぃぃっ......」
嗚咽混じりながらも懸命に伝えようとする夏美に、金瀬が堪えられなかったようで駆け寄り抱き締めた。
「夏美ぢゃあぁんっ、夏美ぢゃあぁんっ夏美ぢゃあぁんっ!」
金瀬は泣きながら夏美の背中を擦り、二人して泣き続けた。
女子高生二人が泣いている空間に男性が一人って気まずすぎだろ!
どんな拷問だよ、これ。
今日に限ってあいつ居ねぇし......何だよ、マジでよぉー!
珍しく、緑祥寺の姿はなかった。推しがどうとか、という事情で定時で会社を後にし、帰宅した緑祥寺。
泣き疲れたようで二人は午後11時までに就寝した。
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