第12話賑やかなリビングが一瞬にして重苦しい空間に

夕食を摂り終え、賑やかなリビングでスマホを弄っていると、スマホが着信を告げた。

「夏美。静かにしてろよ、居ることがバレたくなきゃ」

「えっ?う、うん......」

首を傾げながら頷いたのを確認して、通話ボタンを押して通話に出た。

「あっ、もしもし、俺だけど──」

『なぁにっ迷惑そうに出てんのよっ、海音!夏美、そっちに居んでしょ?夏美の友達からひっきりなしに連絡がくんのよ!迷惑ったらありゃしないっ!あんたが説得して帰らすのっ、分かってんの?』

母親の捲し立てる怒鳴り声が聞こえ、思わずスマホを遠ざけた。

「俺の説得なんか効果ないの、分かってんでしょ!父さんが謝れば帰るって聞かないんだよ、一言ごめんって言えば帰るっつってんだから──」

『一ヶ月が経とうとしてんのよ!あの人は話したいって言ってるけど、夏美のスマホに繋がんないんだから謝ろうにも謝れないでしょ。夏美に代わんなさいよ、早くっ!』

夏美に視線を送るが代わりたくないといった仕草をしたので、俺は母親にこう返した。

「後日、掛けなおすからそのときに話し合ってくれないか?近いうちに必ず掛けなおすから」

『分かったわよっ、近いうちよっ!必ずだからねっ、海音っ!』

プツッ、プープー、と通話が勢いよく切れた。

はぁー、と深いため息を吐き出し、「そう言うことだから、夏美」と夏美に告げて、自室に向かった。

リビングから夏美に向かって心配をした金瀬と緑祥寺が声を掛けているのが聞こえてきた。


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